BBCの伝説のドラマ「高慢と偏見」

とうとう見ましたよ!ミスター・ダーシー!
って、見たのはちょっと前なんですけど、余裕なくて感想を書けずにいました。(昨年末からコリン・ファースの出演作を立て続けに何本か見てるんですが、年末年始の忙しさやらなにやらで触れられずじまいのままです。あとで時間があったらゆるゆる振り返ってみます)
これ、放映時には「町の通りから女性が消えた」という伝説のドラマです。日本でいうところの「風呂屋の女湯がガラガラになった」っー「君の名は」現象ってところですね。
そんな噂にたがわず、とても原作に忠実な、いい作品でした。
結末を知っているのに途中のすれ違い状態にめちゃくちゃヤキモキしちゃうんですよねぇ〜。そこがまた楽しい。
このように原作の世界がきっちりと出来上がっている作品に関しては、「余分なアレンジを加えない脚本」と「時代考証に忠実なセット」と「キャラにはまったキャスティング」がカナメなわけですが、このドラマはそのどれもが秀逸です。
とにかくキャスティングが磐石なんですよ。キャラにブレがない!



ジェニファー・イーリーのリジーは、時々ちょっとワタナベエリコが入っちゃうんですけど(爆)そのビミョーなところがなんともイイのです!見始めの頃は「美人じゃない…よねぇ」などと思ったりするんですが、だんだんすごく美しい人に思えてくるんですよ。愛されキャラが立ちあがる。
こんなリジーに惚れた男だからこそ!の、ミスター・ダーシーなのだなぁ〜と納得。リジーは頭が良くて自分の意見がはっきりあって、いつも堂々としている聡明な人。でも、ホントはちょっと自信がない。時々揺らいで涙をこぼしたりしちゃう。ジェニファーはその「揺らぎ」の表現が巧いです。



コリンのダーシーは不動の人気を持つだけあります。ホント、ハマリ役です。
基本、無表情(ややムッとしている)なんですけど、時々かすかに表情が変わる。その変わり方が不器用で可笑しくてたまりません。
鼻にクッ、と力が入ったり、口元がかすかに緩んだりするだけなんだけど、その微動変化にさえ自分で自分に狼狽しているのが伺えるというとこがもう、なんといえずすごく可愛い。
全編通して表情の変化がない人なのに最後の結婚式の馬車中で弾けんばかりの笑顔を見せてるのにはギョッとしましたが…いいのか、ハッピーエンドなんだから。


天使のように優しいお姉さま・ジェーンと、心優しい好青年・ビングリーのお雛様のような健やかカップルもお見事でした。
ジェーンは本当に素適な人!おっとりした彼女の様子を見ていると、こちらまで優しくなれそうな気になります。
ビングリーはちょっと無邪気すぎて頭がユルそうに見えなくもないのですがw、陽性のオーラでいっぱいです。



うそつき不良男・ウィッカムと尻軽お馬鹿娘・リディア。
この二人も強烈でした。
リディアは他の姉妹とは持ってる雰囲気が全然違う。一人だけ1920年代カリフォルニアでキーストン映画のベイジング・ビューティーズ(水着で賑やかしをする大部屋女優ね)にいるようなイメージの女の子。
要するにハスッパなんですが、ロンボーンの田舎にはちょっといないタイプなんですよ。そこが原作のキャラクターをよりわかりやすくしてます。存在自体が異変、なんだもんね。
ウィッカムは、原作ではもうちょっと邪悪さがわかりにくい好青年のイメージあったんですが(なんたって一時はリジーが好きになりかかった人ですもんね)、ちょっとわかりやすいダメ男ぶりです。
嘘をつく男特有の雰囲気を出すのが見事な俳優さんでした。
それにしても、この時代の「駆け落ち」ってのは、ずいぶん大変なことだったんですね。他の姉妹にももはや良縁は来ない、とまでされる一族の汚点になってしまうなんてね。それを悟った時のリジーの表情が、とても悲しくて胸が痛みました。


三女のヲタ系・メアリーと四女のギャル系・キティ。
メアリーw これはもう、女優魂炸裂の演技ですよ。よくもまぁ、あのKYぶりだとか、性格ブスぶりをあれだけ巧く演じられたものです。
キティは地味ですが、田舎貴族のギャル系といったらあんな感じで十分なんだと思います。リディアまでいくとちょっと怖いもんね。


ビングリー妹役のアンナ・チャンセラーも芸達者。この人の階級意識丸出しの意地悪演技はなんてナチュラルなのでしょうか!
「ロイヤル・セブンティーン」に引き続きこんな役ばかり見ちゃって、アタシの中ではこの人のデフォルトが意地悪女となってしまいそうです。


なんだか登場人物紹介みたいになっちゃいましたが。
とにかく出てくる人物がみな面白いんですもんね。この物語って群像劇なのだなぁ〜とあらためて感じます。いろんな人がいて絡み合ってつながりあって物語ができてゆく面白さ。
6時間のコンパクトな連ドラですが、役者はもちろん、セットといいロケ地といい、興味深い見所もたくさんで、見終えてすぐにもう一度見たくなるようなドラマでした。満足です!


これ、ダーシーの視点からのものをぜひ書いてほしかったです。
だって、あの鉄仮面の下にどんな感情の動きがあったか知りたいもん。この人の場合、表情はもちろん言葉でもその内面は推し量れませんからね。
オースティンの中では執筆後もダーシーが生き生きと根付いていて、「ダーシーだったらこう言うわね」みたいなことを日常的に話したりしてたそうです。その頭の中の物語を、ペンで書きとめておいて欲しかったです!読みたかったー。
2次小説がやたらと多い人気作品ならでは、で、別の人が書いた「Darcy's Story」という、本編の設定を一切変えず(台詞も変えず)ダーシー視点で書いた小説が出ているのですが、それでも読んで妄想を膨らまそうかなぁ〜なんても思いますが…翻訳版出てないんですよね。需要、それなりにあると思うんだけどなぁ。
続編として有名な2次小説は邦訳版があります(エマ・テナント著「続・高慢と偏見」)。昨年末に読みました。これについてはまた後ほど。