私は「うつ依存症」の女

 

私は「うつ依存症」の女 [DVD]

私は「うつ依存症」の女 [DVD]

  • 発売日: 2004/01/23
  • メディア: DVD
 

 実際にうつ病を経験したアメリカの評論家・エリザベス・ワーツェルが「世の中の「うつ病」に対する認識を深めるため」に書いた自伝的ベストセラー「ProzacNation」の映画化です。

うつ病の現実をわざわざ映画で観たくはなかったんですが、ジェイソン・ビッグスが出てるので観ました。
が、フタを開けたらたいしてキツイ内容でもなくて言っちゃってよければ、頭がよくて母親に依存されてる(依存もしてる)若いお嬢さんの大袈裟な自己葛藤物語、って感じの内容でした。
ハーバードだし。若くして「ローリングストーン誌」で批評家大賞取っちゃうし。しかも美人で。「家族に問題あり」ってのだって、人によったら甘えのレベルだし。
なんというか…病気の根源とされる個人の状況(?)に重篤な感じがないんですよね。
ま、こういうのは人それぞれなんで何とも言えませんが(些細なことでも人によっては深刻に受け止めたり傷になったりもするので)。
ただ、この子の場合、明確なうつ病のトリガーとしてドラッグの多用と無秩序な生活と音楽評を書くという日常があったせい、ってのは言えると思うのね(そしてそれは「自業自得じゃん?」みたいな感覚は確かに感じるのです)。
大酒飲んでヘビースモーカーでコカインとマリファナやってて精神に支障をきたさないほうが異常。規律の無い生活はいっぺんで心のバランス崩しますし、音楽評を書くなんてのは、人のやってることを見て借り物の形で自己主張する仕事なわけで、よほどバランス感覚のある人じゃないとできないと思うし。
こんな生活じゃ間違いなく病気にもなろう、と。私だったらなるだろうなぁー、と。

他人のやってることを鑑賞・批評するだけの人生を続けてると、気がつくと「私」があるようで、実は無いという状況に陥る。自分がどんどん透明になっていってしまう。(映画だの俳優だののことをわらわら言ってるこういうサイトやってるってだけでもそういうのはあって、同時にクリエイティブなことしないと精神のバランス取れなかったりするもん。自虐的になっちゃうっていうか「どうせ自分はダメ人間」みたいに落ち込んだりする)。
だから「本当は自分、ここにいるんだよ。」ってことを自己確認したくなる。で、ある人はそれが他者の目で自己存在を確認するために他人の領域に強引に入り込むような乱暴な行為に出たりするんだろうなぁと想像できる。
ま、そういうこともひとたび「うつ病」と診断されてプロザックなんか処方されたら治っちゃうのか?ってのがまた不可解。それもまた新たなドラッグ・アディクトのひとつにかわりないような。

原題の「ProzacNation(抗ウツ剤プロザックの国アメリカ)」ってのには深い意味ありそうですね。邦題の「ウツ依存症」ってのも、すごく深みのあるグッドタイトルだと思います。
ま、病気のことは専門家じゃないのでわかりませんからこれくらいにして。

ジェイソンは精神状態が不安定な主人公・リジー(演じるのはクリスティーナ・リッチ)が自分を救い出してくれる存在と決め付けてナンパしたカレシ(レーフ)の役。
「知的でセクシーで優等生」な男の子です(うわー(笑))。
自分の都合で(っていうか、うつ病だから)、リジーはレーフを振り回しっぱなし。それでもレイフはリジーに優しく接してくれる。
でも、彼には秘密があって、それは、自分の妹が知的障害者だってことなんですが、そのことをリジーには黙っている。レーフはこの妹をとても大切にしているんです。無償の愛を注いでいる。
でも、リジーは詮索してその妹の存在を知る。そして、妹を可愛がっているレイフの姿を目の当たりにする。そのとき、思わずリジーはレイフに言ってしまうんですよ。
「アナタ、そういうシュミだったんだ。困った人間の世話をするのが好きなのよ。他人の不幸が楽しいだけなのね。」
その一言にレイフはブチ切れてリジーと別れちゃう。
要するにリジーは嫉妬したんですよね、彼の妹に。でも、それがそういう攻撃的な言葉として出てくる。彼の人格を否定し、彼の大事なものを貶めるような最悪の物言いをするわけだけど…これってうつ病だからなのかどうか微妙なところよねー。カッとしてとんでもなく相手を傷つけること言う人って、たまにいるし。
この、身障者の妹に接するときのジェイソン、ってのはもうちょっと描いて欲しかったなーっと思いました。優しくて、いい感じでしたので。

まー、でも、これは別にジェイソンでなくてもいいような役ではあったね。
なんだか、キャラが見えなさ過ぎて(要するに脇役すぎ)全然物足りない。
これはクリスティーナ・リッチの映画ですな。
実際、彼女はこの原作に惚れこんで映画化に一役買った(製作に加わってる)くらいですし、脱ぎっぷりも大胆で、リキの入り方が違う。巨乳だし(って、関係ないけど)。
母親役のジェシカ・ラングはさすがの上手さ!それと、ルームメートのルビー(ミッシェル・ウィリアムス。といってもミュージシャンの、ではなく。)が、良かったです。
精神科医アン・ヘッシュは…彼女の患者だったら病気悪化しそうな、わりとムカッとするオーラを役作りでなく醸し出してました(って、単に好きじゃないだけ(爆))。