ショスタコーヴィチのジャズ

ショスタコーヴィチ:ジャズ音楽集

ショスタコーヴィチ:ジャズ音楽集


収録曲順に感想など。


■ジャズ組曲第1番
マイナーとメジャーが入れ替わり立ち代り現れてはクルクルと表情を変える「ワルツ」、サーカスの興行のような不思議な楽しさがある「ポルカ」。そして「フォックストロット」という構成。
第3楽章の「フォックストロット」は、出だしの雰囲気がちょっと「ザ・ムーチ」に似てます。
途中から南米風エキゾチックなイメージも入り込み、この時代(大戦間時代)の雰囲気をよく醸し出してます。共産ロシアにいながらにして欧米のムーブメントをこんなに的確に捉えているのは実は凄いことなのではないでしょかね。


■ピアノ協奏曲第1番ハ短調
ピアノのソリストはロナルド・ブラウティガムって人です。知らない人だ。(ちなみにトランペットはペーター・マスーズ)
この曲はクラシックのアルバムの中に入ってるより、こういった、ちょっとミクスチャー(とは言わないか。もうちょっとボーダーレスな感じ)な雰囲気に馴染むように思います。
ホントに奇妙な曲。でもものすごくよくできてる。いつ聴いてもスゴイな〜〜、と思う。


■ジャズ組曲第2番(プロムナード・オーケストラのための)
ジャズというより運動会(?)みたいだ。ぶっちゃけ退屈。
工藤氏の解説本によりますと、これは正確にはジャズ組曲第2番(これは他に存在してる)ではなくて、「ステージオーケストラのための組曲」というものだそうです。映画音楽などのピースを集めたものだとか。
しかも、このシャーイー&ロイヤル・コンセルトヘボウ管盤では、曲順がゴチャゴチャになって収録されているらしい。実際、この曲の詳細はわからないことが多いようです。


タヒチ・トロット(二人でお茶を)
「Tea for To(二人でお茶を)」ったら、私の大好きなドリス・デイの歌っているものを真っ先に思い出します。あれは確か映画音楽でしたね。同名の映画もあった。
それをショス様がサロンでの雑談時にちょっとした賭けに応じて45分で管弦楽用に編曲してしまった(もちろん賭けには勝ちました)!というのが本作品。
とても可愛らしい作りになってます。そしてちょっとコミカル。
クラリネットやホルンなどの管がジャズっぽさを醸し出してます。


不思議なことに、ショス様はクラシックをやってるときはとても新しくてアバンギャルドなのに、ジャズは見事に同時代的というか、古い。ちゃんとその時代のものになってるように思います。
というか、なにより心温まったのは、ショス様がこういった当時のいわゆる「軽音楽」を、クラシックと区別することなく好きで、ちゃんと見据えていた、というのが楽曲を通して感じられたことです。深い人です。