TV雑感 その1


もう先週末の話になりますが、クラシック関連のイイ番組が2つありました。


BS朝日小澤征爾さんと音楽で語った日〜チェリスト・宮田大・25歳〜」

詳細


NHK「3月11日のマーラー

詳細


宮田くんの番組は、待ちかねていたものです。
初の密着ドキュメント。
ちょっと演出が妙チクリン(宮田くんの心の声をなぜか斉藤由貴がナレーション(汗))で不満もありますが、BS朝日にしちゃよくやったんじゃないですかね。
マエストロ小澤との共演を通しての宮田くんの奮闘、葛藤、チャレンジの日々が細やかにルポされてます。
合間にちょこちょこプライベート映像が。カービィやってたw子供か。
イタリアやドイツでの様子も。ヨーロッパの街並みに自然と溶け込んでるのはさすがです。
演目はハイドンのチェロ協。
マエストロのダメ出しに四苦八苦する宮田くんの姿が印象的でした。
いや、いつも悩みなんかなさそうな風情で堂々と演奏する姿しか見たことないからね。
ああ、宮田くんもこんなに迷ったりするんだ、というのが新鮮な驚きというか。まだ、若いんだなーとあらためて感じました。
宮田くん以上に、マエストロの奮闘ぶりに胸が熱くなります。
体の不調を抱えながら、それでも尽きない音楽への情熱にはすさまじいものがありました。
まだ20代の若い音楽家と、喜寿を迎えるマエストロの見えている地平はかなり違うんですよ。そりゃもう、おのずとね。
マエストロは言葉が通じないもどかしさを抱えつつも、自ら学んできたことを若い音楽家に必死に伝えようとしていました。
この邂逅が宮田くんにとってものすごい財産となったであろうことが、よくわかるドキュメントでした。


NHKの「3月11日のマーラー」は、思いがけず素晴らしい番組でした!
震災当日の夕刻から、すみだトリフォニーで演奏会を開催した新日フィルのドキュメントです。
指揮者ハーディングの元、万難を排して集まった楽団員は、絶えず起こる余震の中、身内の安否も確認できぬまま演奏を続けました。
演目はマーラー交響曲第5番
実に見事な演奏でした(一部だけ放送された)。
震災の夜に(偶然)演奏されたのが死と人生を印象的に表現するこの曲だったとは…。なんだか胸がいっぱいになってしまう。
集った観客はたった105人。
何時間も歩いてホールまで辿り着いた人もいた。
皆、音楽を心から愛する人たち。
でも、彼らの心の中には(当日のその時点ではわからなかったとはいえ)、
「未曾有の被害をもたらした震災のあったまさにその時、自分は音楽を聴いていた。(そしてとても幸せだった)」
という、想いが少なからずあって…そういった葛藤(罪悪感?羞恥?)を抱えている方の独白がとても印象的でした。
誰一人悪くなんかないのに、そう感じてしまう気持ちはよく理解できる。せつないですね。
どんな状況にあっても、形而上の世界に連れて行ってくれる…というのが、音楽の素晴らしくもまた残酷なところです。
音楽は現実の斜め上に浮いているんですよね。
それが音楽の宿命であり、それをどうとらえるかは個人の胸の内の話になるのかもしれません。
再放送があったら(あるのか?)ぜひご覧になってみてください。
クラシックに詳しくなくても楽しめます。


マーラー 交響曲第5番4楽章アダージェット。
いつ聴いてもやっぱりグッとクる。