ピアニスト、ショスタコーヴィチ!

ショス様ジサクジエーン集です。
ピアノ5重奏(1950年代の録音)とP協1番(1957年)2番(1958年)、「2台のピアノのための小協奏曲」(1966年)が収録されています。「2台の〜」で一緒にやっているのは息子のマキシム。


ショスタコ自らが弾くピアノってのを一度聴いてみたかったのですが、聴いてビックリ、しばし呆然。
ショス様…

ハチャメチャです!

これは、作曲者だから許されるんだと思いますねぇ。いくらなんでもこんなソリストはどこにもいないでしょう。
なんかもう、やりたい放題つっぱしっちゃってます。
それでも、なんとなくヘンなノリが生きてて、めちゃくちゃなのに面白い。存在感がすごーーくある。
てか、単にこれを弾いているのがショスさん本人だと思うからオーラ感じるだけかもしれません。
何も知らないで曲だけ聴いたら、「なにコレ?」で終りかも。
もはやその辺のところはようわからん。
なんだかこの演奏、「しゃべり」に近いような気もします。
しかも、べらんめぇ調。
江戸っ子だね?(んなわけない)
ピッチが全編通して一定ではなく、ムラっ気があるので、そう感じるのかもしれないです。
わーっと早口でまくし立てたと思ったら、急に口淀んだり、しどろもどろになったり、またわーーっと息せき切ってしゃべりはじめたり。
ショスさんはすっごい早口でせっかちだった、というけど、そんな感じ出てます。
それと、メチャクチャな中にも「ああ、ここは本人、こう弾いて欲しいのかぁ」という、作曲者の意図、のようなものが演奏から推し測れるのはなんとも新鮮で、楽しいものでした。
P協1番は超特急で!ってなw


とはいえ、このアルバムのキモは演奏の質だの音だのそういうのではないところにあると思います。
ホントにコレを本人が弾いているのだ…という感慨。
フワーっと涙が出そうになる。
ショスさんが、生きて、ピアノを弾いている。そのことがもう、グッとクる。
手を伸ばせば体温さえ感じられそうなほど、そこにはショスさんの息づかいが感じられます。
しかもすごく、その人「らしい」姿でそれは存在する。ああ!やっぱりアナタはそういう人でしたか!みたいな。
これは単なる音源であり記録だけれど、音楽が流れる瞬間、それは現実に立ち返り、命をもつ。
私は初めてショスさんに会えたような気になりました。
そういう意味で、このアルバムはお宝ですよ。
自作自演集は他にも出ているようですのでまた探してみたいと思います。


余談ですけど、ショスさんって、第1回のショパンコンクールで特別賞(佳作?か何か)受賞してるんですね。ハタチの頃。
なんでも、コンクールの期間中に盲腸が痛くなって本領発揮できずに入賞できなかったそうです。
ちなみにこの時の優勝者はソ連レフ・オボーリン。こちらもハタチ。彼は後にボロージャの師となる人です。
人に歴史あり、ですなぁ。
ショスさんはとてもショパンを弾くような人には見えませんが…そりゃ音大生だったんだし、ふつうに弾くのか、ショパンも(^^;;。
それ、激しく聴いてみたいものですが…まさか音源は無いよね?