「エッシャーの世界〜無限迷宮への夢」展



先週末、水戸の美術館までエッシャーの展覧会を観に行きました。
猛暑の中、わざわざ水戸まで行かんでも…と言ったんだけど、旦那がどうしても観に行きたいというので(←美術展に対する情熱がすごい。本人は音楽のヒトなんだけど「最近は音楽に絵が浮かぶ」とタケミツみたいなことを言ってる)。
お付き合いで行ったつもりが、行ってみたら予想外に素晴らしくって、すっかりエッシャーに魅せられてしまいました。
そもそもこれまで「エッシャーって「だまし絵」の人でしょ?」ってな認識くらいしかなかったのですが、実はすごい才能をもった版画家でありデザイナーなんですよね。版画好きの私の趣味にも思いっきり響いてくる人でした。


エッシャーの作品傾向には大きく分けて4つの流れがあります。
自然を題材にした版画→イタリアの建築物を題材にした版画→幾何学をもとに構成したデザイン→だまし絵、といった感じですかね。(かなりざっくり言ってますが)
私が特に惹かれたのは自然を題材にした初期の一連の版画群です。
中でも「3つの世界」という、樹と水と魚のいる世界を俯瞰して3D的な技法で表現した作品に衝撃をうけました。



落葉する木々と、落ち葉が浮かぶ池の水面、池の中の鯉の密やかな動き。
”3つの世界”がコラボした画面は、静かで奥深い秋の風景を見事に切り取っています。
あまりにも気に入ったので、絵葉書を購入して手帳に挟んで毎日眺めています。


展示室では撮影スペースも設けられてて、エッシャーの絵(模造タピストリー)をバックに写真が撮れるようになってますw
SNSの時代、こういうのって有効なサーヴィスですね!



これは「もう一つの世界」という作品。
地平、天底、天頂の世界の中心に「もう一つの世界」が存在している、という、広がりのある世界観が魅力です。
眺めていると世知辛いことなんかすぐ忘れちゃいそう。


お嬢が気に入ったのがこれ↓



「空と水」という作品です。
魚がどんどん鳥に…という変化が面白い。
二つの世界と、その真ん中の「ありえない世界」の存在の奇妙さ。
お嬢はこの絵のついたTシャツをミュージアムショップで購入。意気揚々と学校に着てって「これめっちゃ可愛いでしょ!」と言って回ったのに、周りからは「そうかぁ?」みたいな反応しか返ってこなかった、とガッカリしてました。
でもさ、えてして絵画作品ってTシャツとかになるといきなり良さが半減しますよね(^^;
ポストカードくらいのほうが、絵の良さを思い出せる気がする。(←意見には個人差があります)


茨城県近代美術館のロビーにはさまざまな彫刻作品がありました。
入り口にはロダンの「三つの影」が。



美術館の離れには中村彝(つね)のアトリエ(復元)があります。



コンパクトな生活スペースと陽光をふんだんに取り入れた明るいアトリエ。
こじんまりとまとまった過ごしやすそうな空間です。居るだけで落ち着くようなステキなお家でした。


【今日の言葉】


「無私の精神、あるいは楽観主義から自分の絵や木版画がたった一人の人間にでも幸福な時間をもたらしてほしいとは、願わなかった。ただ私は、自分の楽しみのためだけに絵を描いていたのだ」


マウリッツ・エッシャー


ガツン、ときた言葉です。
その極めて個人的な情熱、愉しみ、欲望こそが、観る者の熱狂を引き起こすという典型を思いました。
この姿勢がたぶん、創作する人間に最も必要なものなんですよ。他者の顔色を窺って(これはウケるだろうとか、売れるだろうとか)創作していたら、このような自由さを作品に感じることはできないのだろうな。