「オル窓」読了、そして…

「オル窓」、読み終わってしまいました。脱力。
実に重厚な大河ドラマでした。読後いろんな思いが胸に来ては去り。
時代が変われば人も変わるし、体験する物事も全く異なってくるのは当然だけれども…あまりにもココ(現代日本に生きる私)とはかけ離れた物語を読みながら、なぜか自分がとても未熟な人間に思えてきました。


「物語(漫画)の中のことでしょ」と言ってしまえばそれまでだけれども、それでも、ああして人々が必死に生きていた時代があったのは事実であって。
私は革命の恐ろしさも、熱も、虚しさも、知らない。想像もできない。
極寒のシベリアの、痛さも、つらさも、冷たさも、何一つわかりはしない。
銃声も、血の匂いも、魂を震わすピアノの音も、身を引き裂かれるような別れの悲しみも、とても遠くて。
物語の登場人物たちは、みんな燃え盛る火のようでした。
それを私はぬくぬくとコタツに入って寝転びながら読むのです。ぶひー。
物語というものは本来そういうものだけれど、それだけで終わらないのがまたいいところでしょう。物語は、読者になんらかの想いを刻印してゆくものです。それが新しい何かを生み出す契機になれば嬉しいんだけど。
しばらくはこの世界、引きずりそう。


ってなわけで、引きずりついでにこのようなものを買ってしまいました。

オルフェウスの窓大事典 (愛蔵版コミックス)

オルフェウスの窓大事典 (愛蔵版コミックス)

いや、これだけの大作・労作を古本屋で買って3日で読み終わってそれだけ…ってのは池田先生に対してあまりにもあまりにも不遜だと思ったので、記念本だけでもちゃんと買おう、と(汗)。
収録されている作者対談ではいろいろと面白い裏話が聞けます。
私が一番聞きたいのは登場人物のその後、です。物語になってなくても、池田先生が思っているだけのことでもいいから教えて欲しかったりしませんか?あとはそれを元に自分の中で物語を発展させてもよし、あまたの二次小説作者嬢の作品に期待してもよし、みたいな(笑)。こういうのも作者のお墨付きがあるのとないのとでは全く違いますのでね。
この本では登場人物のその後もちらっと示唆してくれてます。
イザークとユーベル親子には輝かしい未来が待っているようで、心からホッとしました。
これ、めっちゃ読みた〜い!いつか描いてくださるといいなぁ。
それと、外伝も2編ばかり発表されているのですね。これは絶対に読まなくては。


このお話は登場人物たちのアンサンブルが魅力なのですが、集団劇で「誰がお気に入り?」って話をするのが好きなので(笑)あえて好きなキャラクターを選んでみると、やはり私はイザークだなぁ〜と思います。
恋に生きる人、革命に生きる人、任務に生きる人…いろんな人がでてくるけれど、私はやっぱり芸術に生きる人が憧れ。
涙がどーーっと出てきちゃったシーンは、バックハウスとの出会いのシーン!バックハウスの言葉に癒されました(すごくいい役だバックハウス…)。
この暗く悲しい大河ドラマの中で、そこだけが唯一眩いほどの光に包まれた場所だと思うのよ。
その圧倒的な光の前では恋愛も革命も生も死も、みんな絵空事のように見えてくるから不思議です。
バックハウスは、クラシックにハマってなかったら実在の人物とは気付かなかったでしょう。
知っている今だからこそ、実際のバックハウスの演奏を(その魂の発露を!)聴きながら物語の世界に入ってゆけるわけです。恵みだねぇ。
あとは幼いユーベルがたまらないですね。もう完全にウチの坊やと重ねちゃって、ユーベルが出てくるだけで泣けてくる。可愛くて。


アレクセイはかっこいいけど、恋人にするのは御免ですねぇ。
いつも恋人の身の安全を心配してなきゃならないなんて地獄だもん。でも、自分がああなれたらなぁーという意味では憧れでもあります。
ユリウスは…もうちょっと恋愛以外に目を向けて欲しかった気がします(爆)。
その恋愛も、なんだかもう、求め続けている感じがちょっと重いっていうか。特に、後半から最後にかけてのユリウスには感情移入ができませんでした。あんまり憧れられなかったっていうか。もっと強くあってほしかったです。
「オル窓」はファンサイトもいろいろあって、人気投票や妄想語りや二次創作や…いろいろが盛んなようなので、楽しそうです。