あの頃私はどこにいたのだろう


今日はお嬢と買い物をするために東京へ。
お嬢は1限だけ授業があったので、時間差で出かけて早稲田で待ち合わせ。
ふと、かつて住んでいた下宿がある場所に行ってみようと思い立ち、約束の時間より早めに出かけました。


新宿区原町2丁目20番地。
私が東京に出てきて初めて住んだ下宿があった場所です。
地下鉄早稲田駅を降りて夏目坂を上って行った先です。
女の子だけの(しかも浪人生だけの)賄付きの下宿屋さんでした。
窮屈な生活と劣悪な環境にすぐに嫌気がさして私はそこを2か月で出てきてしまいましたが(その後に住んだところが以前こちらで書いた早稲田大学脇の雀荘の2階にあった下宿です)。
たった2か月しかいなかったけれど、そこでの記憶は強烈で今でもいろんなことを覚えています。
記憶が鮮明だから、きっとその場所に行けば多少風景が変わっていても自分ではわかるつもりでいましたが……実際は何一つ、まったくもって何一つ、記憶を取り戻すような風景を見つけられませんでした。
それどころか、歩いても歩いても、目的の住所に辿り着けませんでした。
まるでその場所がぽっかりとなくなったしまったかのように。
地図では確かに住所表示があるのですが、たどり着けないのです。
新しくできたマンションなどで道がつぶれたりして区画が変わっているというのもあるのですが、それにしても風景がまるで違う。
よすがになるものが何もない。
自分の記憶は妄想かもしれない?と不安になるほどに、そこは見知らぬ町でした。


この辺りはいわゆる寺町で、そこらじゅうにお寺が、そしてお墓があります。
あの頃、夕暮れ時に一人で歩いていて、ふと小道に迷い込み、気づくと周り中が墓だらけだった…ということが一度ならずありました。
細い道が入り組んでいて、ちょっと間違えると墓地で行き止まり…という場所が多かった。
下宿はそんな中でもひときわ古くて異質な感じで佇んでました。
道のどん詰まりの空いた敷地にポツン…と遺された小さな平屋の建物。
雨上がりの夕暮れにはどこからともなく何匹ものヒキガエルが下宿の周りにやってきました。
街灯に照らされてヌラヌラと光った巨体が、飛び石の上にあっちにもこっちにも陣取っていて、入り口に辿り着くまでに泣きそうになった。
カエルを避けようとして足に飛びつかれたこともあったし、暗くてよく見えなくて踏んでしまったこともあった(涙)
私は田舎育ちだけれど、あんなにたくさんのヒキガエルを見たのはこの新宿の下宿が初めてでした。


何かが極端に過剰で、ちょっと「異界」のような場所。
私の初めての「東京」は、そんな水木しげる風味の世界から始まったのでした。
当時の私自身がすごく異質な存在だったからか(?)、そんな世界もなぜかすごく「自分らしい」と思えて楽しかったのを覚えています。


周辺で記憶の隅に残る風景をたった一つだけ見つけました。



よく行った銭湯のあった場所です。
銭湯はもう廃業して跡形もなくなっていましたが、併設のコインランドリーが残っていました。(道向こうの青いひさしの建物)


さて。
今日はお嬢が洋裁の材料(布地ね)を買いたいというので、こちらに買い物に行きました。
私も初めて訪れる場所です。



「街いんせりぽっに」
…じゃないですよw
にっぽりせんい街(日暮里繊維街)」です。
布地に特化した問屋街です。
小売りもしているので、洋裁好きの人のメッカになってる模様。
私も手芸マニアだけど編み物専門で洋裁は門外漢なので、ここには来たことがありませんでした。
様子がわからないのでとりあえずマップ(繊維街散策マップというのが配られています)を頼りにめぼしい店を回りました。
とにかく店も多いし品物も溢れかえっているので目が回っちゃうんですが、全体を見て回ると、だんだん好みの店かそうでないかはわかってきます。
初回の印象でいうと、「パキラ」「ミハマクロス」「トマト」あたりの店が気に入ったかな。
時間がなくて回れなかった店もあったので、今度またじっくり行ってみたいと思います。
お嬢はかなりこだわりのあるオシャレさんで、市販服が気に入らないと自分で作ったりするんですよ。
いきなり繊維街に行きたいと言いだしたのも、昨日出かけた先で同じ服を着ている子がいてガッカリしたからなんだそうです(SM2のAラインワンピ。可愛くてお気に入りですが、可愛いものは他の子だって買うよねーw)
「誰かと同じ」が嫌なタイプなので苦労するね。
私みたいにユニクロや無印ばっか着てるのもどうかと思うけど(これでも昔はこだわり派だったんですけどねー)。
あ!でも最近気に入っているのはスタジオ・クリップです。小物もカワイイんだ。
……ってめっちゃフツーのこと言ってるな(汗)



今回買った布地たち。
これらがちゃんとお洋服になったら、また日暮里まで買い物に行くかも。