「Only You(オンリー・ユー)~ぼくらのROMEO&JULIET~」その2(本題)

昨日の続き。お芝居の本編の感想です。
それなりにネタバレしてますから、これからご覧になる方はご注意ください。

 

開演までのしばしの時間、プロコフィエフの「ロミオとジュリエット」がずっとかかっていました。グローブ座のバルコニー席に座ってこの曲を聴いていると、気持ちがどんどんロマンティックになってゆきます。
ロミオとジュリエット」は昔から大好きな話です。なんといっても若い二人の恋が、とろけそうに官能的。しかも悲劇で終わることでハッとするほど純粋で綺麗なものになる。もうホント「うっとり」という言葉が一番あてはまる。そのロミオを増田さんが演じるというのだからこれはもう見なくても(妄想するだけで)悶絶モノです。見ちゃったら私はいったいどうなっちゃうの?ってくらい、ワクワクが止まりません。

暗転し、開演。
まず初めに出てくるのは大学の演劇サークルのめんめんです。
最初の登場シーンで増田さんを目にした瞬間、ヘンな声が出そうになり焦りました。
うーーー感動!

こんな近くで増田さんが演技してるなんて…夢か?これ、夢か?みたいな。ああ、本当にこれ見られて良かった…と、無上のシアワセを噛みしめて泣きそうになりました。

 

15人のミュージカル研究会のメンバーが揃って踊った後、三々五々帰ってゆく。
部長の「神山先輩」(中谷優心さん)に、居残りを命じられた「門田(もんた)」(増田さん)と、同級生の「リエ」(二宮芽生さん)、「塩見」(長澤秀平さん)が、サークルの存続の危機を知らされます。
部長の提案で、シェイクスピアマニアの教授のおススメによる「ロミオとジュリエット」で、ミュージカル研究会の起死回生の公演をすることになり、話し合いが始まる……というシーンから、この物語も始まります。

ミュージカル研究会の学生は総勢15人いるのですが、その他の方たちはモブに徹していて、名前のあるキャラとして前に出て来ません。なので、中心人物のこの4人だけ把握していれば大丈夫になっています。
設定はとても分かりやすく、キャラの印象もスッと自然に入ってくる。
門田は自信がなくて自分から前に出ていこうとはしない「いぶし銀の脇役タイプ」と自認する草食系男子、という設定。増田さんの演技もまるっとそういう感じだし、会話の中に「門田はそういうヤツだよねー」みたいな、さりげないキャラの説明があるのでわかりやすいです。
友人の塩見は明るくてノリが軽い帰国子女。紅一点のリエは活発でしっかりした子。
この4人はそれぞれ「ロミオとジュリエット」の中では、門田→ロミオ、リエ→ジュリエット、塩見→マキューシオ(ロミオの親友)、部長→司祭、という役柄転換をしていますが、役柄の持つイメージが近いところに転換しているのでこれもわかりやすいです。

ロミオとジュリエット」がどんな話で、これからどんなシーンをやるのかを、サークル内の会話として説明する→暗転→「ロミオとジュリエット」を演じているシーン(withジャニーズ楽曲)→暗転→次のシーンはどんな場面なのかを、サークル内の会話として説明する→暗転→「ロミオとジュリエット」を演じている場面(withジャニーズ楽曲)→暗転……と、「サークル活動で、次に来る芝居の場面の内容を説明する」シーンと、「ロミオとジュリエット」のシーンが交互になりながら話が進んでいくという形式です。
14世紀のイタリアから、現代日本の大学サークルの部室へ。
この場面転換は驚くほど短い間です。
つい今まで中世の衣裳を着て激しく歌い踊っていたロミオが、次の瞬間、Tシャツにサルエルみたいなファッションの門田くんになって出てくるから驚きます。
というか、ぶっちゃけこの「お着替え」だけでご飯3杯いけるほど、増田さんが色っぽいの。
だってさ、頼りなくて煮え切らない門田が、中世の衣裳を身に着けた途端に、やんちゃで情熱的なロミオに「変身」するんですよ。キレッキレでダンスをして、身体能力の高さまで見せつけてくるんですよ。あのぼんやりしてる門田くんが、ですよ!
門田に恋するリエの視点でそれを見たらたまんないでしょ。しかもジュリエット役の自分に愛の言葉をささやくんですから。それもう悶死でしょ?とろけちゃうでしょ?めっちゃエロいでしょ?

こんなヒトが↓

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こうなったり↓

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こうなったり↓

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こうなったり↓ するの!(PON!のキャプチャにて解説)

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 どうよ?!

これ見て冷静でいられるヤツなんているんか?

 

閑話休題
増田さんは肩で息をすることもなく、自然な感じでこの難しい場面転換をこなしてます。(ハンカチで額の汗を拭いたり、水を飲むシーンは多かったけど、そりゃ無理もないよね)驚くべき瞬時の早着替え&役転換。
ここで時間がかかると舞台がダレますが、スイスイと進むので実に心地良いし、「次は?次は何?」というワクワク感がいい具合に盛り上がります。こういうタイミングまで計算されてるなぁと感じました。

場面転換を何度も経て、物語が進んでゆくごとに、門田くんの様子が自信を得て堂々とした雰囲気に少しずつ変わってゆきます。
ジュリエット役のリエに対する門田くんの想いも表出してくる。
まるでグルグル回りながら上昇してゆく螺旋階段のように、現代と14世紀を行き来しながら、門田とリエの気持ちは徐々に変化してゆき、互いに「ロミオとジュリエット」にシンクロしてゆくのです。

とにかくまず思ったのは、脚本の秀逸さでした。
増田さんはじめキャストの皆さんの歌や踊りが素晴らしいのは言うまでもないけれど、このお芝居を成功させているのはこの脚本あればこそです。
ロミオとジュリエットをジャニーズの曲を使ったミュージカルで」というコンセプトは面白いけれど、それだけでは本当に学芸会になってしまう。(なってしまうだろうな、と舞台を見てて感じました)
でも、ここにワンクッション「潰れそうな演劇サークルが起死回生の一撃としてそれを演じる」という設定をおくと、それだけで一転して見事な青春ドラマになるんですよね。
「ジャニーズの楽曲でロミジュリ演じるって面白いじゃん!」ってことになる。この「面白いじゃん」は、演劇サークルの…というエクスキューズを入れなければ成立しないのです。
そして、「ロミオとジュリエット」を演じる二人の大学生もまたリアルに惹かれ合う者同士(でもお互い片想いだと思っている)、という設定、加えて演じるのが増田さんであることで、見る側のファンも(多くはファンが観客であるだろうことはデフォルトとして)、そこに彼のイメージを重ねて想像の幅を広げる楽しみを得る…という、実に3重構造になっているんですよ。

この3重構造のうちの何が主体なのかというと、やはり門田くんです。
門田くんがどんな人なのか。何を思い、ロミオを演じるのか。
ストーリーの中で、「ロミオとジュリエット」の話が進むのと並行して気持ちが変化してゆく門田くんこそが、この作品のコアなのです。
おとなしくて草食系だった門田くんが、情熱的なロミオに感化されて次第に恋する男の顔になってゆく(しかもそれがまっすー。どんどん色っぽく男っぽく目覚めてくまっすー!)ってのが最大の見どころ。

 

構成・演出・脚本の佐渡岳利さんが、とにかく凄いの!
この役はどうかんがえても増田さんにドンピシャで、あて書きしてるんじゃないの?なんて思ってたら、ビンゴ!でした。パンフに載ってた対談で佐渡さん自ら「この脚本は増田さんへの当て書きだから」と言ってました。
ね!そうでしょーー!わかる!わかりますよぅぅ!
佐渡さん、がっつり増田さんのことを見てるもん。魅力を正確に把握してるし、演技力の使い方さえ把握して書かれてるんじゃないかとさえ思いましたよ。


増田さんの演技力に不安があるとすればそれは舌足らずなしゃべり方だと個人的に思っているんだけど、世の中舌足らずな人だって存在するわけだし、こういうところを瑕疵ではなく個性として演技上活かすことができたら、逆にすごい持ち味になるんだけどな…って、ずっと思っていたのです。
この芝居では、門田が、焦ると言葉がもつれて言ってることがごちゃごちゃってなっちゃうっていう激萌えシーンが何度かあるんだけど、それ見た時にビックリしました。「そう!これだよ!」って。
増田さんの舌足らずを、たまらない魅力に変えて見せてくれたのです。
佐渡さんは、こともなさげにさらっといいものを出してくれるの。細かなところまで、

増田さんの魅力をどうしたら一番輝かせられるか?

を考えつくして書かれた脚本は、ファンの目から見ても完璧でした。何よりも愛を感じた。それがすごく、胸に響きます。

増田さんの歌と踊りはもうね、言葉もありませんよ。素晴らしすぎて、これを何か言葉で形容しようとしてもムリです。

やーーもーーまっすーーーかっこいいーー!!

としか言えない!ボキャ貧への道まっしぐらです。
増田さんが今まで培ってきた歌や踊りのスキルが、最高の形で生かされているのを感じました。

ジュリエットを演じた二宮さんは演技力が高くて嫌味がなく、透明感のある女優さんで、相手役としてホントに申し分のない方でした。
ジャニタレの相手役なんて…しかもロミオとジュリエットだなんて(!)、女優さんにとっては受けるのも悩ましい難儀なものだったと思いますが(いろんなファンがいるからね、きっと嫌な思いもするだろうし)、よくぞ受けてくださった!感謝です。
ものすごく華奢な方で、増田さんと顔を寄せ合うと増田さんの顔がビックリするほどデカく見えるのがご愛嬌でしたw
長澤さん、中谷さんもものすごく歌がうまくて、存在感のある演技で芝居を磐石なものにしてくれてました。増田さんを支えてくれるキャストの方々は皆さんお若いのに誰もがしっかりとプロフェッショナルだった。周りのレベルが高いから、増田さんも全力で出せる限りのものをぶつけてる感じがしました。これってきっと、やってる本人が一番気持ち良かったんじゃないかと思います。

こんなにも素敵で幸せそうな増田さんを見せてくださった佐渡さんはじめ、キャスト、スタッフのみなさんには、感謝しかありません。
増田さんも冥利に尽きますね。こんなに増田さんのことを大切に考えてくれる才能ある方と一緒にお仕事できて。それにきちんと応えた増田さんの仕事ぶりも見事なものでした。
これからも増田さんにはこういった仕事場で輝いていて欲しい…と、こんな時だからこそ余計に感じてしまいました。
状況が状況だから、どうしたって、自然と増田さんの今後に思いを馳せてしまうよ。もしかして、光一君とかタッキーみたいにお芝居の方向で独自のものを定番化できたら…どうだろう?とかさ。
バラエティに出ている姿も悪くないし、ドラマにも出て欲しいし、なにより歌を聴きたいけれど…今のままで増田さんの魅力を本当に発揮できるのって、もしかしてこういう場所(舞台)なのかも…とちょっと思ったり。
事務所に入って20周年の記念イヤーにこのお芝居があったことは、何かものすごく象徴的ですね。
全身全霊の歌と踊りと、演じていても説得力のある「一途に恋する男」が似合うその存在は、「幾久しく貴い」というその名の通りに、実に貴いなぁ…と。ただただそう感じました。