怖い音楽!

恐怖音楽


これ聴きました。「恐怖音楽」。
クラシックの中の怖い音楽を集めたオムニバスアルバムですよ。ひーー。
ジャケも怖い!楳図さん!


怖さというものにはスイッチのようなものがあると思うのですが、一旦それがオンになってしまうと、今までなんでもなかったものまで怖くなってしまいます。ホントは「幽霊の正体見たり枯れ尾花」だとわかってはいても。
このアルバムは、最初聴いた時はイチミリも怖くなかったんですけど、2度目に聴いた時、なぜかゾクゾクーっとキてしまい、怖くて怖くてひーひー叫びながら聴きました。怖がりスイッチが点いちゃったんですね。おかげで一人でトイレに行けませんでしたよ。
怖がらせるためのアルバムなので、スイッチ入った状態で聴くとどれもこれも怖い!
「魔王」ショパンの「葬送行進曲」などは、普段ふつうに聴いているのに、ここに入ってるとめちゃ怖く感じられます。
中国の不思議な役人」やリゲティの「アトモスフェール」*1は、怖いというよりも、奇妙な感覚に陥る感じですかね。
ラストの「オーメン」(クラシックじゃないけど)は駄目押しみたいなモンです。マジ怖い。


しかしですね、私がホントに怖いと思っている曲はこんなもんじゃないよ。
私が今まで聴いたクラシックで一番怖かったのはチャイコフスキーの「悲愴」だったんですが、こないだそれを簡単に覆すほどの超・怖い曲に出会ってしまいました。その曲とは…


ショスタコーヴィチ弦楽四重奏第15番 変ホ短調 作品144


です。ひーーー。
亡くなる1年前に作られた最後の弦楽四重奏曲で、ショスタコーヴィチ自身へのレクイエムのようだ、とも言われている作品です。
全楽章アダージョで、とにかく不気味。旋律がとか、展開がとかでなく、なにしろ音自体がすでに怖いんです。生理的にクるんですよ。脊髄にイヤな熱を感じるような恐ろしさ。(特に第2楽章)
悪魔の声がする。これは昼間でも一人で聴く勇気がないです。実は1度聴いてあまりにショックでその後再び聴いておりません(爆)。だから第1印象だけで語っております。
正直なところ、この曲を聴いた日はかなり挫折感にうちひしがれましたよ。
「ショスさんは私には向いてない。もう聴き続けられないかも」と。「こんな疲れる人、もうヤダ」と。「手に余る…負担だ(涙)」と。
でも反面、「このヒトはどうしてこんな怖い曲を書いたのだろう?」と考えてしまう。こんな曲を書くその人を、知りたいと思う。


私がショスさんの曲を聴くのは、きっと「曲が好み」という理由ではないんだと思います。*2
作品以上に作品の向こう側、及び作品の意図、及び作者個人、及び作品の歴史的意義、等々が、気になり、知りたいと思うんですよね。なぜだか。それゆえに作品に触れたいと思い、たとえその作品が「わからない」「シュミじゃない」ものであっても、諦めずに向かい合いたいと思うのです。
造形的な好みよりも、そこに付随する物語に惹かれる。
もちろん、物語は作品があってこそ機能するんですよ。作品にそれだけの「喚起力」があるということですね。(作品になにか意味づけをして聴く、ということではないです。)


いつ聴いてもベートーベンはイイです。完璧に美しい。揺るぎが無い。
でも、ショスさんはそうではない。そうではないから、好き。
という「好きになり方」もあるんですヨ。

*1:2001年宇宙の旅」で巨石モノリスのテーマになってる曲です。曲というか、音、かな。

*2:好みの曲ももちろんあるけど、そうでない曲が多すぎる。でも、「そうでない曲」がある時、フッと魅力的に聴こえたりすることもあるので、早合点してはイクナイ。