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私の好きな画家と作品(後編)


昨日のエントリ「好きな絵画を5点、好きな画家を5人」の続きです。
今日は好きな絵画作品を5点挙げてみます。
これはかなり難しいですが(^^;、「今の気分で」セレクトしてみました。


1: 「道路と土手と塀」   岸田劉生



人生の幸せとはどこにあるかというと、「その先」を夢みる想像力をいつでも抱くことができるという、心の自在だと思っています。
どんなにツラいことがあっても、困難なことにぶつかっても、いつの日かきっと出会える素晴らしい眺望を想像するチカラがあれば、ヒトは生命力に溢れて歩いていける気がする。
この絵を見るたびに、私の心は元気になる。
険しい坂の上に広がる青い空を見て御覧なさいよ。
坂を上りきった先に何が見えるのかわからない。
この「わからない」というのがいいのです。それがなんであれ、ここではとりあえず関係ない。
大切なのは、あの青空なのです。
あの空を目指してひたすら上ってゆく「今」、私は確実に夢見ていられる。
そしてその過程こそが人生そのものなのだと思えるのです。
明日を夢みて坂を上ってゆくこと。それは至福なのだとこの絵は教えてくれます。


2: 「光の帝国(1954版)」   ルネ・マグリット



あたりは暗いのに空は青空。という不思議な感覚を描くのが得意なマグリット
「大家族」などもそのコントラストが上手く使われています。
「光の帝国」は何種類もあるのですけど、この1954年版が一番好きです。画面に背の高い木があるのが全体の構図を引き締めてスッキリと見せている気がします。
この「青空」と「闇」は、「闇の向こうには青空がある」という文脈で私の心性に合うのです。
いうたら「神はいつもそこにあり」的なものかもしれません。安心するのです。
不思議と私はこの絵を見て、「青空の下に闇がある」とは思わないんですよねw
それはもう、全然ピンとこない。性格かな。


3: 「夜の窓」   エドワード・ホッパー



最初、同じホッパーの「ナイトホークス」を挙げようと思ったんですが、今日の気分だとどうもこっちだった。
この絵はヒッチコックの(というより、私的には原作のウィリアム・アイリッシュの)「裏窓」の物語世界を彷彿とさせる。あの箱庭のような舞台装置。都会の片隅の、ささやかな生活。孤独と享楽。リアリズムとロマンティシズム。
これもまた「明るさ」と「暗さ」のコントラストが印象的な作品ですね。闇の中に光がある。光あるところに人間がいる。けれどもこの絵では主役は闇だ。
落ち着いた、夜の闇。それは人工的な光があるからこそロマンティックにひきたつのです。優しくひそやかな、秘め事のような都会の闇。
この絵でもう一つ思い出すものがある。
ニューヨークの恋人」という映画で、毎夜深夜0時になる前に、「ムーンリバー」を聴くヒト、ってのが出てくるんです。出てくる、といっても姿が見えるわけではない。その時間になると、ある窓から「ムーンリバー」の曲が聞こえてくるの。メグ・ライアン演じる主人公は、毎日それを聴きながら見知らぬその人を同志のように思うのです。「ああ、今日も一日元気だったんだな」と。この都会で日々を過ごす者のささやかな日常を愛おしく感じる、いい場面です。
そんな都会の夜の孤独と優しさが、この絵にもあるような気がします。


4: 「エトワール・デュ・ノール(北極星号)」 カッサンドル



「お!「深夜特急」」って思ったヒトも多いのではないでしょうか。表紙になってる作品ですね。
これはもう、感覚的に見た瞬間に「好き!!!!!!」という感じで、あまり理屈が入る余地がないですねw
私は基本的に「だだっ広い場所に一直線の道が通っている」という風景が世の中で一番好きなので、こうして真っ直ぐに伸びた道(というか、ここでは線路ですね。軌跡、というか)を見るだけで、問答無用にトキメクのです。反射的に。
しかも行き先にはどでかい北極星が輝いているのです!そして広がる青い空。
なんという夢のある構図でしょう。
これ以上に夢のある構図を描けと言われても、たぶん無理です。これがマックスです。
広告ポスターなので文字が多いですが、極力デザインの邪魔にならないように配置された洒落たまとめ方もイイですね。しっかり宣伝もしてますよ!最優秀なポスターです。


5: 北斎花鳥画「藤と鶺鴒」   葛飾北斎



部屋に飾りたい絵、というコンセプトで選んでみました。そういう文脈で選ぶとき、北斎はその筆頭です。
特に花鳥画がいい。
北斎花鳥画は徹底したリアリズム描写でありながら、バランスの良さ、無二のセンスが光って、そこらのボタニカルアートにはない情緒に溢れてます。百科図鑑のようではない、生き生きとした花鳥画なのです。
代表して「藤と鶺鴒(せきれい)」を挙げてみました。
この構図!
さすがです。
さりげなく見えてこれめちゃくちゃ凄いですよ。
富嶽三十六景」や「諸国滝廻り」の斬新な構図は飾っておくには刺激が強すぎるけれど、花鳥画は絶妙なバランスで生活の場を飾ってくれそうなのがいいですね。
それと、上手く言い表せないのですが、私が浮世絵(という言い方ではくくれないのですが、江戸後期〜明治期の日本の版画)が好きなのは、どこか閉じた文人的な空気をそこに感じるからなのです。浮世絵は庶民のものだったんだけど、私の中ではちょっとインテリなものなんですよねw
そういう憧れもあるということです。


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「好きな画家」というのは、技術的な部分に惚れ込んでいるほかに、その人個人の思想や生き方まで好きだったりするので、長いこと変わらないものなのですが、「好きな絵」というのはその時々の気分でホントによく変わります。コロッコロ変わる。
いきなり「受胎告知」(ダ・ヴィンチのね)なんかが好きになる日もあるし、マレーヴィチのただ正方形が描かれているだけの作品に言葉もないくらい感動する日もある。
逆に、好きな絵が、いつでも好きなわけではない。ある日突然「これ、疲れるな。パスだわ」と真逆の思いを抱くことさえある。
自分でも自分の好みというのは読めないのです。
なので、今日挙げたこれらはあくまで「今日の気分」で選んだものです。どれもとても好きな作品ですが、不変ではありません。
(No.18)