「シャッターアイランド」

DVDを観ても最近ほとんど感想書いてないですね…。本を読んでも書いてないし。
ブログ読み返すと映画や本を観たり読んだりしない人、みたいですけど、そうではないのよ(汗)。
まぁ、映画(DVD)はそんなに観てませんけどね。でも本を読まない日はないなぁ、感想を書くに至らないだけで。
昨夜は遅ればせながらこの作品を見ました。

シャッター アイランド [DVD]

シャッター アイランド [DVD]

  • 発売日: 2010/09/10
  • メディア: DVD


(以下ネタバレあります)
精神異常や幻覚、妄想などが主軸にあって回っている物語というのは反則だなぁ、と常々思う。
ホラーかと思ったらそうではなく、ミステリーかと思ったらそうではなく、陰謀物かと思ったらそうではなく、全部精神異常者の幻覚でしたーみたいなのって。
「ドクターモローの島」風味のオープニングから積み重なる魅惑的な謎が、ある過程で反転するわけですけど、行き先は結局そこですか…ってな脱力は否めず。推理モノだと思ったら違った。ホラーかと思ったら違ったという「深海尋人」の再来かと思ったw
”それもこれも妄想だったんだよ”って着地はある種哲学的な暗喩を感じさせたりもするし、イメージの集積で話を組み立てられたりして創作をするものにとって魅力的なのかもしれないけれど、やはりそれでは元も子も無いんじゃないか?という気分がどこかにある。
どんな思わせぶりなシーンや謎めいた記憶が映像として現れたって、全てが夢うつつを行ったり来たりしている人の頭の中のこと、とされてしまえばそれ以上興味のもちようもないわけだし、どこかに現実的な覚醒がないと、「主人公」に対する感情移入さえ難しい。
この作品はそういうところで回っているので(だろうと思う。ストレートに解釈すれば)、謎解き物語としては凡庸に感じます。
主人公は手に余るほどの「自分では認めたくない自分(過去の殺人。戦時中のものと家族間のものと両方ある)」を抱えてしまい、精神に異常をきたした犯罪者。自己否定から精神崩壊しているゆえに別の人格を作り出して生きている。別の人格は正義の人だ。正義の人格は自分に起こった現実をうまくすりかえることができる存在だ。連邦保安官で、ある事件の秘密を暴こうとしている。もちろんそんな事件はどこにもない……云々。大雑把に言うとそんな感じ。
しかしながらこんな種明かしではまるっきり面白くもなんとも無いので、あえて私は「本当は巨大な陰謀に巻き込まれてるまともな頭を持った保安官(が、洗脳しようとする周囲と心理的な戦いを繰り広げていく)」という視点で見ることにした。どこかにその確固たる証拠が無いものかと思いつつ。でもって、この作品はそういう天邪鬼な解釈をも受け入れる態勢を持ってる、ともいえるんですよ。
どこかに「主人公も精神異常者でしたーオシマイ」では終わらない不可解な印象を残してる。主人公と相棒の関係や、最後の言葉など…。洞窟の女医が言った言葉も引っかかる。彼女は「精神異常者扱いを受けるまともなインテリ」なのですが(いや、ホントはただの精神異常者かもしれない)、彼女の存在は「どんなまともなインテリでも意図を持つ者によって簡単に異常者扱いされうる」(逆も真)というのを恐怖と共に訴えかけてくる。
要するに真実の判断基準なんてものはどこにもない!=そういうところに立脚している人間の存在の危うさ、を感じるのです。
彼女のような存在があるからこそ、やってもいない犯罪の犯人として洗脳されることだってあるんだろうし。
どこからどこまでが、いつからいつまでが、誰と誰が、「正常」なのか?と立ち止まってしまう。
まぁ、いろいろと解釈の幅の広い作品です。観る人それぞれの感想もバラつきありそうですね。


そんなわけで、話の運びはイマイチだったんですが、ところどころの映像が不思議にキレイなのには惹かれました。特に印象的だったのはヒッチコック色の空です(そんな色は無いw要するにヒッチコックの映画に出てくる雰囲気の空ってこと)。久しぶりに、あんな空の色の映画を観た、って感じ。断崖や灯台などのシチュエーションもイイ。
ディカプもとても上手いです。私にとって彼はカッコいいというのにはほど遠い俳優なのだけど(爆)、演技はいつ見ても上手いねー。
それと、挿入曲のマーラーがステキ( ピアノ四重奏曲イ短調)。貼っておきます。


Gustav Mahler - Piano Quartet in A Minor (part 1 of 2)