「レスリーの時間(とき)」

 

レスリーの時間

レスリーの時間

  • 作者:志摩 千歳
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本
 

 志摩千歳・著(産業編集センター刊)。
この本は出てもたぶん買わないだろうな、と思っていたのですが、今日書店で平積みになっておりましたのを見かけたら、つい手にとってレジに向かってしまいました。
なんというか…いきなり、すごく懐かしい人に会ったような気がしたの。
無視して通り過ぎることができなかった。
昼食を食べに出かけたトンカツ屋で、ちょっと開いて読み始めたら、あまりの面白さに夢中になってしまった。
食べるのも忘れて読み進んだ。ぐんぐん引き込まれる。
あっという間に読めてしまう本なんだけど、エピソード満載で、絶対損は無い感じします。
この本、今までの出版物にはなかったくらい、すごくレスリーを物語ってるような気がします。作者の方のレスリーとの距離のとり方も絶妙で、好感度もかなり高し。文章もうまい。カッコつけてもいない。
あくまでも作者はすごく自然体でレスリーを見てるし、だからこそ読者もすぐ近くでレスリーの存在が感じられる。
悪く言えば暴露的なネタもあるんだけど、そこに作者が邪悪な感情を介入させてないので、例えば唐さんとレスリーのやりとりなんかも、すごく自然に書かれている。二人の空気がとてもいい。
笑うレスリ、怒るレスリ、疲れ果てているレスリ、酔っ払ってゴキゲンなレスリ…どれもいきいきと、かつてのレスリがそこに立ち現れるかのよう。

エピソードはその一つ一つがたとえ些細なものでも、いろんなことを想像させられる。
手作りのケーキを自分で持ってくるカレン・モクの話なんて、ものすごく「うわー、いいこと聞いたなぁ」って感じだし、レスリのホテルマニアぶりや、箱根での楽しい旅を話すレスリの顔を想像するのもとても楽しい。
中でもファンとの関わりの部分は、私らにはもっとも興味のあるところ。
あの、伝説の(笑)1000人サイン会の時も、あんな忙しい中でちゃんとファンからの手紙を全部読んでくれていたレスリ…。

私の記憶もそこに戻る。
あの、度肝を抜かれるような大行列を思い出す。
精一杯に着飾って、プレゼントを持って、夜明け前から並んでいたファンの顔、顔、顔。
あの日、私はレスリにファンの皆さんからの言葉を英文に翻訳したものを渡しました。
花花街市の企画で、「新年の絵馬奉納」ってのがあって、そこにレスリーにあてて書かれた「お願い」をね、まとめて渡してもらったの。
冗談みたいな企画なんだけど、ただただ、レスリに笑って欲しかったから。
ああ、きっとレスリはあれ、読んでくれたんだ~と思うと、今更ながら嬉しい。
もしかして、狙い通り笑ってくれたかもしれない。
そうだったらいいな、と思う。
微力ながらこんな私でもレスリを一度でも楽しい気分にさせられていたのなら、なんだかめちゃくちゃ嬉しいなぁ、と…ジンワリと思う。

あの頃、見聞きするレスリ迷の皆さんの情熱の凄さにはいつも圧倒されていたけれど、この本にもそのファンの「必死ぶり」は書かれている。
あらためてビックリする。レスリーってこんなにもスターだったんだなぁ、なんて間抜けなことを思ったりして。そりゃそうよね。
新幹線での追っかけや、カーチェイスやホテルへの出没や…みんな、無茶苦茶に一生懸命だったんだね…。
なんだか、せつない。
そんな彼女たちを批判をする気もないし笑う気もない。ただ、そんな彼女たちのことを思うと、ものすごくせつなくなってしまう。
必死で手を伸ばして、でも「あの星に手が届かないよ」と泣いてる子供みたい。そんな子供を「馬鹿だ」と言うのは簡単だけど、その切なさは、子供だったことのある人ならちょっとわかる。