特典DVDを見て感じたこと


阿嶽の新譜に付いてきた特典DVD「張震嶽的[豊色]陽天 mini movie」を見ました。
どうせチューブでも見られるツアー販促用の既出Vだろうと(タイトルが同じだったから)たかをくくって何の期待もしてなかったんですが、フタを開けてみたらさにあらず。
わざわざ特典につけるため(?)に撮られたミニムービーだったので驚きました。
なんと嬉しいサプライズ!
今までにないサーヴィスぶりですよ、ロックレコードさん♪
阿嶽は一応演技っぽいこともしてて…ちょっとした音楽映画の体で作られてます。
映像的にはMVに使われているシーンがちょこちょこ出てくる。最初からこのDVDを作るつもりで、ついでにMVも撮影されたのかな?
以前、余文楽ショーン・ユー)に楽曲提供した「不是明星」って曲が、阿嶽本人の歌ってるバージョンで挿入されてるのもめっちゃ嬉しかったです(阿嶽バージョンは初めて聴いた。たぶん初収録?ショーンの何倍もかっけー!)


このミニ・ムービーは、ファンだったら必見ですね。
見なきゃダメなレベルかもしんない。
阿嶽がどうしてもファンに見せたい、理解してほしいと思っているものがここにはある気がする。
と同時に、自分の理想を守るために捨てていかねばならないものたちへの弁明であり、言い訳であり、宣言でもあるような…。
きっと、彼は「これ」を作らないと、先に進めなかったんだろうな。
「これ」ってのは要するに、阿嶽の気持ちを”わかりやすく”周囲に伝えることができるもの、です。
鈍感な人にも理解力のない人にも常識で凝り固まった人にもわかりやすく、「ああ、そういうことなのか。それだったらしょうがないね」と納得してもらうための。
それがこのミニムービーなんだと感じました。
言葉にならない感情さえ、海や空や朝日や夕暮れが語ってくれているかのよう。


阿嶽は一時期まるで”フランクフルトで夢遊病になったハイジ”みたいでした。
次から次へと仕事が押し寄せていた頃。ツアー続きの移動ばかりの生活。どんどん仕事を入れてくる事務所。傍若無人に押し寄せるファン。プライベートまで追いかけてくるカメラ。期日にせかされながら曲を作り詞を書かなければならず、練習時間もとれないのにステージで演奏をしなければならず…。
笑顔がなくなり、言葉がなくなり、サングラスを外さなくなり、「もう消えてしまいたい」とまで呟くに至った阿嶽が、ギリギリのところで考えるに至ったのは、すごく本質的なことだったんだと思います。
「自分は何がしたいのか」。
やがて阿嶽は何かからフッ切れたかの勢いで、自分がしたいであろうことの一つ一つを確認するように没頭していった感があります。
都会を離れること、体を動かすこと、自然の中に行くこと、自分のアイデンティティを探すこと、好きな音楽を好きなスタイルで歌うこと…
そしてとりあえず行き着いたところの答えが、この新譜には詰まってるような気がします。


ブックレットのクレジットでは、張震嶽の名義の英訳がすべて「Ayal Komod」(海雅谷慕。阿嶽の原住民名)になっています。
今までは「A-yue」だったところが、全部。
そんなところ一つをとっても、彼の心境の変化がわかります。
新譜では今までと名前も違うし、音楽の質も違う、方法も違う、バンドのメンバーも違う、いろんなところでガラッと違った阿嶽が見られます。
それで新しい境地に行ったのかというと……まだいろんなことに悩んでいる最中なんだってことがわかるんですが、それをも阿嶽は「必要な、大切な事」と前向きにとらえられるようになってる。
それというのも、これらすべてを(強制されたり流されたりするのではなく)彼自身がポジティブに考えて選び取ってきたからなんだろうな、と思います。
すごくイイ「途上」の姿を見せてもらえてる感じなんですよ。
人生ってのは常に「途上」にあるものですからね…かっちりとした答えがでるものでもないわけだけど、そこはとりあえず自分の気持ちを大切に、転がりながら、確かめながら、生きてゆくしかないんだろうな、というところに彼自身行き着いたような雰囲気がある。ようやく肩の力も抜けて。表情も明るくなって。
「あ、たぶんもう大丈夫だ」と。
この映像を見て、そう感じました。
ちょっとだけ不健康だった阿嶽の精神状態が、健やかに伸びやかに、あるべき場所に戻りつつあることが、とても嬉しいです。
5年後、10年後の阿嶽がどこにいるのかわからないけれど(このまま田舎の海に帰って終わりのわけない、と私は勝手に予想してますがw)、いずれにせよ、きっと阿嶽は自分の選んだ道を笑顔で歩いているような気がします。
今までにないくらい、そういった希望を感じさせてくれる新譜です。



歌詞カードは全部阿嶽の手書き。
阿嶽の書く文字が大好きなので、これはいつもめちゃくちゃ嬉しい。
ホントに「久しぶりに来た手紙」という感じがする。


あ、そうだ。ショーン・ユーの「不是明星」を貼っておきます。
2年前に書かれたものだけど、これってまんま阿嶽自身のための歌だよね…
てか、よっぽどサイン会が嫌いなんだなw、っていうね。
でも、こういうのを阿嶽自身が歌っちゃうと「おめーなんか明星じゃねぇし」的なつっこみがあるかもしんないし…ってことかどうかわからないけど、どうみても「明星」って感じの(そのくせあんまり明星であることを嫌がってもいなそうな)ショーンに提供したと。
阿嶽が歌うとマジになっちゃうものも、これでまろやかになった感があるね。