「天使と悪魔」

本日封切りの「天使と悪魔」に朝イチで行って来ました。
(ちょっとネタばれしちゃうので、気になる方は読まないでね)
前作「ダヴィンチ・コード」よりはわかりやすくてエンタメ度高し!という噂を聞いていたので、楽しみにしていましたが、荒唐無稽度も増しておりました。それは主に、CERN(欧州原子核研究機構)が作り上げた「反物質」の存在とその扱い、ってな部分でのことです。トンデモw
物語の中での「反物質」はまったく事実とは異なります、というCERN関係者の学者先生のサイトを見て、ホッとしました。そりゃそうか。


宗教と科学の対立や、ヴァチカン内部の権力争いのようなもの自体は、わりとありがちなのですが、教会、古文書、暗号、イルミナティ(秘密結社)…それらの謎めいた佇みに触れることが、物語とは別にまたとにかく面白い。カトリック教会の歴史に潜む闇の深さ(過去の亡霊の多さ?とも言えますね)は尋常じゃないわけで、ちょっと覗いただけでドキドキします。
そういう意味での面白さは前作「ダヴィンチ・コード」の方が深いと私は思いますが、現在起こっている事件を解明するという観点では本作の方がより面白かったし、映画的にも成功していると思います。
今回は謎解きに加えてタイムリミットが設定されているので、手に汗握るような高揚感もかなりあります。
ヴァチカン保管庫酸欠シーンは手に汗どころか呼吸困難になりそうでした。あれ、特にいらんシーンなのだけどねw
舞台はヴァチカンとローマ。名所とそこにまつわるエピソードがたくさん出てくるので、この物語の通りに観光したらさぞかし楽しいでしょうね〜。


数ある謎めいた手がかりの中で、私が一番好奇心を刺激されたのは「アンビグラム」でした。
最初にこの存在を知ったときは衝撃!!!でしたよ。人の叡智に感動しました。
これを上手い具合に(暗号とかに使って)推理に関連付けるのかと思いきや、そんな話でもないってのが、なんかちょっと残念です。
場所の暗示と焼印に利用されるだけなら文字がアンビグラムである意味はないような…
こちら↓は前売り券を買ったときにもらった砂時計です。



ここに書いてある「FIRE」の文字がアンビグラム
逆さにしても同じように読める文字、です。スゴイよね?!


それと、特筆すべきは前教皇のカメルレンゴを演じたユアン・マクレガーのカッコ良さ!
びっくりしたー。
今までああいった清廉なイメージの役をやってるユアンを見たことが無かったというのもあって、新鮮な驚きでした。
恐ろしい悪魔はどこまでも美しく装う…とでもいったところでしょうか。
コンクラーベに来るように言われた時の医務室での表情は息をのむほど発光しておりました。
天使か悪魔か本当にわからない、怖いほど内面が見えてこない不思議な表情をするんですよ。ぞくぞくしたね。
この悪魔のような男も、神に忠実な天使のような思いの下にあのような計画をたてたのやもしれず…そう思うとまた人間の善悪の基準のブレの大きさ(人間の不完全さ)に愕然としたりもするのですけどね。
てか、この男の真実は原作を読まねばわからなくて(私は未読だけれどオチは知ってる)、映画の中ではそこがまるっと端折られているので計画のそもそもの動機というか意図が読み取りにくくなってて残念です。もう一工夫欲しかったね。


ちなみにトム・ハンクスは…私は彼の大ファンですのが、こりゃもうトム・ハンクスがやらなくてもいい映画の筆頭(だと私は思っている)なのでどうこういうつもりはまるでありません。
トムはラングドン教授という、探偵役であるというのに狂言回しのようなおそろしくキャラの立たない「機能」としての役割を果たすのみです。
だから隣に美女がいても毎度何事も起こらない。てか女連れであんな過激な活動すんなやw


最後に、劇中で印象に残った言葉二つ。


「本当に無知なのは、稲妻の性質を説明できない者と、稲妻の恐ろしい威力に敬意を払わない者のいったいどちらでしょう?」
(by 前教皇のカメルレンゴ)


「宗教にも欠点がある。それは人間に欠点があるからだ」
(by 新教皇のカメルレンゴ)


科学は人間にとって必要なものですが万全ではなく、宗教も人間にとって必要なものですが万全ではありません。
人は、もっとゆっくりと神(もしそれが存在しないというのなら、畏怖すべき偉大な力と言い換えてもいいでしょう)と「対話」すべきだと、感じます。
遺伝子組み換えやクローンなど科学が神の領域を侵し始めていると思える現在こそ、生命及び世界の根源に思いを馳せるチャンスなのでは?
って、この映画の感想の〆にこんなこと言うなんてアタシもトンデモ(汗)。