「夕凪の街桜の国」こうの史代

 

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

 

 作者: こうの史代双葉社

10歳になる娘に対して、
「どうしたらこの国のあの時代のことを伝えられるだろう?」
と以前から考えています。
60年前の、この国のことをね。

私が伝えられることは全て他者から伝え聞いたことでリアリティもないし、話し始めれば説教臭くなりがちだし、感情が先に立ってしまって私自身が泣いてしまったりして、あまり効果的に伝えられるような気がしません。
でも、どうにかして伝えたいのです。せめて私たちの世代が教わったことくらいはつなげてゆきたい。


子供にその歴史を伝える役目は私では全然及ばない、と尻込みしてしまうのですが、逃げてばかりもいられないので、少しずつ戦争を題材にした本を薦めていくということを実践したりしています。
他力本願かもしれませんが、本に書いてある事から、もしかして何かを感じてくれるかもしれない、感じてくれたらいいなぁ…という希望を持って。それが「漫画」という形だったらより受け入れやすいかもと思い、ちょっと難しいんじゃないかとは思いつつこの本を娘に与えました。
各所で絶賛されていますからご存知の方も多いと思いますが、この作品は今から50年前(原爆投下から10年後)の「ヒロシマ」から始まる物語を描いた連作です。
以前一度ブログで言及しようと思ったのですが、自分の言葉が全て空疎に見え、書くのをやめました。
一言では言えない、とても深い作品なのです。

案の定、娘はこの本を読んでも充分に意味がわかりませんでした。
大人が読んでも、かなり難しい構成になっていますので無理もないです。でも、そのわからない部分を私が解説をすることにより、いろんなことを知ることができたようです。
これをきっかけに、原爆のこと、東京大空襲のこと、特攻隊のこと、靖国にお参りするとなぜアジアの人たちが怒るのかということなども話すことができたのも良かったと思います。
まだ少しですけど、貴重な一歩だったと思います。

とてもよい作品ですので機会があったらぜひ読んでみて下さい。
1コマ1コマをじっくり辿ってゆくと、主人公が自分のように思えてきます。
作者のこうのさんは、それだけ感情を丁寧に描いているのです。ものすごく「共感」を呼ぶ人物描写のチカラがある作家さんです。
登場人物を体感できた時、涙なしにこの物語を読み終えることができる人はいないと思います。
歴史はつながっている、と感じられる作品です。

追記:靖国のことを昨日初めて娘に話して聞かせたわけですが、丁度今日の朝イチのニュースで首相の靖国参拝ニュースが出ました。偶然だけど、タイムリーな話題だったなぁーと。こういう話をする時もどうしても自分の思想がかなり偏って入ってしまうのは仕方がないね。(ちなみに私は分祀尊重派)