香港幻影


TVドラマ「金田一少年の事件簿・香港九龍財宝殺人事件」を見ました。
録画しといたやつをボクちゃんと二人で見たんですが、残虐な殺され方する場面とか、ちょっと子ども向けではないかなぁーって部分もありましたね。
かといって、大人向けでもないしなぁ。
事件も単純で、いわれるまでもなく犯人がわかりましたしね。
それでも最後まで飽きることなく見ることができたのは、舞台となっている香港の街の魅力がうまく描かれていたからです。
なんというか…「すごく香港っぽい」ドラマに仕上がってました。


尖閣問題で中国が反日デモを起こしていた頃にこのドラマの撮影があって、エリック・ツァンが出演をキャンセルしたとか、「日本のドラマに出演できるわけないだろう」って言ったとかゴタゴタがあったのも記憶に新しいですが、フタ開けたらなんのことはない、エリックはフツーに出演してました。
いつものエリックらしい存在感をちゃんと発揮していましたよ。
九龍城の王、と言われた男の役なので、そりゃもうね。エリックしかないだろう、っていう。
エリックの他も、混沌とした香港によく映えるアジア各国からのいいキャスティング
台湾からは、飛輪海(フェイルンハイ)のウー・ズン(呉尊)とビビアン・スーが、韓国からはBIGBANGのV.Iって子が出演していました。中国で活躍してる矢野浩二も出演してました。
国を越えた俳優のキャスティングもそうだけど、社会情勢が悪い中であくまでも香港ロケをすることにこだわったことも、功を奏していたと思います。
「場」の持つパワーに、ドラマ全体がすごく助けられていました。
80年代香港電影によく見られる(ちょっと古い、一昔前の時代の)”ザ・香港”って風景があちこちにあって。
これきっと、かなりの香港好きが作ったよね。
怖くて不思議で謎めいてゾクゾクするようなあの街の魅力が満載で、とても楽しかったです。


私はこの地球上のどこよりも香港が恋しかった時期がありました。
憧れて憧れて、でもその場に行くのが叶うことなく想いだけがつのり、時が経ってやっと訪れることができた時には、私の熱が冷めてしまっていて、妙にあっけないポカーンとした気分だったことを今でも鮮明に覚えています。
すでに英国からの返還も終わり、啓徳空港九龍城砦も無くなっていた頃のことです。
「私の夢見た香港は、もはやこの地球上に存在していない」
…というのが、私がたった一度だけ訪れた香港に対する「リアル」な感想でした。
それでも、かつて心の中で夢遊病のように思い描いた香港は、今も私の中に確固として存在しています。
手に入らなかった想い人の記憶がそうであるように、ずっと美しく魅力的な、ありえない姿のままで。
このドラマを見たら、久しぶりにそんなことを思い出しました。


ドラマを見た後、懐かしい本を思わず取り出してきて読みふけってしまいました。
こちら↓の本。



「香港通信」の吉田一郎さんによる返還以前の香港レポートです。
私が憧れた時代の香港の風景が描かれています。
吉田さん自身が留学生当時に九龍城砦に実際に住んでいたというスゴイ経験を持っているんですよ。そんな日本人の話って、めったに聞けるもんじゃありません。
重慶マンションの見取り図なんかも載ってる。
これは今でもチムサーチョイに残る「魔窟」だけど、実際に入る勇気はないので(汗)、こうして知るのみです。
香港にハマってた頃に集めた本はほとんど処分してしまって、もうほとんど手元にありませんが(断捨離アン…orz)、この本は不思議と何度も捨てられる危機にあいながら、生き残っていました。
処分前の「チョイ読み」で、また懐かしくなって捨てられなくなってしまう…ってのを繰り返してきたんですよね。おかげで今では貴重な資料となりました。