TBS「広島・昭和20年8月6日」

先日HDDに録画しておいた「広島・昭和20年8月6日」を見ました。

さとうきび畑の唄」のスタッフが製作したそうで、あんな感じかなぁと漠然と想像。ドラマ自体はいろいろ言いたい事が多いけど、こういうドラマを作る意義の方が大きいように思うのでそちらを買おう、みたいな(?)。

さとうきび~」は日本人が日本人を殺す、という異常な結末に、今までの戦争ドラマにはない怖さがあってすごく印象的でしたが、今回のドラマには戦時下の悲惨さがそれほど感じられないささやかな幸せのある日常(それは現代の私たちの生活にも近く、感情移入がしやすいのかも)が、瞬時にして失われるという…あっけにとられるような理不尽な悲しみがよく出ていたと思います。

エンタメ的に言うと、脚本がイマイチだと思うんですけどね。

台詞回しが冗長。無駄なシーンも多い(憲兵との追いかけっことか)。展開に無理がある。挙式した次の日に妊娠発覚とか…あの時代婚前交渉なんて不良少女のやることだよね。

セットとCGの捌き方はすごくよかったと思います。あのセット作ったんならなぜもっと脚本を練れなかったかなぁ…って感じ。もったいない。
松たか子はスゴかったよ。
松さん、好きなんだよね~私。松さんだからこのドラマも期待してたのです。
期待以上の素晴らしい演技でした。演じる人間になりきってるもんね。
ちょこっとの出演でしたが国分太一も良いお芝居してました。
でね、なんと言っても末っ子の弟役の冨浦智嗣くんね。この子、可愛いねぇぇ。声もいい。
私はこの子が出てくるシーンでは始めから涙が止まりませんでしたよ。ああ、こんなイタイケな子が戦禍に巻き込まれてしまうんだ…と思っただけで泣けて泣けて…。出征するシーンではもう号泣。
私は息子が生まれてから、それまでちっとも感情移入のできなかった「男の子」という存在に異様に反応するようになっちゃったんですよね…。とにかく小さな男の子が出てくると、可愛くて可哀相でせつなくてイトオシくてたまらなくなって泣けてくる。母の視線になっちゃう。
結局、戦地へ行ってて広島から離れていたこの末の子だけが家族で生き残るんですよ…。

こうして家族を全員戦争に奪われた人は、当時の日本にどれだけいたのだろう。
生き残った彼らの心を考えると、その果てしない悲しみに言葉もありません。あれから60年、それをずっと抱えたまま生きてきた人たちがすぐ身近にいることを、忘れちゃいけないです。終わらない戦争をまだ生きている人がいることを。

エンドロールの被爆者の写真にはちょっと違和感を感じました。
悲惨な戦争の事実から目をそむけてはいけない、というのはわかります。でも、あまりにキツイ。
それに、こうして被爆者映像使って戦争反対を訴えるなら、ドラマは必要なくなっちゃうと思うんだよね。ドキュメントの方が何倍も事実を伝えられる。
それを夕食時に美味いもの食いながら見るようなボケた感性は持ち合わせてないですが。
ドラマだからこその良さ、ってのもあるよ。

今年は戦後60年なので、通年よりはこういった戦争をテーマにした特番が多かったように思いますが、私たちが子供だった頃と決定的に違うのは、こういう番組を子供が見てても親がフォローできない&フォローしようとしても説得力がない、ってことですかね。
どんどん風化してゆくのを感じる。
次世代に対して自分のできることはなんだろう?と思うと、わりと暗澹たる気持ちになるよ。何にもできなそうで。


何があっても戦争はイヤだ。どんな理屈をもってきても、戦争を正当化することはできない。
その思いをもって反戦活動をするのも一つの方法かもしれない。
けれど、私は、ただ悲しもう。悲しみを知る人になろう。祈りの心を忘れない人になろう。
悲しみを少しでも無くすには「今」何をすべきか、実質的なことを考えられるようになりたい。そして、できることから実践してゆけたら…と思います。