瑛太さんがスゴい件


CXはいろんな意味で見たくないTV局の筆頭なのですが、ドラマ「それでも生きてゆく」だけは相変わらずガッツリ見てます。
毎回スゴイ展開だ。ものすごくおもしろい(という言い方にいつも違和感があるんだけど、毎回終わった瞬間にめちゃくちゃ次回が見たくなる)。
脚本の細かいところまでがすごくよくできてるし、演出が行き届いているし、全員の演技が神がかってるしで、ホントに目が離せません。
いちいち唸っちゃう。(ん?前にも同じようなこと書いたようなw)


特にねー、回を重ねるごとに瑛太さん(ウチではなぜか「さん」付け)の演技にどんどん引き込まれちゃってます。
何やっても瑛太さんは瑛太さんなんだけど、物語力っていうかな…役そのものに見えるから不思議。瑛太さんでありつつも、役に入ってる自然さがすごい。それで堂々の主役を張ってるんだから。
満島も凄くイイ。役のせい(空気が読めないところに時々イラッとする)もあって好き嫌いは分かれると思うけど、私は興味深く見てます。今回の役は他に代わりがいないだろうというくらいハマリ役だし、巧いです。巧すぎて痛い。イタタタ…って感じ。セツナイ。
ものすごく障害(外的なものも内的なものも)が多いこの二人の想いが、いったいどこに向かうのか、今はまだ想像もつかない。
けれど、その行く末がドキドキするほど知りたいです。この難しい状況を、どうもってゆくのかなぁ。
暗くて重い題材でありながら、嫌悪感を乗り越えて引き込まれてしまうのは、脚本がフォーカスしているのが、殺人者の闇や事件そのものではなく、その周辺の人物のそれぞれの思いや葛藤がどんなもので、それがどこに行き着くか…というところだからなんでしょうね。
こんなに良くできたドラマ、滅多にお目にかかれないですよ。
ビックリするほど視聴率が低いんだけど(爆)、たぶん頭の悪い人はこれ、理解できないんじゃないか?心理描写細かすぎて。
去年日テレでやってた芦田マナちゃんの「Mother」も良かったけど個人的にはそれ以上だわ(てか、これも同じく坂元さんのオリジナル脚本ですから驚くね。天才か)。


このドラマを見て、たぶん私は初めて加害者の親というものに興味を持ちました。
これまでは「(少年犯罪の)加害者の親なんて同罪だ。全部親の責任!」と問答無用に意識の中で切り捨ててたのだけれど、果たしてそうなのか?という感覚が、このドラマを見ててちょっとだけ芽生えたのです。ドラマとはいえ、時任&風吹夫妻があまりにフツーの人なので。
この人たちの子育てに異常性があるとも思えない。
だったら、ごく平凡な子どもにも不可避の何か…闇のようなモノが存在するのだろうか?
家庭環境や育て方に関係なく、どうにも逃れ得ない罪を背負って生まれてくる子どもというのもいるのだろうか?
どうやったらその悪魔が顔を出してしまうのだろう?
そういった興味を覚えて、このドラマの事件に酷似した(てかモデルにしているであろう)かつての神戸児童連続殺傷事件の「少年A」の保護者の手記を読んでみました。
でも、この事件に関しては、やはり天使はいきなり悪魔にはなっていなかった。
手記を読んだ限りですが、あんな凶悪事件を起こす子どもはやはり「普通の家の普通の子」ではないのです。
少年Aは、ぱっと見は普通でも、いったん目をつけられたら身の危険を感じる…というほどに周りの人たちにとっては「ものすごく恐い子」で、実際、さまざまな問題行動を繰り返していました。
事件当時も近所では真っ先に「あの子が犯人では?」と疑われています。14歳の子を疑う、ってんだからよっぽどでしょう?
前兆はいくらでもあったのです。それはずっと前から見えていたのです。
それでも、見事に親(母親)は放置していた。というか、そもそもまったく気づいていないんですよね。衝撃です。
周り中が気づいているのに、親だけが子どもの異常に気づいていないなんて、普通だったらありえないことです。主婦で、PTAの活動にも熱心で、地域社会にどっぷりだったのにも関わらず。
問題行動も「この年頃の子どものことだから、しょうがないか」くらいの認識なのですから、驚くべき鈍感ぶりです。
鈍感…で片付けられないほどの無関心、かもしれません。
そのせいか、母親が書いた手記は罪の意識が希薄でした。鈍感ぶりは文章にも出ています。
表面では被害者に申し訳ないと書いていても、すぐにそれ以上に自分の不本意な感情が出てきてしまっている。
被害者は誰か?とつっこみたくなる言動が実に多い。


たぶんこの本を読む人のわりかし多くが、「どんな風な育て方をしたらこんな凶悪犯罪を犯すような子が育つのだろうか?」というのを反面教師として知りたくて手に取るのではないかと思いますが、その答えはここにはありません。
母は自分の子育てが間違っているとは思っていないので(他の兄弟はまともに育っている、ということもあって)、自己批判がないのです。だから具体例もないし、反省もない。「いったいなぜ?」の集積があるのみです。そりゃ本人が書いた手記ですから、無理もないけれど、被害者も読む可能性がある出版物に書くようなことではないでしょう。
この母親を、第三者はどう観察していたのか、ホントのところどんな人だったのか、それが知りたくなりました。


話は逸れましたが、ドラマではたぶん犯人である少年の衝動(罪を犯すことに快感を覚える性癖)は由来のわからない「不治の病」として有耶無耶に終わるのかもしれません。
そういうところを追求するのが本筋じゃないドラマだからね。
どうして彼が罪を犯したか?は謎のままでもいいのです。
その不条理な謎に翻弄されて、傷つき苦しんだ多くの人たちが、果てないと思われる絶望の中から、それでも生きる希望をどうにかして探す…その再生の過程を丁寧に描く、というのがこのドラマの本筋です。
たぶん、被害者家族にとっても加害者家族にとってもこれ以上の不幸はない、ってところから始まっている。
ものすごい、救いようがない不幸の中から、人はどうやって立ち上がるのだろう?…という、難しい課題への挑戦。
それが見どころです。だから、見ていてどこか強い磁力を感じるのです。
人間の優しさ、強さ、誠実をきっちり描いてゆく中で、それが見えてくる。
「敵」である相手と震えながらも向かい合い、対話をはじめるところから新しい地平が浮かび上がる。
希望ゼロの人を中心に据えつつも、実はとても、人間の可能性を信じるドラマになってる。
どうか、あまりの視聴率の悪さに打ち切りになりませんように(爆)。ちゃんと最後まで丁寧に描いてくれることを願っています。


てか全然話は違うけど、ダイハツのCM!
サトエリ瑛太さんにケータイ投げてるよ(哀)なにこれー。
今この二人を共演させないで欲しいわー。
なにも集中治療室で脳死状態のはずのサトエリ(←ドラマの中での現況(汗))をわざわざつれてこなくても、他に女優は山のようにいるでしょうにっ。