「太陽と月に背いて」

太陽と月に背いて [DVD]

太陽と月に背いて [DVD]

  • 発売日: 2007/01/27
  • メディア: DVD

デビシュを好きになる前に、私がデビシュの存在を認識していたのは唯一この作品だけでした。
ただ純粋に憧れの天才詩人の話が観たかっただけの、俳優たちに何の思い入れも無いその時の私にしてみたら、ここでヴェルレーヌを演じたデビシュはただヴェルレーヌでしかありませんでした。
私はこの映画を観てヴェルレーヌが嫌いになりました。いや、もともと好きなのはランボーで、ヴェルレーヌには興味なかったんだけど、それにしても、この人ってとことんダメな人だな、と呆れた。
ひたすらキモチ悪くて不恰好なオヤジを演じた俳優の彼には、少し同情した。
レオの引き立て役なのだろうか?それにしてもよく引き受けたな、と。
あまりにも強烈で、哀れで、印象的だったから(それに老けて見えたし)、ベテランの役者なのかと思っていた。
それきりこの人のコトは「ハリーポッター」に出てくるまで忘れていた。


再びこのヴェルレーヌを観た時の私は、昼も夜も頭の中がシューリスでいっぱい!ってな状態だった。恋してた。
「なんでも来い!」って感じだから、このヴェルレーヌだって全然OK。
私は新たに出会ったヴェルレーヌを以前よりもちゃんと見ることができた。
やっぱりキモチ悪くて嫌なオヤジであることには変わりなかったけれど、その向こうに、演技してるシューリスのストイックな決意みたいなものをガンガン感じることができて、すごくエキサイティングでした。
こんなに壮絶な演技ができる腹の座った役者はそうそういないぞ。
その演技は、潔くて、凄烈で、めちゃくちゃカッコよくて、惚れ直しちゃった。
そしてこの映画が実はとってもいい映画だということにも気がつきました。


でも。
でもね。
前にも増して、シューリスが可哀相に思えてしまったんですよ。
観てるとなんだか泣きたくなってくる。
「アナタは、ホントにこの作品に出るべきだったと思ってる?」って聞きたい気分になる。
そんなふうに思うのはこの作品での演技が満点だからに他ならないのだけど、あまりにもこのヴェルレーヌは強烈で、拭い難いイメージがあるもんだから。
アイドルスターとの共演ってことで、この作品は話題作だった。世界中の津々浦々まで行き渡ってる。
題材がキワだからセンセーショナルでもある。意地の悪い目線で観る人だって多い。
鑑賞力が未熟で夢見がちな少女たちも観客に多数含まれている中で、彼女たちが一番嫌うものを、このヴェルレーヌは見事に体現してるのです。
そりゃもう、傷つくのがわかってて燃え盛る火の中に飛び込んでゆくようなものですよ。
ちょっとネット上の感想を読んでみただけでも、ヴェルレーヌは多くの人にショックだったことがわかる。
「あのハゲオヤジ、キモすぎ!醜い!最悪!キライ!」という感想のオンパレードですからね。
しかもこの映画一本でシューリスをホモ認定してる人が思いのほか多い。
なんだそれ。バカかよ。
もう、絶句。


どこ見てんだボケ!
あんなぶっちぎりな演技できるのシューリスだけだぞ。
髪の毛まで抜いて、全裸も辞さず、トンデモないところまで世界中に晒し、飲んだくれで女房に暴力を振るうという女の敵キャラを全うし、美少年にしつこくまとわりついて大怪我までさせる憎まれ役に甘んじているんですよ?
できないよ、普通。
俳優だって人気商売だもん、こんなブサイクな憎まれ役、怖くてなかなかできない。
でも、シューリスはやり遂げたんですからね。30歳をほんのちょっと出ただけの若さで。
レオを輝かせるために、天才少年・アルチュール・ランボーを浮き上がらせるために、物語を完成させるために、自分はとことんミジメな男を演じてみせた。
そういうところにプライドを持ってる人なんですよ。
作品のために完全に自分を捨てちゃえる真の役者だってことだよ。
めちゃくちゃカッコいいじゃないっすか!
世の中、ちやほやされて、特攻隊の役やるのにロン毛で演じる(冒涜!)大馬鹿野郎もいるくらいなんですよ。
そういう人がずーーっと「最もかっこいい男」って言われてるんだよ?みんなどこ見てるんだ?顔だけか?

なんつって(汗)。
ちょっとキレてみました。
まぁね、デビシュだって普通にしててもちょっとキモイ感じのある人ではあるし(おい)、どう思われたっていいんですけどね。
わかる人はわかるし。わからない人にイライラしてもしょうがないし。
そもそもアタシがファンだからこうしていろいろ思うわけで、私だって最初見たときはキモチワルイとしか思わなかったのだし。
それでも、あんまりだなぁって思っちゃってさ。
もう、いいや。
愚痴ですよー。
ついでにキモくないステキなデビさんを貼っておこう。



この映画はとても官能的なんですが、それは出演者の「素」の魅力ってのが大きく寄与してるように思います。
レオは、今の姿からは想像もできないくらい(ごめん(汗))キレイです。眩しい光を放つよう。
ほんのひと時輝いて失われゆく美しさだから、あんなに凄味があったのだろうなぁ。
少年だけが持つ、独特の匂いが凝縮されてる。憧れてやまぬ存在感を具現してる。
指の動きひとつ、目線ひとつの中にも汲めども尽きぬ青いエロスが宿ってる。
あれならヴェルレーヌがボロボロになってしまうほど翻弄されるのもわかる!すごく説得力のあるキャスティング。
一方、妻のロマーヌ・ボーランジェもすっごく魅力的。ってかあのカラダには悶絶!
エロで、めちゃめちゃ可愛くて、完璧な肉体。ロリなのに熟れてる。あれこそを「目の保養」というのでしょう。羨ましすぎるっっ!
シューリスは彼女を抱けただけでもヨシかもしれませんね(しかも全裸で。ひゃー)。
ベッドシーンでのシューリス、すごい嬉しそうだったし!ハフハフしてて。シッポをびゅんびゅん振ってる犬みたいだった。素のままの歓びが見て取れましたよw良かったね!
あ。ナニかがシッポみたいだったということが言いたいわけではないっすよ(滝汗)。


考えてみればヴェルレーヌは魅力的な若い男女に挟まれて、どっちにいったらいいのか泣きながら身悶えてるというシアワセな人だったのかもしれない。
シューリスも役得な部分はあったのかもな。(そうだったらどんなに嬉しいことか。)
シューリスは当時のインタビューではこの映画の撮影を楽しかったと言っています。
ナーバスになっているレオをうまく導いたのもシューリスだったという話。
撮影が進むごとにどんどんシューリスがホントのヴェルレーヌみたいになって行って、しまいにはシューリスは早く撮影所から逃れて恋人の元に行って、デヴィッド・シューリス自身に戻りたがってたそうですが。
ちょっと「役者バカ」って言葉が浮かびました(笑)。


余談ですけど、最初、このキャスティングはリバー・フェニックスジョン・マルコヴィッチがやるはずだったそうです。
リバーの事故があって、キャスティングが変わったのだそう。
でもこれはどう考えてもレオの映画だという気がします。
ランボーはレオしかできないんじゃないかと思うくらい、ハマり役だったからね。リバーではピンとこない。
ヴェルレーヌはマルコヴィッチがやったらもっとクールだったでしょうね。痛々しさは減ったかも。いいか悪いかわからんけども。