『長安の春』が欲しい!

こちらが、講談社学術文庫版の『長安の春』(著:石田幹之助)です。

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図書館から借りてきたもの。
先日来、長安にハマった私はこの本を購入するつもりで書店をまわったものの、どこにも在庫はありませんでした。ならばアマゾンで入手しようと調べたところ…

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はぁ?イチマンニセン…ええ?!
めっちゃ高騰しとるやんけ!(ちなみに定価は825円)
まぁアマゾンには往々にしてこういうことがあるので、「日本の古本屋」検索で調べてみました。こちらは戦前の創元社版しかない。古いよ…

あとは、平凡社東洋文庫版がある。それならば入手可能か。でもたぶん読みにくい。
いずれにしろこの本は手元に欲しい。図書館にあるので必要ならば借りればいい話だが、身近に置いておきたい本というものはある。できれば講談社学術文庫版が欲しい。井上靖先生が序文と解説を書いているのだけども、これがとても良い文章で、どうせならこの文章込みで欲しい。仮名遣いも旧かなではないので読み易いし。
とはいえ図書館以外のどこを探しても無い。メルカリで時々安く出ているようだけれど、タイミングが合わず買えない。しかも新しく出品している人が高額(1万円弱)で出しているので、この本がプレミアがついていることが広くバレてしまったと思う。今から安く出品する人はもういないであろう。時すでに遅し。ちなみに今のところヤフオクにも無い。お手上げである。ここはもう、講談社さんにお願いするしかない。

どうか学術文庫版『長安の春』を復刊して下さい!

今は中国ドラマが流行ってて、新たな長安好きも増えていると思うんですよ。現象的には1980年代の「シルクロード」ブーム以来の商機であるような気もします。ぜひお考え下さいますようお願いします。

長安の春』は当時の長安の様子を知りたい向きには必読の書です。
石田幹之助先生は、唐代を語る数多の文献の中から、長安の様子が伺える記録を振るい出し、私たち市井の一般人にもわかりやすい内容で伝えてくれています。想像や推察など入れず、記録されている事柄、裏付けがある事柄を拾って編んでいるので、そこに立ち現れる都・長安は精密に再現された当時のままの姿です。
著者序文で、石田先生は
「『太平広記』五百巻、『全唐詩』四万八千首、それを片端から読んでみたところで問題によってはこれだけの材料しか出ないのかと思うとばかばかしくもあり…」
と書いてらっしゃる。この一冊を生み出す作業がいかに膨大であったかが想像されます。川の砂から砂金を取り出すような作業で集めた資料なのです。
まさにお宝。
今や田圃に埋まってしまい跡形もなくなったいにしえの都の姿を知ることができる、無双のガイドブックです。
のみならず、感興溢れる文章もまた秀逸で文学作品のようでもあります。最初の一文を読んだだけで、遥かな時空を一瞬にして超えて、その場に身を置いてるような気分になる。

”陰暦正月の元旦、群卿百寮の朝賀とともに長安の春は暦の上に立つけれども、元宵観燈の節句のころまでは大唐の都の春色もまだ浅い。”

元宵観燈とは、旧正月に飾られる提灯のこと。長安の町中が数え切れなきくらいの沢山のちょうちんで飾られるのです。
私が今、夢中で見ているドラマ『長安二十四時』の舞台はまさにこの「元宵節(旧正月)」の話です。想像が膨らみ、その「時と場所」にうっとりと萌えます。

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こちらは『長安二十四時』での見事な提灯。かつての長安ではこのような幻想的な風景が見られたのかも…と想いを巡らす愉しさよ。

石田幹之助先生は、かの「モリソン文庫」東洋文庫にあるあの夢のような書架!)の受託・創設者だったとのこと。書物の海の中を泳いだ人生だったのだなぁ。限られた者しか見ることができない悠久の地平を見た人なのだろう。才あってこそ。羨ましい限りです。

こちらは東洋文庫に行った時の過去記事。

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