『六人の嘘つきな大学生』

 

ミステリー好きだけど、警察モノ、弁護士モノ、若者モノはほぼ読まない(興味が無いから)という、偏った読者なのです。なので、普段だったらこういった若者モノはスルーしちゃうところなんだけど、かなり面白いとの評判で、書店で見かけるたびに気になっていました。どれどれ……と一応手に取って数行目を通してみたら、あれれ、面白い。これはもしかしてアリかも?と思い、後学のためにも読んでみることにしました。グイグイ引き込まれてしまい、結局あっという間に読了。面白かった!
題材は特に目新しいネタではないけれど、構想も展開も端正でミステリーとしての企みも成功してる。伏線の見事な回収っぷり、きれいにまとめ上げる能力に感動。ホントに優等生な作品でした。
秀逸なのは文章の巧さです。作者の浅倉さん、とにかく文章が上手いんですよ。読者を躓かせることなくスイスイ読ませる。簡潔すぎてあっさりと感じるくらいなんだけれど、ちゃんと伝えるべきことは洩らさず確実に読者に届けられている。こういった文章を書くのはかなりレベルが高い。
ミステリーとしてはライトですが、面白かったのは就活を通して、世間の眼差しやそれぞれの人間にはいろんな面があって、短絡的にその本質決めつけることは危険だよ、というのをすごく明快に描いてること。実に道徳的なのだけれど、説教臭さはなくて、あくまでも爽やかでわかりやすい。若い子が読んで然るべきものだ、と感じます。うーん、やっぱりアラカンが読むようなものじゃないかも。面白かったけど。