「ネイキッド」


やっと観ました。
デビシュがカンヌで主演男優賞を獲った作品。(画像はUK版DVD)
世の中ではしばしばこれがデビシュの代表作のような言われようをしているので、観るのをずーっと先延ばしにしてたのです。
だってこれ観ちゃったらとりあえず日本で観られるものは一通り終わっちゃうからもったいなくて。温存してたの。
ここんとこ某ライバル教授の方にフラフラよろめきかけちゃってて、いかにもマズイって感じだったので、今がコレ観るチャンスだ!とばかりに封印を解きました。
デビシュ燃えの燃料投下のつもりで。
ところが、これじゃあんまり燃料になんなかったかも…みたいな不完全燃焼感に襲われましてよ。
うーん、期待が大きすぎたってのもあったかもしれませんが…。
とにかくこれ、全然好きなタイプの映画じゃなかったんですよ。
やっぱりカンヌだよな。
アタシにはカンヌで賞を獲るような作品はいつだってよくわからんのですよ。
スカしてりゃいいんか?みたいなわざとらしさを感じるものが多いんだもん。
ただ、デビシュの演技は凄かった。あれで新人だからね〜驚く。
なのに、こんな作品で…この人は本当にあんまり俳優として作品に恵まれていないような気がする。
以前のインタビューで、「ネイキッドで演じた人間のように思われるのが一時期とても苦痛だった」というのを読んだことがあったけど、あんなにナチュラルに演じてりゃ、そりゃ「素(す)」か?とも思われるでしょうね。
デビシュの演技はどれもその個々は違っているのに、ことごとく素(す)に見えるという不思議さがある。
スカした浮浪者デビシュ。若いのに老けてます。

デビさん、とにかく全編通してしゃべり倒してます。
理屈のような、屁理屈のような、哲学のような、戯れ言のような、言葉遊びのような、珠玉のアフォリズムのような、圧倒的な言葉のマシンガン。
こんなにスカしてて偉そうで理屈っぽい男が、働きもせず、女にたかり、その女に優しくもせず、ぶらぶらとらちのないアサッテの話をして生きている。
そういう…なんというか、倦んだ若者の日々を描いてるだけ、っつか。
このキャラクターだけみてりゃアタシ自身とも大差ないんですけどね(爆)、それもあまり好きじゃない自分の部分によく似てる。
どうして共感できないかってのは、たぶん、それゆえでしょう。
私は私が見たいのではなくって、私とは違う「憧れ」が見たいから映画を観るのです。
私だって精神的にはひどい引きこもり状態で、そのくせやたらと言葉が多い。絶えず言葉を吐き出してる。
しかも吐き出す対象なんかない。「誰でもいい」し、「誰でもない」し、聞いて欲しいわけでさえない。他者が自分を救えるとも思ってないし、自分を救えるのは自分だけだとわかっているし、自分がどうしたいのかもわかっているんだけど、それがうまくまわっていかない。
要するに、それだけのチカラが自分にない。なのにそれを認められない。
なぜか?
未熟だからですよ。
未熟なくせにプライドだけは高いんだ。
この主人公もそう。本ばかり読んでプライドが高い。世界を知ってる、と思ってる。自分の生活さえたちゆかないのに。でも、生活がちゃんとしてたって、同じことだ。コイツは変わらない。本質的な問題は、彼の置かれた「立場」にあるわけではないから。
そういう自己の本質的な不全感ってのは、まわりから見てどんなに環境が整っていようが、ついて回る人にはついて回るんですよ。
それにしても、これ、観てるうちにだんだん本人と被ってくる。こりゃ確かに役と同一視されやすいかもしれない。
それと、アタシは勝手にこの主人公はリーマス(ルーピン先生ですよ)の若き日のある一時期の姿のような気もしつつ、見てましたw
だってこんなセリフが↓あったし!


どひゃー。マジですか!
てなわけで、このシーン以降、ずっとリーマスと被らせて見てしまう自分もおりましたよ(汗)。
リーマスは穏やかで真面目ですごく大人なんだけど、若い頃、こういう時期も(ほんの一時期)あったんじゃないかな?と妄想したの。
たとえばそれはジェームズとリリーが殺されたすぐ後のことで、親友だと思っていたシリウスがその殺人の手引きをしたと知らされて、もう1人の親友だと思っていたピーターも死んでしまったようだとわかった時のこと。
リーマスはただでさえギリギリのところで生きてるような人なのに、そんな過酷な状況に置かれてしまった。すべて大事なものは失って、ヨレヨレになって、精神的に追い詰められてこんなふうに浮浪者となっててもおかしくないな、って。
でも、壊れてしまった分、すごいカラ元気で、全然違う自分のようになって、こうして世の中ハスに見ながら自暴自棄みたいな暮らしをしたのかも?なんて思ったりもするわけですよ。面白半分に狼男なんだよなんて言ってみたりね。それはすごく重いことなんだけど、だからこそこうしてガス抜きしながらじゃないともたない、っていうかさ。セツナイですよ(涙)。
そういう目で見ると、この映画もまた一味違った素晴らしい物語のように見えてくるから不思議。
…って、たいがいだな(汗)。ホントに邪道極まりないことで(^^;;。