「男たちの挽歌」=「a better tomorrow」=「英雄本色」 

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3つの題名で書いてみましたが、「男たちの挽歌」ってよく考えるといい題名だなぁ。
久しぶりに「挽歌」見ました!旦那と二人でTVでね。
「挽歌」はわりとユンファがワガママでイライラするせいか(汗)、あんまり好きな作品ではなくて、何回か見ているはずなのにちゃんと覚えてなかった。
で、今になって気づくのは、これ、ティ・ロンがすごくいい演技してる!ってことです。素晴らしいわティ・ロン
レスリーやユンファが過剰でちょっと笑える芝居をしているんですが(それがまた香港映画の良さでもあるのだけど!)、ティ・ロンの堂々たる社会派演技にはグッときました。作品が引き締まります!


真面目に生きようとする男の前に、そうはさせまいと立ちはだかる黒社会の大きな力。親友への義理、家族への愛。どうしたら皆が幸せになれるのか、自分はどう動くのが最善なのか、わからないまま必死で戦い続けるティ・ロンがセツナくて、すごくいいです。
レスリーも若くてピチピチ。可愛い。
チーホンもすごく初々しいのよ。チーホンはなぜかこんな役(裏切者とか)が多い印象だけど美形なんですよねぇ。てか、「チャイゴー2」ではメチャクチャかっこよかったわ!あのチーホンはすっごいイイ。今ふと思い出したわ。
ユンファは出来上がってる。どっからどう見てもユンファだ。でもこの役(マーク)は私、嫌いなんだよー。なんだコイツ!って腹立ってくるんだよ。すまんのぅ。
でもってジョン・ウー。刑事役で出てるんだけど、いつもちょっと長めに顔アップでカメラが静止するのが妙に意味深で…っても、「監督出てるよ!ほら!見て!」っていうだけの”意味”なのでたいして深くないんだけど、知らない人が見たら「あの刑事、なんか意味ありげ?重要人物?」って思うのに最後まで何もないから「??」ってなるに違いない罪作りなサービスショットになっているのが笑えます。

この作品はうまい具合に面白さや悲しさや残酷さやせつなさがミックスされていて、端的に暗い感じばかりではない、というところに妙味があります。例えば「ゴッドファザー」には笑える要素なんか全然ない。物語のトーンが一定の色味でまとめられている。あの主題曲を聞くとその全体の色彩が浮かび上がってくるのです。
でも「挽歌」は違う。感情がごった煮のように表現されてる。
コメディだっけ?ってなターンもあるし、涙涙の人生劇場もあるし、呆気にとられるほど人が死ぬ銃撃戦もある。男の友情、可愛い恋愛、親子の情…あらゆる感情がわーーーっと詰め込まれている。それらが同じトーンに収まり切れない勢いで次々と出てくる。
丁度あの時代の煌びやかな香港の街みたいに、ごちゃごちゃと雑多で魅力的なのです。
どうして自分がかつてあれほど香港映画に魅せられたのかを、久しぶりに思い出しました。あの頃のワクワクした気持ちが懐かしく蘇ってきた。
今はもうもうどこにもない、あの「香港」と若き日のレスリーの姿に、胸が熱くなりました。

「挽歌」の中で台湾の西門が出てくるんですが、これまた驚きの光景でした。閑散としてて古い共産圏の国みたいな雰囲気なの。今のオシャレで華やかな西門とはまるで違う場所。
思えばあの頃の台湾はまだ戒厳令下の時代ですもんね。35年も昔なんだもの。
台湾は今やアジア一の先進国に、香港は中国に取り込まれるようになってしまった。時代の移り変わりはあっという間ですね。

ちなみに私は香港ノワール系の映画の中で「ハードボイルド/新男たちの挽歌」が一番好きです。断トツで好き!二番目には「ワイルド・ブリット」です。この二つは数年ごとに繰り返し見てます。
どっちもトニー・レオンが出てます。だから、ってわけではないけどね。同じ偉仔の潜入物でも「インファナル・アフェア」はあまり好きではないです。私の中では、「ハードボイルド」の方に軍配が上がる。映画の善し悪しではなくて単なる思い入れの問題です。


『男たちの挽歌』予告編