秋の午後




幸福は厩(うまや)の中にゐる
藁(わら)の上に。
幸福は
和める心には一挙にして分る。

  頑(かたく)なの心は、不幸でいらいらして、
  せめてめまぐるしいものや
  数々のものに心を紛らす。
  そして益々(ますます)不幸だ。

幸福は、休んでゐる
そして明らかになすべきことを
少しづつ持ち、
幸福は、理解に富んでゐる。

  頑なの心は、理解に欠けて、
  なすべきをしらず、ただ利に走り、
  意気銷沈して、怒りやすく、
  人に嫌はれて、自らも悲しい。

されば人よ、つねにまづ従はんとせよ。
従ひて、迎へられんとには非ず、
従ふことのみ学びとなるべく、学びて
汝が品格を高め、そが働きの裕(ゆた)かとならんため!



中原中也『山羊の歌』より「無題」幸福)

画像は今日の午後訪れた大学の構内。
秋の日のキャンパスって、いいですね。
誰もいない中庭に、午後の陽が溢れていました。


誰の元にも、一生一度の秋の日です。
嬉しい気持ちで過ごせましたか?