マックス・エルンスト 「フィギュア×スケープ」展


宇都宮美術館で開催中のエルンスト展に行ってきました。



エルンストはシュルレアリスムの画家として有名ですが、私はほとんど知識がなく、「奇妙なコラージュ風の作品(鳥頭の人間とか)を描くヒト」っていう認識しかなかったので、あまり興味が湧かず…でも、明日でこの展覧会も終わるので、旦那が「せっかくだから観にいこう」というので、それほど期待もせずに行ったのでした。



ところがどっこい。
ものすごく楽しかった!
エルンスト、めっちゃ面白いじゃんっっ。
エルンストに対する認識、ガラッと変わりましたよ。
知らない、というのはホントにつまらないことです。
知ることができてよかったです、本当に。


エルンストは鳥頭の人間を描いてるだけではなかった。
深いイメージと探究心と工夫と冒険と創造に満ちた作品の数々にグイグイ引っ張られてゆくような思いがしました。
画家として、ホントに描きたいものを描いている、ってのをひしひしと感じるんですよ。しかも会得した技法を余さず使って。情熱的であり、勉強家でもある。



私が特に惹かれたのはこの絵。
「最後の森」。
エルンストは森にとてもこだわりを持っていて、同じモチーフで何作も描いています。
この作品は精神性からしても、技法からしてもその集大成とも言える渾身の作品です。
混沌とした木々と天空にかかる「リング」…が、エルンストの森のモチーフ。
恐怖と魅惑を内包して、見る者をとても静かで不思議な感覚にさせます。
絵の具の置き方が特徴的なので、ふと興味が湧いて、作品の近くに寄って、下から作品を見上げるようにして観てみました。
美術館の明かりが垂直に当たるくらいまで、身を屈めて観た(他に見ている人がいない隙を狙ってw)
そこには魅惑的な別の景色が現れました。
波打った絵の具の陰が、海の波間のように見えるのです。
森が、海に沈んでいくような感覚に陥りました。
意図してのことかどうかはわかりませんが、確かに言えるのは、この作品はどの方向から観てもとても美しい!ということです。
デジタルの画像では伝わらないのが残念。
絵画だけは、ネットでは何も伝わりませんねホントに。


今回の展覧会はエルンストの作品を「フィギュア(像)=たとえば鳥」と「スケープ(景)=たとえば森」という観点から展示・解説されているのですが、その手法がまた功を奏していたと思います。
展示の導きにより、ただ闇雲に観ていただけでは得られない理解を得ることができました。すごくわかりやすかった。
展示の方法というのは、絵画鑑賞にとってかなり影響力があるんだなぁというのを強く感じましたよ。
いい展覧会でした。