潜在意識の彼方に広がる青空は

記憶の彼方に残り続けている旋律がある。時々、水底で何かがきらりと光るようにそれを思い出す。
ふと、懐かしいそのメロディのことを考えることがある。でもまたなんとなく忘れていく。
そんなことを繰り返しているうちに、本当に忘れてしまうものもあるし、少しだけ覚えているものもあるし、「すごく好きだった」という気持ちだけを強烈に覚えていて(それは匂いだけを覚えているのに近い)何かのきっかけで曲を聴けばいろんなことを一気に思い出せるのに…といったものもある。


こないだ(高田)渡さんの曲を聴いていて、ふと思い出した。
昔、まだ子どもだった頃に大好きだった曲のことを。
その曲は、渡さんの曲を、もうちょっとムダに元気にしたような、ホーボー風の明るいスッコ抜けたジャグだったんですよ。ちょっと似てる。だからたぶん、このタイミングで思い出したのだろうな。
旋律はもはやところどころ(ってか、5%くらい)しか思い出せないのだけれど、聴いたらわかる、という確信はある。聴いたらきっとものすごく懐かしく、胸が震えることだろう、と。
なぜならそれを聴いていた日々の楽しい記憶は胸の中にしっかりと残っているから。
あれは初恋の日々でした。
小学校の明るい中庭を思い出す。山間の分校のような学校を、古い木造の校舎の匂いを、大好きだった男の子の顔を、楽しくてうきうきしていた気分を、思い出す。
でもその曲の題名は思い出せない。
思い出せないのではなくて最初から知らないんだった。わかっているのは次のことだけ。


1:その曲を聴いたのは小学校の3年生くらいだった。
2:NHKテレビの少年ドラマの中で流れていた。
3:そのドラマは山間の小学校に面白い先生がやってくる話だった。


調べましたよ!
ネットの時代はなんと便利なのでしょう。すぐわかりました。
ドラマの名前は「6年2組の春は…」(ああ!そうです思い出した!)。
曲は、佐藤博さんというシンガーソングライターが歌う「青空」という曲でした。
佐藤博さんの名前は、存じていませんでした。
どんな曲を歌う方なのかも知りません。ただ、ネットの中の情報では渡さんとはかなり頻繁にライブをともにしていた人のようなので、同じような、明るくてユルいフォーキーブルースを歌う人なのかもしれない、というイメージです。


というわけで、CD買いました!
ネットの時代はなんと便利(で誘惑的)なのでしょう。すぐ買えました。
昔だったら方々のショップを回っても見つからず、取り寄せをお願いして何週間も待ち…という手順が必要だったことも、いまではボタンを押すだけで2日後にはCDが手元に届くのです。
便利だけど怖すぎるなぁと、ちょっと思った(^^;;)。

青空

青空

  • アーティスト:佐藤博
  • 発売日: 2004/08/25
  • メディア: CD


問題の「青空」(アルバムタイトルにもなっています。これは佐藤博さんのデビューアルバム)を聴いてみました。
ああ!!!!これです。このメロディ!!!
時空を越えてあの時の風景が蘇ってくる。
懐かしい〜〜〜。

…ん?
でも…ちょっと違う?
確かにこのメロディなんだけど、この歌詞なんだけど、この曲ってこんなに「コジャレて」いたっけ??
なんかね、すごくニューウェーブっぽいんですよ。アレンジが。
記憶の中にある「ジャグバンド風のフォーク」ではないの。めっちゃシャレてる。むしろ都会的。
なんか違う。確かにこれなんだけど、これじゃないような気もしてしまう。
てか、そもそもこの曲にこのアレンジってのが唐突なんですよ。
実はこのアレンジを担当しているのは、まだYMOで有名になる前の坂本龍一教授なのです。
当時、これを聴いた人が違和感感じて佐藤さんに「アレでよかったの?」と聞いたといういわく付きの曲だったようです。
私も違和感感じました。フツーにジャグバンド風で聴きたかったなぁと思った。
てか、そう聴いた記憶があるのはなぜだろう?(もしかしてドラマの挿入曲ではこの曲の別バージョンが歌詞ナシでとかで流れていたのかも?違うかなぁ。アタシの脳内変換か?)
教授のアレンジは新しいというのがすごくよくわかるのですが、トンガリすぎてる気がするんですよね。
教授の才能はきっとこういうところで発揮するものじゃないんだろうなぁ。土台から新しく始めるべきものであって。ここではなんか、端境期の「収まらなさ」を感じます。
でも、このアレンジを「いいんじゃない?」って面白そうに見守っていたという佐藤博さんは大きい人です。すごい。
ちなみにこの演奏には吉田健とか斉藤ノブも参加してます。錚々たるメンバー。


なんか面白いなぁ〜と思うのは、渡さんのアルバムにはデビューしたての細野さんが参加してて、(フォークルの)加藤さんのサディスティック・ミカ・バンドにはユキヒロが参加してて、ずっと昔に大好きだったこの曲には教授が参加してて。
まだYMOになる前に、彼らはみんな私が好きだと思う音の周りに関わっていたんですよね。不思議。
YMOに関してはあまり馴染めず敷居が高いのを感じ続けておりましたが(それでも教授は大好きでした。あのキャラが^^;;)。
坂崎師匠が好き語りしている音楽は私も好きなのに、やってる音楽(アルフィー)にはさほど興味ないってのとちょっと似てるかもしれません。違うか。