パウル・クレー展


パウル・クレー だれにもないしょ。」展を見に、宇都宮美術館に行ってきました。



詳細
http://u-moa.jp/exhibition/exhibition.html


もともと抽象画(主にロシアアバンギャルドバウハウス系)が好きなので、楽しみにしていた展覧会。
クレーの作品はこの美術館にも数点所蔵作品があって、常設でかかっているとどこか嬉しくなるような、そんな存在です。
今回の展覧会ではクレーの作品を、時系列ではなくテーマ別に分けて「謎解き」するように展示するという趣向であり、独特な作風への理解を深めてたように思います。


作品を目にしたとき、「これは、なんだ?」と、そこに”何が描いてあるのか”に思いを巡らす姿勢というのは、クレーのような作品を鑑賞するのには、とても邪魔な感覚だということを感じました。
見る側の人間が、既成の概念に基づいて判断出来うる「何か」なんてものはそこにはないのです。
むしろ”なにがなんだかわからない”と思惑を放棄し、何ものをも意味づけしない姿勢が大事なのかと思う。
色と線と面の組み合わせが、ある「感覚」を生んでいく……それを純粋に感じ取るというような。
クレーは音楽一家に生まれ、自分自身もバイオリン弾きであり、妻はピアニスト…というだけあって、その作品には音楽的アプローチが多いようです。
”構築して完成させて一つの世界が閉じる”というような(起承転結のある、ある種の文学的な)方向ではなく、音楽家が即興をどんどん出してゆくように、感覚的・即興的な作り方で習作を積み重ねていく…といった感じをうけました。かなり多作な人なのですが、だからこそかなぁ、と。
さまざまな技法や画材を駆使したり表現方法を変えたりとアプローチのやり方も多彩で、面白い。


展覧会に行った後は、心の澱がごそっと削ぎ落とされたような、すがすがしい気分になりました。
生活の中に埋没して過ごしてきたここ最近の日々で摩耗してしまった、形而上のモノにときめく感覚…みたいなものが久々に蘇ってきた!
何か、急転回で世界が変わった感じです。単純ですが(^^;
芸術はイイね!!!!
自分の中のすごく創造的なものが再び動き出す。
そうだった。私はこうしちゃいられないのだ!という、ワクワクするような創作意欲がちょっと頭をもたげはじめた。嬉しいことです。



今日も暑いです。
美術館前に広がる日盛りの丘はうっとりするほど美しかった。
芸術も美しく、自然もまた美しく。