「フィンランドのくらしとデザイン〜ムーミンが住む森の生活」展


宇都宮美術館で開催中のフィンランド展に行ってきました。



森と湖に囲まれたムーミンの故郷、フィンランド
自然と寄り添った素朴な生活の中で生まれた意匠が、いろんな方向からアプローチされてます。バラエティに富んだ展覧会でした。


絵画は雪の森や湖を描いたものが多かった。
長い冬とつきあって暮らすフィンランドの人たちの、それはもっとも馴染みがある風景なのかもしれません。
雪のない景色を描いた作品には穏やかな陽光があり、その表情を丁寧に写し取っています。
これら絵画作品全般はなかなか見どころがあって、飽きませんでした。


静かな印象の絵画作品とは逆に、テキスタイルの華やかさ、工芸品のモダンなデザインは溌剌としています。
元気でポップな色あいはアメリカでもロシアでもない、北欧モダン独特のものですね。
ガラスカップの色ひとつとっても、他では出せないフィンランドらしさというのがある。
こういうの、好きな人にとってはたまらないと思います。


もちろんムーミンの原画も展示されていました。
あの物語やキャラクターが生まれたのはフィンランドならではなのだなぁ〜というのがしみじと感じられる展示です。
ウチの旦那と実母がムーミンが大好きで(この二人は他人なのに親子か!と思うくらい趣味嗜好が激似)、その世界観がいかに素晴らしいかは折にふれ聞かされてはいるんですけど…私個人は実のところムーミンに思い入れはありません(汗)。
私は正真正銘の(地方都市という意味ではなくて本当に野山ばかりで牛に追いかけられるような)ド田舎育ちなので、自然に囲まれた生活というのにあまり興味がないのかも(?)。里山で育ちながら、都会に憧れていた子どもだったので。
でも、湖や森に差し込む光の表情や、時間ごとに移り変わる川の水面の色合いなどは、リアルな空気感と共に潜在記憶として残っていて…そういった「光」が描かれている作品に出逢うと、知らずにグッと胸にくるものがあるのを強く感じました。
遠い日に聴いた虫の羽音まで蘇ってくるような、懐かしくてセツナイ感覚。
そういうのを体感しながら、「ああ、やっぱり私は自然の中で育ったんだなぁ」ということを思い出した。
画家というものは光(それが闇であっても)を描こうと試み続ける種族だと思うのですが、凡人もまた光と共に記憶が刻まれてるのではないか?と、感じた午後でした。