「無伴奏」

f:id:freaky47:20200321004208j:plain

小池真理子原作「無伴奏」の映画化作品。
ずっと気になっていたのですが、やっと見ました。
見た後、心に浮かんだことが3つ。
1つ。似てるけど違うか。似てもいないか。
2つ。池松壮亮いいなぁ。
3つ。中野ミホって?

 

1つ目の似てる似てないってのは、実は私がかつて書いた小説がこの話(小池真理子さんの原作)に似ているのではないか?と、「あらすじ」を目にした時から気になっていたのです。時代背景と登場人物の関係とかが、ちょっと被るような気がしてて。
いずれ何かの公募に出そうと思っていたので、小池先生の作品と似てたらヤだなぁ、と。
だったら早く原作を読めばいいのに、なんとなく避けてました。避けてるのに気になってるっていうね。矛盾。
そんな状態で原作より先に映画を見たんですけど、映画を見る限りでは、時代背景は同じだけど物語としては全然違うので安心しました。
安心したのでちゃんと小説の方も読んでみたくなりました(読むの怖かったんだな)。
もともと映画の作品を見た後に原作小説を読むのはすごく好きなのですが、小説のレビューで、池松壮亮が演じていた役がすごくステキに描かれている(映画の中でもかなりステキだったのに!)というのを目にしたのでさらに読むのが楽しみになりました。


2つめ、池松壮亮
今まで、なんとなく過剰な演技をする人のような気がしていて、あまり好きじゃなかった俳優さんなんだけども、それはかなり役柄によって変わるらしいと感じて、不意に興味が沸きました(以前、菅田将暉に対して同じ経緯を辿っている)。
この役はとても良かった。
キャラクターの表現はもとより、あの時代の空気を纏えているのが凄い。
佇まいや話し方、成海璃子ちゃんにも斎藤工にも感じられなかった「匂い」みたいなもの。
たまらなく存在感がありました。色っぽくて切なくて悲しくて…うわぁ、いいなぁって。
もうちょっと出演作品を見てみたい。


3つめ。中野ミホというのは、最後に出てくるテーマ曲を歌ってたアーティストの名前です。
その曲が胸にグッとキたので、気になってYouTubeに直行。
この曲です↓(映画がMVになってる)
とりあえずこのVだけでも見てみて。見て見て!胸にグッとくる。

www.youtube.com


なんだか、初期の宮本の曲に肌触りが似てる感じがするの。
若者だ。圧倒的に。
青くて青くて泣きそうになる。もう戻れないセツナイまでの青さに苦しくなる。
このソングライターは平成生まれの子だというのになんでこんなに昭和の匂いがするの。
まるで生きてきたかのよう。
Dropというバンドと、ソロ活動をやっているみたい。いろんな曲をチェックしてみよう。


作品全体としては…可もなく不可もなくという感じでした。
この作品を観ようと決めた時点で、作品の背景の時代や風俗や雰囲気が好きでチョイスしているのでそういう部分は最初から好意的に見ています。思い入れがある分、時代考証的な矛盾点は気になったりするけど、まぁ置いといて(私だって同時代人じゃないので文献で知るだけだし)。
セリフの言い方が誰も彼も演劇的でわざとらしいのも、あの時代の空気になじんでいるような気がしたし、音楽や照明の使い方もセンシティブで良かった。
でも何か、どこかがすごく足りない感じがした。
この作品って、たぶん、あの時代に興味が無ければ見向きもされないくらい退屈なのかもしれない。
そう、一言で言うと退屈だった。
それさえも私には「あの時代らしさ」のようで微笑ましく感じたけれども。

 

「きみは人生が好きか?」

というセリフが印象的だった。
私にはこの問いに対する答えが絶対的に一つしかないことに気づき、ちょっと衝撃だった。
もしかしてこれが私の原点というか個性というか、「私そのもの」なのかも、と不意に感じた。何かを始めるなら、起点としてここから始めるのがいいのだろうな、と。
私は人生が好きだ。
いろんなことがあっても、いろんなことがない人生ならばもっと、でもたぶん…うん、今のところ人生を嫌いになったことは一度もない。悲しいほど好きで、泣いてばかりいるけれど。
これは悲観楽観運不運ではなく、感じ方の違いだ。単なる指向性だと思う。
ひとつのセリフで自分のことがちょっとわかったような気持ちになった。

 

www.youtube.com

mubanso.com