アイリッシュが教えてくれたこと

日曜日の昼下がり、美味しいケーキと珈琲をお供に、古い時代の極上短編を読む至福。


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「短編ミステリの二百年」ということだけれど(4巻のうちの1巻目ね)、ここに入ってる短編は本格謎解きではなくて、サスペンス風のものが多い。謎解きの快感は薄いけれど、どれも描写が秀逸で物語の世界に引きこまれるものばかりです。
こういう名作を読んでいるとますます自分の才能の無さを痛感するので、そこはシンドイですねぇ。純粋に読者として楽しむ幸せを享受したいのに、いちいち自分(の能力)と比べてしまう世知辛さ。いつからこんな風になってしまったのか。余裕が無いにも程がある。

この本の見どころはこの1冊の半分ほどを費やしている、「短編ミステリの二百年」という小森収氏の解説です。ミステリの歴史と作家の個性がよくわかる、とてもマニアックで面白い解説です。私の中でずっとナンバーワンで君臨してたアイリッシュ(=ウールリッチ)のことを、かなり(ミステリ作家として)下手糞呼ばわりしているのが衝撃でした!でも、言われてみればそうなのかもしれない。私がアイリッシュを好きだったのは謎解きの鮮やかさではなかった。都市に暮らす孤独な人間や、寄り添う恋人たちに対するリアルな親近感だったり、畳みかけるようなサスペンスのドキドキ感だったりした。
まるでエドワード・ホッパーの絵のように、閉じた夜の窓の向こうで、一人一人の部屋に灯りがともっていて、それが彼らにとって拠り所となっている感じ。そんな雰囲気が大好きなのです。

そう思いながら、ふと、何か腑に落ちるような感覚がありました。
自分が好きなものに答えはあるのではないか、というね。アイリッシュが教えてくれた(というか、小森さんの解説で気づかせてもらえた)。
ここのところずっと自分にはミステリーというジャンルは難しすぎて書けない(書きたくてたまらないのに、アイディアが凡庸でホトホト嫌になる!)というところをウロウロしていたのだけど…あえて苦手な推理的要素を強化しなくてもできることは他にあるのではないかと思えてきました。謎解きの鮮やかさに欠けても、別の表現で書きたかった世界に辿り着けるのではないか、と。
自分の能力の足りなさにヘトヘトでしたが、これまで思い込んでいたのとは違う方法でアプローチしてみたらいいんじゃないかという希望が見えてきました。もうちょっとこねくり回す意欲がでてきた。


ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。
勝負はそこからだというのに。
- トーマス・エジソン -

 

 ああ!そうだ。書き忘れましたが、今日のおやつに食べたのは宇都宮「フラッグス」の和栗のモンブラン。これがもーーー絶品でした!モンブランの中には抹茶クリーム。栗がゴロッと入ってる。タルトの生地の美味しさは格別。文句なしの美味さ!今まで食べたモンブランの中でも一番かも。

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