読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画製作という奇跡の中で


書店で見かけて、勢いで買っちゃいました。

天使と悪魔 ムービーコンパニオン

天使と悪魔 ムービーコンパニオン


トムのファンであると同時にダン・ブラウンのファンでもあるので、2人のインタビューが載ってるのを期待したのですが・・・
フタ開けてみたらインタビューはろくすぽ載ってないし、トムの写真もたいしてありませんでした。
ただひたすらこの映画の製作過程におけるセットや小道具のメイキングや撮影の様子が載ってます。その圧倒的な記録に驚きました。
インタビューが少ないのは残念だったけれど、別の意味で感動してしまう一冊です。


「天使と悪魔」はよくできた映画ですが、その裏側を知ると”よくできた”なんて言葉が空疎に響きます。
もうね、トンデモないですよ。作品への手のかけようがハンパじゃない。
あの映画に出てくるバチカンの歴史的建造物の数々は、すべてハリウッドに組まれたセットだということをご存知でしたか?
システィナ礼拝堂も、パンテオンも、サン・ピエトロ広場も、サンタ・マリア・デラ・ヴィットリア教会も、ナヴォーナ広場も・・・とにかくありとあらゆるところ(その壁面の絵画も、燭台も、祭壇も、タペストリーも、調度品も、彫刻も、こまごまとした小物も含めてですよ!)全てセットで再現したというのですから言葉がありません。
それであのリアルな映像ができあがってるんですからね。まさに”ハリウッドは夢の工場”ってなもんです。
彫像一個作るのだってどんだけのことか考えてみると気が遠くなりますよ・・・CGじゃないんですから。美術さんが実物大をちゃんと作ってんの。
こりゃメイキング・ブック作らずにはいられないでしょうね。この記録を残しておきたい、と当事者のみなさんは切実に思ったことでありましょう。


たったワンシーンのために、膨大な労力をかけるのは「イントレランス」の時代から変わらぬハリウッドの矜持なのかもしれないけれど、それにしても桁が違う。凄すぎ。
映画製作とは人間の英知の結集であり、究極の創造なのだ、ということをあらためて感じ入る思いがします。途方も無いですよ、ホントに。
映画はTVドラマの延長ではないんですよね・・・。決して安易に作られていいものではない。
視覚がもっとも大切な映画の世界において、物語の「場」を現出させることは大前提です。イメージの土台ですから。
”そこをケチったら映画撮る意味が無い”とトムは言ってますが、ホントにそうなのでしょう。
でも、ここまで手をかけられる映画もそうあるもんじゃない。贅沢でゴージャスな製作が許される作品はごくわずかに限られる。
だからこそ関わっている人たちはより一層、特別であることへの自負を持ち、力が入るのだろうな。
俳優だってそうです。あらためて、トムの偉大さに感じ入っちゃいましたよ。
スターがスターたり得る一つの要因は、これだけの人間が集まって総力を挙げて取り組んでいるプロジェクトの常に真ん中にあって、象徴として作品を牽引していかねばならないという・・・その計り知れない重荷を背負って立っていることそのものなのではないかという気がします。
それほどこのプロジェクトは膨大なのです。かけるカネも、投入する人員も、集まった「知」の威力もハンパ無い。
ラングドン教授を演じるトムはそのど真ん中に立っているんですよね・・・普通の神経じゃもたないよなぁ。
なんだか今まで「ラングドンはトムでなくてもいいしー」とか「何も演技らしいことしてない、ユルイ」とか「髪型がヘン!」とか言いたい放題で評価低すぎだった自分を大いに反省。
トムはこの映画で”何が最優先事項なのか?”をちゃんと把握していたのですね。ゆえにあの佇まいだったわけだ。


ダン・ブラウンが、”小説を書くことは映画製作に比べたらどれほど自由で気楽で思いのままであることか。映画を作るのはまさに奇跡だ!”という趣旨の一文を寄せてます。
現代の小説家の中では他の追随を許さないほどエキサイティングな仕事をしてる非凡なクリエイターをもってして、こんな言葉を言わせてしまうんですから、いかにこの映画の製作現場が途方も無かったか、ですよね。
メイキングを読んで、もう一度じっくり作品を見返してみたくなりました。