カムカム残り2日!

いよいよ最終回まで残すところ2回となった朝ドラ『カムカムエヴリバディ』。
「アニーは安子なのか?問題」は解決に至り、アニー=安子と決定したわけですが…
なんだかシラケちゃったなぁ。

ラジオでの告白は放送事故だし、そもそもこんなことを引っ張って安子なんだか違うんだかミルクボーイの問答漫才みたいにすることに食傷気味。せっかくの物語の流れをぶった切ってまで匂わせ続けることだったのだろうか?
ドラマなんだからトンデモ展開でも、まぁいいですよ。なんだかんだツッコミながら楽しく見てますし。深津ちゃん(るい)の演技は素晴らしいし、ジョーも素敵。ひなたの成長ぶりを見るのも楽しいです。
けれど、やっぱり安子は好きになれないヒロインだわ。なんとなく苦手だなぁーと思ってたけど、最後に確信した。あーこの人は曲者だわーと。
安子は自分勝手な人だと思う。しかも自覚がない。自分の中では「いつも一生懸命やってるのに」の気持ちなんでしょう。自分以外は何も見えてない。「善女のパン」で周りの人間をかき回す、わりと厄介な人だ。しかも頑固で、思い込んだら引かないタイプ。
「I hate you」の言葉を聞いて、るいを捨てたのも、この言葉がその後の自分の行動を正当化(とまでいかなくとも情状酌量の余地があるものに)なると無意識下に落とし込んだ気がする。「しかたがなかった」という究極の一言とともに。
あの時、安子はるいになぜ「どうしてそんな酷いことを言うの?」という当たり前の一言が言えなかったのか。娘の強い拒絶を受け入れるには、何か後ろめたいものがあったからではないか。それは小さく芽生えた恋だったのか、それとも、るいの傷への引け目なのか。
”歯車が狂ってしまい”どうすることもできなかった、と安子は言う。稔の戦死や算太の持ち逃げや望まない再婚話など様々なことが絡み合って、もはや正常な判断力を失っていたのかもしれない。でも、その間違いはいつまでも放置できるものだろうか。

るいを大切に思っているなら、あんこのおまじないをひなたに聞いたとき、いてもたってもいられず告白をするのではないだろうか。だって、二人の間の大切なおまじないを今でもるいは唱えているのよ?ひなたにも教えているのよ?そんなこと知ったら感情が溢れて止まらなくなるんじゃないだろうか。

でも、安子はアニーのままでしらを切り通した。
結局、安子に自分を語らせたのはるいの存在ではなく、(ラジオインタビューによって引き出された)稔さんとの思い出だった。安子は母である自分より、女としての自分に嘘がつけない人なのね。るいよりも稔さんに嘘がつけない。
萌音ちゃんの演じる安子の「稔さん、稔さん」というすがるような表情と声が蘇る。あの雰囲気、ちょっと苦手だった。そのわけが今になってわかった。
ラジオでのインタビューだって、るいがたまたま聞いていたけれど、そもそも聞いていない確率の方が高い。あれは、るいに伝えるためのものではなくて、衝動的に漏れてしまった排泄に近い。放送事故も何のその、自分の噓が苦しくなったから話しただけ。もしるいがこれを聞いていたら?とは考えていない。「るい」という呼びかけは、自分の心の中にいる幼いるいへの呼びかけにすぎず、実際にあれから40年以上母の不在を生きて、この言葉を聞くかもしれないるいのことなど眼中にない。
るいはその言葉を聞いて急に幼い女の子に戻ってしまう。「お母さん…お母さん…」と、母親を求める幼子のようになってしまった。満たされぬまま大きくなり、こんなに時を経てもまだ安子に振り回されているるいが気の毒でたまりません。このような告白を大衆の前で平気でするくせに、娘には会おうとしない母親なんて、げんなりです。
安子はるいに会う気は無いし、るいも安子が会う気がないとわかっている。「会いたいのに会えない(なぜなら私が酷いことをしてしまったから、合わせる顔がない)」と安子は言うだろうけれど、そんなものは詭弁だと思う。会わないのは会いたくないからで、そこには必ず理由がある。大抵は自分の都合です。自分が傷つきたくないだけ。こんなお婆さんになっても、立派なキャリアウーマンになってても、まだ安子は幼稚なまま。るいがその幼稚さをちゃんとわかっているようなのが、驚きだった。「お母さんはそういう人」と。どれだけの時間をかけて考えてそこに至ったのかを想像すると、るいの寂しさが浮き上がってくる。

このドラマがダメ人間を描くことを目的としているなら、ある意味とても成功していると思う。そもそもカムカムには普通にダメな人たちがいる。ひなたの幼少期のダメぶり(何をやっても続かない、意志が弱い、安きに流れる、頑張れない等々)は、見ている私も「こ、これは…もしかして私ではないか?!」と思うくらい共感した。こんな子が朝ドラのヒロインをやる日が来るなんて!と。でも、ひなたはその後の伸びが凄かった。ダメ人間でも「常に鍛錬し、いつか来るチャンスに備える」ことができれば、こんなにも眩しく成長してゆくのだなぁ~と感慨深かった。大いに励まされた。誰にでも(ダメ人間にでも)輝けるチャンスはある、というメッセージはまさに朝ドラヒロインの面目躍如といったところ。

さて、安子は変われるのだろうか?それとも変わらないままでも「あり」だよ、ダメなところがあったっていいじゃないの、という別のメッセージが届くのだろうか。
それでも面白いと思う。だって人間、そう簡単には変わらない。もしかして「人は変われる」よりも「人は変われない」というメッセージの方が誠実かもしれない。「変われない」人生を、どう生きるか?というのは興味深い課題だ。
あと残り2回で安子の厄介なキャラをどう料理するのだか、興味津々です。
どうか最後にるいが心から幸せになれる展開が待っていますように。
すでに放送された2022年のるいはとても幸せそうだったから、きっと大丈夫ね。