「網走番外地」

網走番外地 [DVD]

網走番外地 [DVD]

  • 発売日: 2002/07/21
  • メディア: DVD

1965年の東映作品。
超有名な作品なのに、ちゃんと観たのは初めて。
全共闘時代の学生に妙に人気が高かったというので、気になったので観てみました。
当時の若者たちのゲバルトに対する感覚が、ヤクザ映画のヤケっぱちな感覚に通じていたようですね。
(自分なりに)正義のために動いているはずなのにパクられて留置所へ、というのもよくある話だったわけで、そういう点も、一生懸命なのになぜかうまくいかない高倉健が演じる極道にシンパシーを感じるポイントだったのかもしれません。


暗くてどーしょもないイメージが先入観であったんですけど、実際は、なんだか妙にフッ切れた気持ちよさがありました。
文句なしの活劇だったし、人情豊かで優しいお話でした。
その世界観がスキかどうかは別として、映画としてはすごく良くできていると思いました。
展開が面白くてグイグイ引きこまれるし、メリハリが利いてて面白いです。
逃亡時のトロッコのシーン、鉄道線路のシーンなどは、本気で手に汗握ります。
クライマックスには「ぎゃー」って叫びながら指の間から覗き見してしまいましたよードキドキして(^^;;。


高倉健はお人好しで優しいのにとんがって悪い方向に行っちゃって、結局人生うまくいかないという哀しい若者を演じてます。
カッコイイというよりは、気の毒でナサケナイ感じ。
でも、そんなヤツにもきっといつかいいことあるさ、という終わり方になっていて清々しいです。
オープニングではこの世の果ての地獄みたいな網走番外地の雪景色も、ラストシーンではコカコーラの宣伝みたいにキラメイて見えます。
この終わり方で、この映画が好きになりました。
あ、でも、幼い時の回想シーンはちょっとキツかったなぁ。
男の子が「母恋し」の風情で恵まれずに育つなんてセツナイ話は、ちょっと見てられませんよ、泣けちゃって泣けちゃって。
こういうウエット極まりない映画に泣かせのシーンがあるのは仕方ないのかもしれないけどね。こういうの弱いんだもぅん。


ラカン嵐寛寿郎)の凄味のある存在感には、グッときます。
雑居房大勝負のシーンでは物語の膨らみが一気に増します。息を呑む。
登場人物は誰もが一見荒くれのどうしょうもないヤツなんですが、誰もがどこかにものすごい大きな悲しみと寂しさを抱えているんですよね。外からはよくわからない。ふとした拍子に、それを感じる。存在自体の哀しみ、というか。
でも、いろんな理由で生きてゆくのに必死だった当時の人たちにとって、こういった映画は本当に力になったのだろうと思います。
戦後の共同幻想の力がまだ効いていたのだと思う。網走の囚人にもシンパシーが持てる時代、というか。
今の日本では、こんな映画で勇気づけられる人はあまりいないだろうな、と、思いますね。生きる上での苦悩の種類が違ってきちゃってるし、誰もがいろんな意味で自己中だし、もはや闘争の時代ではないから。
そういう意味では、とても時代性を持った社会派作品なのかもしれないですね。


でもって、どうでもいいことですが丹波哲郎がめっちゃくちゃカッコイイ!
ひー。びっくり。
古い映画を見ると思いがけない人がカッコよくて驚きます。


探したら予告編があった↓


網走番外地(予告編)


これ見る限りではイメージ暗いねw