ドミトリー少年のあまりに愛らしい管弦楽


ここ何日か気に入って聴いているアルバムはロジェストヴェンスキーの「ショスタコーヴィチ未出版作品集」です。
玩具箱のように多彩なものが盛りだくさん!といった内容のもの。
特に気に入っているのはDisk1の前半、オーケストラのためのスケルツォ2曲と、主題と変奏の部分です。
ラフマニノフみたいな旋律があったり、チャイコフスキーみたいな響きがあったり、なんだかすごくロマンティックだったり、映画音楽みたいだったり、全体主義風だったり、パチンコ屋みたいだったり、いろんなことをやっているんですが、でも、ところどころでショスさんの色が立ち現れて見えるんですよ。あっちこっちで時折ぼうっと息をする蛍の光みたいに、淡く輝くショスタコカラー。たまりません。
これら3曲はショスさんが音楽院時代に書いたものです。
私の一番気に入っているスケルツォ嬰ヘ短調はなんと13歳の時の作品!すごいわ。
後半入っている声楽曲はどうもダメなんですけどね。タイクツで。いつも抜かして聴いちゃう。


Disk2は初っ端「坊主とその下男バルダ」からショスタコ節炸裂です。この、冗談の連続のような、人を食った旋律のなんとステキなことか!
スカルラッティ(なんとバロック!)のチェンバロソナタを管楽器用に編曲した2曲も素晴らしいです。
その後、ベトベン、J・シュトラウスリムスキー・コルサコフ、などの編曲モノ(オーケストレーション)が続きますが、どれもステキな出来具合です。ホントに器用な人です。なんて豊かな才能なんだろう。
まだ国家から目の敵にされていない頃のショスさんの、音楽家としての伸びやかな作品を聴いていると、若い時代のものとはいえショスさんの本質が真っ直ぐに現れていて感慨深いですね。
解説で森田稔さんが書いているのですが、
「本来ショスタコーヴィチの音楽は何よりも職人性を特徴としていると言ってよいと思う。」
という言葉に、大いに頷きたくなる思いがします。
だからこそ、彼は生き残れたんだろうなぁ。
誰にも持ち得ない至高の職人芸が、結局、その後の彼をずっと守ったのでしょうね。