遠い友へ

私ね
今ならわかるんだ
あの日あなたが突然に
姿を消してしまったわけが


あの日
桜が降り散っていたあの日

巣鴨の駅の一番端に
呆けたようにしゃがみこみ
はらはらはらはら 
ただひたすらに
降り散る桜を見てました
山ノ手線の線路の上に
はらはらはらはら
泣きたくなりそな唇をあけて
風に舞う
花の最期を見てました

 

一瞬のようで
永遠のような
春の景色にあなたは消えた
一瞬のようで
永遠のような
懐かしい匂いのする残像を残して

 

あの日
私は何も知らなかった
何も言わずに消えてしまったあなたが
ただ不可解で
理不尽で
腹立たしく
悲しくて
でもね、今ならわかるんだ
いつかはわかると言われたけれど
私の「いつか」は、今ごろでした
ごめんね
あたしはいつもこんな調子
調子外れの唐変木
いつも遅れてやってきて
大事なことを見落とし続ける

 

あなたの「どうしょうもなさ」も
不甲斐なさも、偏屈ぶりも、気難しさも
私は全部好きでした
だから
あなたが向かっていった先が
いつまでも
どこか輝いて見えるのです
たとえば
流れる雲が手にとるように見える
一面の廣野のような

 

私は今ごろのろのろと
荷物をまとめて目を上げて
あなたの消えたその先の
見た事のない道を見つめています