「聴風者」(サイレント・ウォー)


サイレント・ウォー [DVD]

サイレント・ウォー [DVD]


香港版のブルーレイを買っておきながら、なかなか見ることなく時は過ぎ…気が付いたら日本語字幕付きDVDがレンタルになっていたので、そっちを見ました(汗)。
なんだこの無駄遣い。
偉仔の出演作品はとりあえず全部見ることにしてるんで、日本語版出そうに無いものは香港版買っちゃうんだよね。早まった。
でも、中文字幕で映画を見る、っていう労力と、暗そうな内容と、何よりもあの「まなざしで妊娠させる」とまで言われる「眼力王」トニーレオンが盲目の役(画像で見る限りサングラスや包帯で目を隠してる)ってどうよ?最大の武器が生かせてないじゃんか!…ってのがあって、イマイチ食指が動かなくて放置状態だったのです。
レンタルしてきたDVDさえ見るまで腰が重くって、返却前日に見る始末。
でもね、開けてビックリ(*_*)!!
予想外に面白かった!!
もっと早く見ればよかったわ〜。


舞台は1949年、第二次国共内戦時の中国。
国民党と共産党の暗号合戦が繰り広げられている中で、共産党工作員(周迅)に「人並み外れた聴力」を見いだされてスカウトされた盲目の男(偉仔)が、暗号傍受に活躍し、挫折し、立ち上がってゆく…という……大雑把なストーリーはそんな感じなんですが、その中で醸し出される登場人物たちの細かい感情の揺れがね、すごく丁寧に、繊細に、グッとくる感度で描かれているんです。
それと、「類まれなる聴力をもつ男が体感している世界」を映像化しているのがスゴイ。
これって「類まれなる嗅覚をもつ男」を描いた「香水(パヒューム)」って映画の手法にもちょっと似ている気がします。あれも強烈に「匂った」。映像でここまで匂いを感じさせられるんだな〜って感心したけど、この作品もひけをとらない。
とにかく、映画における作画的な意味で、完成度が高い。美しい映画です。
監督・脚本はアラン・マック&フェリックス・チョンの「無間道」コンビ。
そりゃ巧いでしょうなぁ〜と思ったら、やっぱりめちゃくちゃ巧かった!スゲー。


役者もスゴイ。
周迅がねーもう、最高!!!
大きい字で書いちゃうよ。


周迅最高!!!!


偉仔との共演は「大魔術師」以来2度目だけども、生まれ変わったようにオーラが違ってます。
コメディよりも、シリアスドラマの方が上手いね。
特にこの役はハマリ役かも。
小柄なのに凄みがあって(なにぶんあんなにドスのきいた声を出す女優はいないw)、スパイという役割ならではの感情をあらわにしない中で、周迅の繊細にモノを語るまなざしはとんでもなく雄弁で、ドラマティックで、物語を豊かにするのです。
彼女こそ、まなざしのヒトだったのね。
偉仔が目隠し状態でちょっと消化不良だった分、周迅がたっぷり眼力を発揮してくれました。


偉仔は、盤石の演技ですね。盲人の動作なんかも工夫して演じてるのがよくわかる。
基本、チャラい男だったのが次第に(人にも仕事にも)真剣になってゆく様子がイイ。
能力を誰かに認められ称賛されることや、一生懸命取り組んだ仕事に対する達成感や、誰かを愛し愛されることやなんかが人間を変えてゆくんだよ……っていう「まっとう」なことがシンプルに描かれているような気がしました。


メイヴィス・ファンとかン・ガーレイなんて懐かしい女優さんも出てました。
メイヴィスの若さに驚愕!
え?!彼女って20年前から芸能界にいるよね??でもまだ女子学生の役でもイケそうなくらい若いよ(調べたら37歳だそうです。まだ40越してなかったのね)。
つか、周迅が40歳ってのが驚きですわ。ちょっと前まで少女性が彼女の魅力だったのにね。時の流れは速いわ…
偉仔も老けましたが、男の人ってそれでも味わい深くなるからいいですね。イイ感じに枯れてきた偉仔もこれから楽しみなんじゃないですかね。
私はすんごい若い時の偉仔が大好きで、今の偉仔も悪くないと思ってるんだけど、途中(「ブエノス」以後、「色・戒」以前)の偉仔があんまり好きじゃないの。
あ、例外的に「花様年華」だけは好きですが(^^; 
時期でいうと1997年から2007年の10年間ね。
たぶん世間的には一番人気がある期間の偉仔なんだけど、なんだかスター然としすぎててつまらないんですよ。一言でいうと、萌えない(個人的感覚です)。
ホントは主役張るにも遠慮がちなところが魅力だった人が、何でもかんでも主役張らせられてる感があって痛々しかったし。
「無間道(インファナル・アフェア)」なんかも名作なんだけど、偉仔個人には萌えない。
だってとってつけたようなんだもん。カッコ良すぎっていうか。
でも「色戒(ラストコーション)」で、妙に化けてて「おおっっ?!」ってなった。
あれ、カッコ悪いしw開き直ってめっちゃオッサンになってて、そこが滅茶苦茶ステキだったんですよ。
新境地、ってやつですね。さすがアン・リー!ってところか。
それ以降はオッサンの魅力で頑張ってて、新たな色っぽさも醸し出せててイイ感じだと思います。
話、逸れちゃった(^^;


予告編載せておきます。