プロコフィエフの奇妙な磁力

正月頃にNHK音楽祭の関連番組で放送されたマリス・ヤンソンスバイエルン放送交響楽団 での五嶋みどりによるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲1番は、ものすごく奇妙で、新鮮でした。
加えて、4月第1週目のN響アワー「2005年ベストコンサート」にて放送されたパーヴォ・ヤルヴィN響でのヒラリー・ハーンによる同曲も(放送されたのは抜粋なんですが)とても素晴らしい。いずれもHDDに録ったものを繰り返し聴いています。


しかしながら、この両者は同じ曲とは思えぬほど印象が違います。
五嶋みどり版は、狂気を孕んだキレそうな世界を醸し出してます。ジーニアスが爆発してるような演奏に圧倒される。
でも、最初に聴いた時は「わー。これ、イヤだ!キモチワル〜いぃ」という感じでした。我慢して聴いているうちに妙に気になるようになったのですが。(なんで我慢してまで聴いてたかというと、旦那がこの演奏にメチャ惚れしてしつこく繰り返し聴いてたのでイヤでも耳に入ってきたというワケ)
対してヒラリー・ハーン版は、優雅の一言に尽きます。
優雅といっても大上段に構えたものではなく、清楚で、若々しい硬さもある伸びやかな育ちのよさみたいなものを感じる音で、大変心地がよいの。しかも目にも心地イイ。(←私はヒラリーのビジュアルがと〜っても好き!なので見てて飽きないのデス(笑))。
プロコのV協1番は、もともとが奇妙で前衛的な雰囲気を持った曲ですが、奏者によってもかなりイメージが変わる曲でもありそうだと感じていました。


ってことで、今度はこれのヴェンゲーロフ版を聴いてみました。ロストロポーヴィチ@ロンドン響のものです。

ヴェンゲーロフの演奏は(今まで2枚しか聴いてないんだけども)優等生的であまり面白くない印象があったので、大して期待してなかったのです。
ところが、これが予想外に良かった!
五嶋みどりヒラリー・ハーンもすごく魅力的なんですが、ヴェンゲーロフのは3者の中で一番好きです。
音が、とにかく自在なの。すごい多彩な表情。しかも曲調に合ったアバンギャルドなイメージをガンガンこっちに伝えてくれる。
この曲が作られたのはロシア革命の年、1917年なんですが、その「時代の匂い」をよく感じさせてくれます。えーと、あくまでも私のイメージの中の「匂い」ってことですが。
彼の中に流れるロシアの血がそうさせているのか、ヴェンゲーロフのセンスがいいのかわかりませんが、カッコイイのだ!とにかく。
キーさんの神童仲間はヴェンゲーロフといいレーピンといい、みんなやはり素晴らしいですね!