「母と歩く時~童話作家村山籌子の肖像~」

 

 村山亜土・著(絵・村山知義):JULA出版局

私の大好きな「MAVO」同人の村山知義(TOM)氏のご子息・亜土さんの著書です。つまりここでいう「母」とはTOMの奥さんの籌子(かずこ)さんのこと。
籌子さんの童話は大抵がTOMの挿絵がついてるから私もいろいろと読んでいるんですが、奇妙な童話ばかりなんですよ(笑)。お話が突飛だし、登場するものも突飛。どこかユーモラスで欧風でモダンで…なんていったらいいか、とにかく日本的なウェットなものから遠いの。
こんなヘンな童話を書く人だから、やっぱりその実像も個性的。いかにも自由学園の卒業生らしい変り者(いい意味ですよ)。アバンギャルドの旗手であるTOMでさえも、籌子の前では形無しだったようです。

籌子は42歳で若くして亡くなっています。
TOMもすでにこの世に無く、昨年にはこの本の著者の亜土さんも物故してしまいました。その前年には亜土さんの一人息子の錬さんも若くして亡くなってるし。
TOMの家族は絶えてしまったのだな…ということをしみじみと思うと、この本をめくるのも更に切なく感じられます。
全ては去り、愛の記憶だけが全くの他人の手に手に渡ってゆくのですね…。
でも、TOM&籌子の独特の世界は、そういった見知らぬ他人の手の内で時を超え、これからもずっと生き続ける。
私の影響でウチの娘も籌子さんの奇妙な童話を可笑しがって愛読してます。
特に好きなのは「あひるさんとニワトリさん」のシリーズね。ちょっと意地悪で、トボケてて可笑しい。絵も笑える。それは決して「古いもの」ではない。今も生き生きと楽しいのです。