「レディ・キラーズ」


どうせなのでトムの出演作全部のレビューを書いてみようプロジェクトを始めようか、って勢いです。
全部観てるのにあんまり感想残してないんだよね。
まぁ、おいおいつらつらと・・・書きたい時に書ける場がある幸せを思う時(=要するに萌えドキ)にでも。
今日はこれ↓

レディ・キラーズ [DVD]

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クライム・ストーリーにブラック・コメディを織り交ぜて、奇妙なキャラとキモチワルいネタとスタイリッシュな映像とステキな音楽をまぶした、ガチでコーエン兄弟の独壇場だなこれ、ってな作品。
コーエン作品でいうと「ファーゴ」と「ビッグ・リボウスキ」だったらどっちが好き?って聞かれて、「ビッグ・リボウスキ」を選ぶ人向きかな。
いや、あれほどシャレてはないんですが、キャラのマヌケさとかとことんすれ違うドタバタ犯罪っぽいトコに共通した雰囲気があります。
がっつりとアメリカ深部の情緒に溢れているところも似てる。
往年の名作「マダムと泥棒」(1955年)のリメイクですが、世間の評価を見るとどうやら前作は越えられなかったようです。
コーエン兄弟もこの前作の大ファンゆえにリメイクしたそうなので、よりスゴイ作品を・・・という指向は最初から持っていなかったんじゃないかなぁ。
時代も場所も変えてコーエン節で楽しめればいいな、くらいの感覚だったのかも?と思えます(そしてそれは成功してるんじゃないでしょかね)。
コメディだけど腹抱えては笑えないし、クライム(犯罪)モノだけどマヌケで可笑しい。ちょっとグロくて、ちょっとシャレてる。
そのビミョーにムズ痒い感じが独特です。
映像がかっちりと計算されてて、ちょっと鼻に付くくらい「絵づら」にこだわってるのも見どころ。見たくれはとてもキレイな映画です。


コーエン兄弟トム・ハンクスって共通点ゼロって感じで、まったく合いそうもないけどどうよ?・・・ってな印象もありましょうが、これが思いのほかハマってますよ。
さすがだ。
いや、トムがさー上手いんだよー。病人演じるのもいいですが、こういうコメディで器用に別人になれちゃうからスゴイんだわ。
一から十までちゃーんとコーエンモードで演技してる。
初めて見る表情とか笑い方とかに出会えますので驚きます。見たこと無いトムがいる!と。底知れないっス。
しかもとってもキュートなのダ。
気取りやでインテリぶりっこの胡散臭〜い”教授”が、未亡人バアさんの家に間借りして、アホ集団仲間と大金泥棒計画を実行する・・・という話ですが、ほぼドタバタです。
ドタバタしているいろんなもんを隠すときに教授はインテリ感溢れる物腰柔らかな紳士になって、聞いてる相手が「?」となるような、芸術の話を滔々と語ったりして煙に巻く。
教授はエドガー・アラン・ポーに心酔してんですよw、で、
「ヘレン、あなたの美しさは古代のニケアの帆船のようだ。馥郁たる海をわたって旅に倦んだ放浪者を、祖国の浜に運ぶという・・・」
なんていうポーの詩のロマンティックな一節を情感たっぷりに朗読して聞かせてはご婦人たちをうっとりさせたりもするの。
トムの、このもったいつけたようなエセ教授っぷりがなんともステキです。
実態は犯罪者なんですが、そっちの顔もマヌケ。何やっても滑稽でキメられないところがカワイイの。
マヌケなくせに結末がトンデモなくグロテスクだったりするんで、コメディなんだかホラーなんだかよくわかんなかったりしますが(汗)



教授は時々バアさんのお茶の相手もします。このシーン、大好き。
本を読む教授と編み物をするバアさん。
向かい合ってそれぞれの好きなことに没頭してる寛いでる感じがイイです。私の思い描く”至福”の図だね。
調度品の感じとか、灯りの置き方とかも古い南部の家っぽくてステキ。



本ばっかり読んでる教授。カワユス(*^-^*)


ちなみに冒頭からちょこちょことポーの作品からひいてきた記号(「大鴉」が出てきたり、「黒猫」を髣髴させるセリフもあった)が散りばめられていて、ゴシック感を増しています。色にたとえると、深い藍色のイメージ。
それに対して未亡人バアさんの住む世界はバプティスト教会のゴスペルが響き渡るハレルヤな世界。こちらはどぎついオレンジ色のイメージ。
二つの全く違う色味のイメージがせめぎあい、最後には全てを飲み込むかのように世界がオレンジ色に塗りつぶされてゆくような印象で終わります。
「Shine On Me」や「Trouble Of This World」といったゴスペルソングの挿入曲がとてもイイ。ミシシッピの田舎町の空気が濃厚に漂ってくるようで。


予告編↓
教会でのシーンで流れている曲が挿入曲の「Trouble Of This World」。
曲のみの完全版はこちら。←ぜひ聴いてみてください。
かーっこいいーー最高!!!