「那些年,我們一起追的女孩」


台湾映画「あの頃、君を追いかけた」を見ました。
どうでもいいけど、この邦題がどうにも凡庸で気に入らない。
「愛と青春の云々」とか「狼たちの云々」みたいなありがち感。
そりゃ原題「那些年,我們一起追的女孩」の直訳なんだけども、原題の持つイイ感じは微塵も受け継がれていない。英題の「You Are the Apple of My Eye(君は僕のかけがえのない人)」の方がニュアンス違うけどずっといいと思う。


閑話休題
台湾は好きでも、台湾の青春映画はどうも肌に合わない…と常々思っていて、この映画も大ヒットしたのは知っていたのですが、どうにも食指が動きませんでした。
台湾の新竹や彰化あたりの風景が見たい、という動機で今回やっと手に取ったというわけ。
そういえば「花蓮の夏」を見るきっかけもこれ(花蓮の風景が見たい)だったことを思えば、こんなモチベも悪くなかったりする。


始まるなりスラング満載で、「おーこれが噂の九把刀クオリティか!」という感じ。
原作・監督の九把刀は、台湾の若者言葉(スラング)がふんだんに使われた小説を書くので有名なのです。辞書に載ってないナマの言葉を知ることができる。
阿嶽もかなりスラングの多い人なので、なにを意味しているのかわからない言葉を時々使うのだけど、そういうの知りたかったら九把刀の小説読んでみるといいよ、と以前台湾のネット友に教わったことがあります。
ところがこの映画、スラングだけでは収まらないゲスネタが満載で……(汗)
ものの5分で気色悪さにリタイアしそうに。アレはないなー。ないわw


スラング満載のエロバカ青春コメディ&ラストでは胸キュン映画……と言ったら、私の大好きな「アメリカン・パイ」シリーズを真っ先に思い出すわけですが、この映画のテイストは「アメパイ」のそれとはかなり違います。
何が違うのか?
例えば同じように男子のアホな自慰行為を描きながら「アメパイ」では愛おしく可愛いのに「那些年〜」ではうんざりしちゃうのは、その男子の自意識の在り方への共感とか、そういうものなんですよね。
同じ性を描きながらも、「アメパイ」は本人が「恥ずかしいことしてる」という自覚が過剰にあるゆえにマヌケで笑えるんだけど、「那些年〜」は男子が偽悪的で、なおかつ周囲を威嚇している。
それも「照れくささ」ゆえの思春期の特性なのでしょうが、個人的にはそういう自意識過剰は笑えないし鬱陶しい。
若い男の子の偽悪的な幼稚さ、ってのが私はどうも好きじゃないんですね。
そもそも女としてどう対応していいかわかんないし。
でもこの映画って、テーマがそれそのもの(=男の幼稚さ)だったりもするので、過剰に走るのもまぁ、無理はないのかな。


まぁ、あのちょこちょこ挿入される過激なヘンタイ描写がなければ、この映画の芯の部分は純粋に胸キュンラブストーリーです。
ありがちな、でも、すごく可愛らしく描かれて心に残る佳作です。
なんつっても主役の優等生、ミシェル・チェンの可愛さよ!!
この映画の大半は彼女の可愛さでもってかれてる。
「みんなのマドンナ」的存在なんですが、こんな説得力のあるキャスティングはないね。
っていうか彼女の年齢に度肝を抜くぜw 
なんと、相手(コートン)役のクー・チェンドンとは8歳も違うのだ!!!(彼女が8歳年上ってことよ)
8歳!!!!
それはワタシと阿嶽の年齢差ですよ(爆) 
でも大丈夫!違和感ないし!……って思わせてくれる、勇気の出る映画w



要所要所でドンピシャないいセリフが多いのもポイント高いです。
言葉の遣い方はとにかく上手い。
さすが売れっ子ネット作家って感じ。


「無駄な努力も人生のうち」
「本気出さなくても平気な人は嫌い」
「幼稚さは人生の役に立たないわよ」
「恋はつかめない内が一番美しい」
「結局、夢が叶うのは才能がある者ではない。諦めなかった者だ。」


等々……
こう書いただけではピンとこないけど、出てくる場面で胸キュン度が違う。
若い子はきっとこのアフォリズムだけでもっていかれちゃうね。


台湾のステキなロケ地も堪能しました。
(7月24日の記事で書いた)雑誌の写真で阿嶽が佇んでいた場所(平渓)は、二人のデートの場所。
緑が深くて街並みが古くて、ノスタルジーを感じるいい所です。
本当は想いが通じているのに、それを伝えられないというもどかしいシーン。
願いを込めてとばした天灯の文字がせつない!
回想シーン(のようなパラレルワールド?)でこの場面が出た時に涙がぶわっと……
921大地震(台湾大震災)の時のエピソードもありました。
これは「花蓮の夏」でもありましたね。
同じように、危機的状況の時に真っ先に連絡を取りたい人になかなか連絡が取れない…というね。
その時に、やっと通じた電話の向こうで、彼女が見上げる月の夜空が素晴らしくセツナイ。
ロマンチックなシーンはたくさんあるのに、いかんせんヘンタイ描写とのギャップが大きくて(汗)
この矛盾(?)とか、怖さ(←この男子、ホントはまともじゃないのではないか?的な)は、観客の中でどう処理すればいいんでしょうかね?
…って、けっきょくまたそこに話が戻るわけだw


いい映画っちゃーいい映画なんですが、ダメっちゃーダメだし、どう判断していいのかわかりません。
スゴイいいシーンもあるし嫌なところもある……っていうのは、「パッチギ」観た時の感じと似てるかなぁ。
いや、それとも違うな。
案外台湾の人って下ネタ(ウ○コとかゲロとか含め)多いから、こういうのも気にならないのだろうか?
でもべつに私も下ネタダメな人じゃないしな…「アメパイ」大好きだし。そういうことじゃないんだよねぇ。
いやーわからん。いろんなところでカルチャーショックw
とりあえず、この映画が「爆発的大ヒット」だったというのは「海角7号」以上にナゾ。
でも、ホント、悪くはない。それもまた「海角7号」よりさらに。


予告編(日本版)