主観だからこそ面白い

感想を共有したかったりで他の人の書いた映画レビューをよく読んだりするのですが、あらすじや出演者や監督の情報や技術的なことなどをいろいろ書いたうえで、ちょこっと自分の感想を入れる…みたいな、いわゆるデータベース型の文章が多い気がします。
自分がどう思ったかよりも、その映画に対しての「解説」が多いようなレビューが。
そういうのってあんまり読む気にならない。
私は映画ヲタじゃないのでデータとか興味がないし、あらすじも、知りたきゃwikiとかで調べます。
一般人の映画感想で知りたいのはあくまでもレビューする人の主観です。
「何を感じたか」「どこに萌えたか」「どこがどう好きで、どこがどう嫌いか」。
宣伝やインフォメーションに書いていないことが知りたい。「あなたの」感じたことが聞きたい。ダメ出しでも絶賛でも。
誰が作って誰が出演してあらすじはこれこれこうで…なんて知識のご披露はいらないから、心の声を聞かせて欲しいのです。
むしろ心の声「だけ」を。

映画そのものの感想に限らず、それを観た時に心に去来したものを記しておくというのも逆に面白いなと思います。

極端な話映画とは全然関係なかったりしてもいい。
映画に触発されて別の形で新たなものが出てくるというね。
そこまで突き抜けたものを書いたことはまだないけれど、憧れます。

この手法で本のレビューを書いたものを集めたのがマッタンの「第2図書係補佐」です。

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

  • 作者:又吉 直樹
  • 発売日: 2011/11/23
  • メディア: 文庫
 

 最初に読んだ時、まだマッタンの書いたものを読んだことがなくて、「芸人ピース又吉」という認識しかなかったのですが、「このヒト、ホントに本読んでんの?」「読書芸人とかニッチなとこ狙ってるけど、たいして本読んでないだろ」と思ったんですよ。普通の読書レビューじゃなかったもんで…
浅はかでしたねぇ(汗)。今では恥ずかしい思い出。
あとになって振り返ってみれば、マッタンは突き抜けていた。
レビューなのに読んだ本の内容(あらすじや来歴や作家のことなど)にほとんど言及してないこともしばしばで、絶対的な主観でもって新たな文芸に変えて、読後の感慨を表現していたのですから。
今ではあれこそが真の文芸レビュー(個人の記す最大限の読書記録)かも!と思っているし、自分もいつか真似したい匠の技です。
名著ですよ。巣ごもりのお供にぜひ。