遠景

道と空とは彼方で出会っている。
地平線の、陽が沈むあの場所で。

 

けれども私たちはそこにたどり着くことができない。
転がる石のように、私たちは荒野に置き去りにされている。
果てしなく続く道の、ごく一部しか見通せない。
見える風景は限られている。
舞う砂埃、朽ちた看板、無人のガスステーション、廃車、廃屋、鳥達の影。
風、草いきれ、青空、そして遠い日の

かつてそこを通り過ぎた人の記憶。


記憶。


記憶だけが残り、それらは時とともに膨らみ続けてゆく。
道は記憶の集積所だ。

結局、どうということはないのかもしれない。
いずれは誰もが去ってゆく。
誰一人例外なく、生まれて去ってゆく。
去りゆく魂はきっと知ってる。
道と空が出会う場所にたどり着く方法を。