「パンチライン」


定期的に陥る、”トム・ハンクス激惚れ月間”進行中です。
何度目?って数え切れないなー。
基本、私はずーっとトムが大好きなんですが、時々「めちゃめちゃ好き。メロメロ〜ン」って状態にハマるんですよ。で、昔の映画を見返す。
見返すために出演作のDVDと映画パンフはほとんど所持してる。他のハマリものは自分の中のブームが終わると同時にオクで売ったりしちゃうのだけど、トムハン関連は手放せないんですよね、何度も繰り返して観るのわかってるから。
トイ・ストーリー」でウッディの声を聴いていたら、すっごくトムの映画が観たくなったのです(しかも、バーーーッと喋ってるのが恋しくなった。私はトムの機関銃のように繰り出される話っぷりが大好きなのダ!)
そういう時にはこの「パンチライン」に限る!・・・というチョイスです。
この作品でのトムはスタンダップ・コメディアンの役なので、よどみなく喋り倒すシーンがたくさんあるの。
トムの話芸を思いっきり浴びられる至福の作品、しかも隠れた名作です。


久々に観たら以前よりもガツンとキちゃいましたねぇ。この映画ってトシをとるごとに響くような気がします。
なんだか、登場人物全ての人の感情が手に取るようにわかるんですよ。
大切な家庭があるのに自分の夢を追いかけたい主婦の気持ちも、どうしても世に出なくてはと焦る孤独なクリエイターの気持ちも、大好きな妻が夢を追っているのを応援したいけれども家庭を顧みてくれないことにいらだつ夫の気持ちも・・・どれもがひしひしとわかる。胸にクる。
愛する人がいても恋をしてしまうこととか、それでも愛は勝つこととか、親の期待に応えられないのがトラウマになってしまうこととか、生活してゆくうえでの幸せとは別次元にある創造する者の幸せとか(その手放せない二つの幸せは時に相反するんです)、叶わない恋こそ美しいのだとか、夢をムチュウで追う姿はカッコイイのだとか・・・そういうのもひしひしとわかる。心から共感。
なぜかココに出てくる感情の切れ切れは私の生活の中にもある。どこかがいちいち似ている。
リアルな私自身が、サリー・フィールド演じる主婦にも、トム・ハンクス演じるバイト学生にも、ジョン・グッドマン演じる旦那にも似ていて、「あるある」状態でアップアップしそうなほどなのです。
それほどまでに世の中にはきっと、こういうことはよくあることなのかもしれない。
要するに普遍的なんだろね(私は普遍のカタマリだというだけなのだわ)
そういったありきたりな・・・でも、個々人にとっては切実な悩みや迷いの果てに、カタストロフや喪失があるわけではなく、実にきれいな「オチ」が用意されています(「パンチライン」とはコメディの「オチ」の意味です)。オチが”そこ”に落ち着くことが、この映画の良さです。それゆえに暖かく楽しい作品になっている。
誰も悪くないのに、どうにも歯車がかみ合わず、みんなが寂しい思いをしているといった状態があれども、あるときその絵はくるっと反転する。何かがきっかけで歯車が合う。
いったんそうなると、今度は突然電飾がきらめき賑やかな音楽がかかかってメリーゴーランドが動き出すみたいに物事が好転し始める。
その展開のさせ方が実に上手い。ふわっと暖かい気持ちにさせてくれるのです。
せつなくてほろ苦くて優しい。で、しっかりとコメディだ。「人生はコメディ」的な、実にアメリカらしい哲学が詰まっています。


でもって、トム・ハンクスですよ。
たぶん、トムの出演作中で最も私が彼の色っぽさと演技の才能を感じるのがこの作品です。
繊細で傲慢で孤独な青年を、トムは神がかった演技力で見事に存在させている。
思わず恋しちゃいますからね。その青年にも、青年を演じているトムにも、観るたび惚れる。
彼に言い寄られる主婦に思いっきり自己投影して煩悶の渦に投げ込まれてしまうんだこれが!
アタシにとっちゃぁ擬似恋愛に耽ることのできるシアワセな作品です。



さびれたダイナーでとことん不味そうなスパゲッティを食べるシーン。こんなひとコマにもトキめいちゃう。私の好きなアメリカ風味が満載。
トムは若くてとてもカワイイ。でも、骨っぽさもある。
この時、32歳。ヒット作「ビッグ」を撮った同じ年。ここから彼の才能がどんどん世の中に認められてくんですよね・・・
この後、トムはオスカー俳優になりますが、将来絶対にそうなるはずだというのはこの作品の演技を見れば大いに納得です。
最近のトムはラングドン教授のマヌケ演技なんかでお茶を濁してますが、もともとこの人はトンデモない天才だったのよね。