「それでも、生きてゆく」最終回


ああー。終わってしまったよ。
脱力。
前回が実質的に最終回といってもいい様相だったので、今回は洋貴と双葉の着地点がどこなのか?が描かれるはずだ、ということは大方わかっていました。
つまり、今回だけは、純粋にラブストーリーになるのだろうな、と(思えば最初からずっとラブストーリーでもあるんですけどね、まぁ、そういう細かいことはちょっと置いといて)。


愛し合いながらも”お互いの意思で”(←ここがポイント)別れてゆく、というラブストーリーは「ローマの休日」や「恋に落ちたシェークスピア」など、それこそ古今東西名作があまたありますが、形はどうあれ、やっぱり好きだなぁーこういうの。センチメンタルでありながら、ロマンティックで。
意志の力が恋を超えるってのは、どこか、その恋にはそれだけの価値があるのだという気がする。一見恋を捨ててるようでいて、ホントは昇華させているように思えて。
ローマの休日を見て、悲恋だと思う人はこのドラマを見ても悲恋だと思うかもしれないけど、私はそう思わない(「いや、それとこれとは全然違うでしょ」と言われるかもしれないけど、そう違わないと思いますよ)。
どちらも、美しい恋の物語だと思います。
洋貴と双葉の二人の恋は、最後までとてもきれいでした。
ボロ泣きしちゃうくらいせつなくて、美しかった。


最初で最後のデート。
洋貴が双葉を抱きしめる時の、その抱きしめ方がまったくもって、息を呑むほどステキだった。
そこに至るまでに重ねた日々や、もどかしいやりとりの先に、”絶対的にあるべき抱擁”そのものだった。
あんなに優しく、あんなに心をこめた抱擁を見たことがありません。
ふわっと包み込むようなあの絶妙なチカラ加減は奇跡だよ。
そして、やっと抱きしめてもらえた双葉の表情の美しいこと。闇の中でキラキラと輝く瞳が星のよう…
あんなにも幸せそうな彼女の表情を、抱きしめてる洋貴は見ることができないなんて。それだけでも泣けてくる。
双葉ちゃん、キレイだったよ(涙)


二人の畳み掛けるようなモノローグ。
あれが語らいや文通ではなく、お互いが心で思っているだけの「伝えずの想い」であり、しかもそれらはあたかも文通での応酬のように呼吸が合っていて、なおかつ、その思いの処理を二人とも同じ方法(おみくじのように木に結び付ける=これは最初で最後のデートのときに双葉が言った言葉をそのまま行動に移している)を取っているんだ、ってことに気がついた瞬間、ぶわっと涙が溢れました。
二人はそれでもとても幸せそう。心が繋がる、というのはこんなにも強い。
二人のこの状態を映像だけで伝える…ってのは、難しかったと思うし、その設定は常人には理解できない非現実性(ファンタジーw)があるのだけれど、そこがまたなんとも言えずこの二人にしか成しえないだろうプラトニック・ラブって感じでたまりません。
違う場所にいながら、同じ朝日を見て、希望を感じた二人だもの、無敵だよ。


別れても、心は通じ合っている。心は通じていても、会うことは無い。会うことはなくても、忘れない。きっと永遠に。
…ってのが、セツナくて苦しくて、でもどこか前向きで明るい日差しを感じられる見事な着地です。
恋が永遠のものとなる、それは唯一無二のあり方だと思うのですが、このドラマでは「その先」の予感もどこかに残しているのがいいですね。
双葉は「行ってきます」と言った。笑顔で手を振って。
その言葉の対となるものは常識的に考えれば「ただいま」だ。
いつかきっと、この言葉とともに、マボロシのような恋が地に足をつけて二人の元に戻ってくるのを想像したりもできる。


ラストシーンは予想外。でも、秀逸w
15年前、あの事件が起こった時点で両家族の皆の時計は止まったままだった。
それが今、少しずつ動き始める……ということの象徴としての、レンタルビデオ返却。
ちょっと可笑しくてマヌケなところがなんともいい。
余韻が、笑顔だ。「進め」の笑顔。未来を感じさせる。
15年。長く不毛な15年。
皆にとってはそうだったけれど、実は文哉の時間が止まったのは15年前(事件当時)ではなかったんだ、ということに、今回初めて気付きました。ちょっとした衝撃でしたね。
文哉の時計は5歳で止まってしまったんです。目の前で母親が死んでしまった、その時に。
罪を犯した彼は、14歳の形をした5歳の子どもで。今やさらに30男の形をした5歳の子どもで。だからあらゆる大人のロジックが通じなかったのだなぁ、と。妙に納得。
文哉は気が狂っているのではなかった。時間が止まってしまっただけ。
その意味では、洋貴や双葉と同類なんですよね。
このことに、最後まで気付かなかったのは視聴者だけでなく、物語の中の人も同じだった。
父親に関しては、いまだにわかっていない気がする。そして違ったアプローチをし続けて、傷つき続けてゆくのかも。哀しいね。
文哉にとって父は何者なのだろう?何者かになる日が来るのだろうか?
母だけをせつないまでに追い求める5歳の心に、今後も父の言葉は届かない気がしますね、残念だけど。
母の写真を前に初めて感情を露にした文哉の姿に、この物語は母の物語でもあるんだということを強く印象付けられました。
坂元さんのテーマの大きな部分に「母」ってモチーフがあるのかな。母を描くのが上手い人です。


このドラマで脚本の坂元さんが紛うことなく日本の宝だということがわかりました。坂元さんの作品は今後も見逃さないようにしたいです。
演じる俳優も誰もが巧く、世界観を大事にした渾身の演技を見せてくれた。
瑛太さんと満島ひかりが大好きになっちゃった(*^-^*)。この二人の出演作も今後チェックしていこう。
そりゃもう「一命」は絶対に観ろ、って感じですねw 
エビゾー……キツイけど(汗)
この二人の演技って、巧くて魅力的なのはもちろんなんですが、なんというか…誠実に役に入り込んでるのを思うんですよ。
解釈の度合いが深いのかなぁ。なんだろう?
ひらったく言えば表現力ってやつなんだろうけど、ホント、持ってかれる。心動かされるのです。
見る者を物語の世界にぐっと引き込む若きホープ、ですね、二人とも。
圭くんはまだまだだなーとしみじみ思ったわ(あの出番の少なさで比べるのもムリあるけど(爆))。
今回の現場はかなり勉強になったことでしょう。いろんな意味でガンバレ。


あ。蛇足ですが。
「洋貴の靴下がいつもヘン」ってのが役の上でのポイントで、視聴者も無理なくのっかって「ヘンだw」とか言ってましたが、私はちっともあれがヘンだとは思えませんでした。むしろオシャレじゃん?と思っていましたことをここに告白します。