今日も陽が昇る


それでも、生きてゆく」第10回。
1時間に満たない間に感情があっちへ行ったりこっちへ行ったりするので、見終わるといつもヘトヘトです。
「心の運動」って感じ。しかもブートキャンプ並みの運動量でw
頭の中で感想をまとめるのに時間がかかる。思うところは山ほどあるのに、うまく言葉になりません。
自分の言葉で言い換えると、なにか陳腐になる気がする。
どこかで「このドラマは見る人から言葉を奪う」と書いている人がいたけど、まさにそうです。
確実に心に響くものがあるのに、それを明文化できない。
要するに、この物語の凄さは観た人だけしかわからない。
もう、そういうことでいいかな(汗)と、思いつつ、ちょっとだけ触れてみる。


あいかわらず手に汗握る展開。
いつも、この先どうなるのだろう?とすごく期待しながら見ていて、結果100%超えて予想外の行方を見せてくれるって感じなんですけど、今回に至っては150%くらいの勢いで想像の斜め上を行っていて驚きました。
コロンブスの卵、かな。
それは確かにずっとそこにあるものなのに、まるで新しく発見した地平のように、新鮮な実感を伴って目の前に現れる、みたいな。


今回、洋貴が文哉を助けたところと、「一緒に朝日を見たい」と語りかけるところで、ともすると「駄作になりそうな流れだな…ここでそんな取ってつけたような凡庸な展開もってくるのか?」と一瞬気を揉んだんですけど、着地点は神ドラマでした。
飯屋の場面は秀逸だったなぁ。
無表情で「おなかすいた」とつぶやく俊介、ボロ泣きする満島、マカロニサラダ食べながら狂ったように笑う瑛太さん。
あまりに残酷で、でもどこか滑稽で。
泣いたり笑ったり朝日を見たり夜を覗いたりおなかすいたり間違った注文で届いたマカロニサラダを食べたりする、このままならない世の中よ!という感じは坂元脚本の真骨頂です。
このシーンから最後の満島のとび蹴り&乱闘に至るまでの一連の流れは、さすが!としか言いようがない。


それにしても、満島ひかりはすごい女優です。
こんな演技できるの、きっと彼女しかいない。双葉ちゃんは彼女にしか演じられない。
今回の飛び蹴りと、第4話の「野茂できた。」はドラマ史上に残る名シーンですよ。忘れられない。
朝ドラの育子さんは寝てるんじゃないかと思うね。
それ以前に朝ドラは脚本家がすでに寝てる…しかも熟睡してると思われるが(爆)


このドラマの言いたいところは、今回、瑛太さんが全部言ったのではないかな(それと、大竹しのぶもだ)。
実質、最終回の勢いだった。
それでも、生きてゆく」の「それ」の中にはたくさんのものが詰まっている。
「でも」、なのです。
「でも」「生きてゆく」ことは「それ」を凌駕する。
そのことに洋貴は気づいた。心をもらうことで、気づいたのですよ。(気付きにしたがって瑛太さんの目の中にみるみる光が宿るのがすばらしかった。泣ける。)
たぶんこれがドラマの真髄。
人を救うのは、心しかない、ということ。真心だけが救いになる、と。
こうしてひと言でまとめてしまうと嘘くさいし、ポエマーな感じがするけれど、これは単純なことではないのです。
だって、あんなにいろいろあって、やっと見つけたものだもん…というのが、ここまでの10話を見てきた人にはわかる。
彼らは、あれだけの壮絶な痛みの果てに、新しい地平を見いだせたのだから。
でも、次の瞬間、真心が誰にでも通じると思ったら大間違いなんだよ、と気づかされるのがまたこのドラマの一筋縄ではいかないところ。


文哉に「心」は届かない。スッパリと、まったくもって、伝わらない。
文哉を、「どこまでも”通じない”人間」と設定したことは、実はドラマとしてはすごい冒険ですよね。
贖罪のドラマは山ほどあっても、犯人を狂気の域に放り投げて放置するドラマはほとんどないんじゃないかな。ホラー以外では。
罪は理由があって発生し、償われるべきものとして描かれるのがドラマなんかでは一般的ですよね。
名探偵コナン」なんかに至っては、犯人には必ず動機がある。それがまたなんだか身につまされるというか、どこかで悲しみを必ず与えられたりしてる(罪を憎んで人を憎まず、的な)。それは贖罪が前提としてあるからなのです。
でもこのドラマは違う。
罪に「情」が入る隙がない。
文哉がもっともらしく語る母親のエピソードも「だから何?」ってレベルの話であり「可哀想なボク」という自己陶酔でしかない。母エピは、真相解明ではなく、壊れた心をあらわす装置でしかない。
家族の苦悩と再生を描くのに、加害者本人の弁解などないほうがわかりやすいのでこのドラマはこれでいいのだと思いますが、あまりにドライなので、すごく新鮮だったりしますね。潔く、思い切った脚本だな、と感じます。
次回いよいよ最終回。
全力で楽しみにして待ちたいと思います。


追記:
どうでもいいようなことだけれど、1つ、すごく残念なことがあります。あえて書いておく。
小道具に作為的な日本侮蔑があったということで、話題になってる件。
「イケパラ」で、あっちゃんのTシャツに書かれた文字で騒動になったのと同じようなことですが…
「それ生き」の今回の放送で、ゴミ箱に捨てられた雑誌の表紙に某国で言うところの「日本の糞ヤロー」的な差別的な意味の言葉が書いてあったと。
さすが反日媚韓のCXと、ネットで叩かれまくってます。
なんか…ガックリきちゃうね。
ドラマのデキではなくて、こんなくだらないことで騒がれるなんて、惜しいなぁ。
細心の注意をもって作られてると思っていたのに、チェックできなかったのだろうか。
この小道具を忍ばせた人は、ものすごい名作ドラマを下品な落書きで貶めましたね。
誠心誠意作り上げた脚本家やスタッフや役者の努力も、夢中になって観ていた視聴者の思いも踏みにじった。
どういうつもりなんだかな。皆目見当が付きません。
とりあえず、坂元さんはもうCXでドラマを作らないほうがいいね。才能がもったいないです。
これほどの名作ドラマに対する愛情がCXにはまるでないですからね。低視聴率なのに番宣も再放送もせず放置するし、おまけにこんなくだらない騒動起こすし。
CXはホントに最近どうしちゃったの?わけがわからない。
毎度の騒動につくづく嫌気がさすわ。もうこのドラマしかCXの番組は見てないけどね。