「トイ・ストーリー3」


久々の続編「3」。待ってました!
しかも、この「3」はダントツに素晴らしいという噂だったので、かなり楽しみにしていました。
トム・ハンクスファンの私はこれまでは字幕で観ていたのですが、今回は子どもたちと一緒なので3D日本語バージョンで。
んー…でもこれ、個人的な感想としては、3Dで見なくてもいいかな…と。
もともと絵がきれいだし、動きも自然で実写なみの迫力がありますから2Dでもじゅうぶん楽しめます。
私はどうもあのゴツくて薄暗い3Dメガネが苦手で、メンドクサイんですよ。あのメガネが気にならない人はせっかくなんですから3D観た方がいいかもしれませんが。


評判どおりの素晴らしい作品でした!
映像も脚本も実に秀逸な、文句無く満点あげちゃいたくなるようなデキ。
技術と知性を駆使して描き出しているのは、万人の心をせつなくする、誰もが経験する普遍的なお別れの話です。内包しているメッセージははかりしれなく深い。
映画のキャッチは

「この夏、最も優しく切ない”さよなら”と出会う。」

子ども時代に愛したおもちゃたちとの別れ(=大人になってゆく過程での、少年少女時代との別れ)ってのを、逆におもちゃの側から描くことによって”コトの重大さ”が浮かび上がるような作りになっています。
おもちゃたちは切実です。
捨てられてしまう!忘れられてしまう!この先どうなるの?あの輝くような日々はまた戻ってくるのだろうか?
恐れおののき失望しながらも、どこかで持ち主との絆がまだつながっていることを信じているおもちゃたちの純情が胸に痛いです。
おもちゃたちの心の動きは、人間たちのそれと同じ。
そこを描くことによって、自然と観客の子どもたちが、モノを大切にしよう、おもちゃを可愛がってあげよう、ってなことを感じられるようになっています。
彼らの冒険にハラハラドキドキしながら、仲間を思う気持ちや、助け合う喜びもストレートに伝わってくる。
絶妙なる教育映画なんですよね。
そして大人たちは、かつて一緒に遊んだ自分のおもちゃのことを思い出すこと必至でしょう。
おもちゃたちを思い出すことの懐かしさから、自分を形作ってきた過去を慈しみ、いろんなものに生かされて(そしていろんなものと別れ、出会いながら)ここまできたという感慨にもつながります。


ピクサーの映画の特徴は、親子で観にいって受け取るメッセージが違う、というところです。
子どもの映画なのに大人の映画でもある。
大人が子どもの目線まで降りてこなくてもいい。
それは確固たる哲学のもとに脚本がホントによく練られているからなんでしょうね。万人が楽しめるようになっている。毎度「すごいなぁー」と思います。


私が一番グッとキちゃったのは、家を出てゆくアンディを見送るママの涙を見たときでした。もうね、涙がボロボロっと。
ママもまた、ある意味おもちゃたちと似たもの同志です。
もはや「蜜月」は戻ってこない。
世界で一番愛しい人と、手をつないだままではいられない。
あんなに抱きしめて可愛がってだいじにだいじに育てた坊やが家を出て行ってしまうなんて!
こーれーはクる。
完全に感情移入してしまいました。悲しいことではなく喜ばしい成長であるはずなのにとんでもなくツライ。
でもこの「お別れ」は絶対に必要なことなんですよね。
そんな日が来て欲しくはないけれど、その日が来なければ子どもたちは巣立てない。自分の人生に踏み出せない。子を愛しく思うのだったらば親は涙を呑んで送り出すしかない。
親というもののセツナさも、こんな風に描かれるとセンチメンタルな優しい慰めのように感じます。
たぶん親子で観に来ている親たちは、今、自分の隣で楽しそうにポップコーンを食べてる子どもたちが、そのうちに自分ではなく恋人とここに来るようになり、やがて家を出て新しい家族を作る日が(そう遠くはない未来に)来ることに気づかされます。
それは「今」という時間をかけがえなく思う気持ちにつながるんですよね。今日この日こそが格別な日なのだと。


なんてしみじみさせられる場面もありましたが、基本的にはとても前向きで輝かしい明日を感じさせる作りになっています。
さすがアメリカ映画、って感じ。寂しくせつない涙で終わるようなことは断じてしません。
とてもステキな着地点が用意されているのです。再生と希望の道がそこにはあります。
常に西へ西へと移動してきたアメリカ人の開拓者DNAは、いかなるときも新天地を目指す意気をもっているのだなぁとすがすがしい気分になります。
定住型DNAの感性ゆえに、平和的屋根裏部屋での余生に幸せを感じる日本人は少なくないような気がするけれど、それはやっぱりアメリカ的ではないんですよね。
ラストシーンにつながる一つの動きは、思いもかけないものでしたが、それこそがこの物語の真髄です。


”さよなら”はまた”こんにちわ”の始まりであること。”終わり”は”始まり”でもあること。
このエッセンスは本編映画の前に上映される短編映画「ディ&ナイト」にも窺えます。
全ては続いているし、つながっているのだという思いは、なんだか勇気づけられる!
この短編映画「デイ&ナイト」も特筆すべきステキな作品です。
最初は映像の美しさと動きの楽しさにおクチぽかーんで見入っちゃいましたが(技術とセンスのレベルの高さに圧倒されます。2Dアニメーションの内側が3Dアニメーションになっているというのも面白かった)、だんだんと胸がジーンとしちゃって涙が出そうに。
オシャレだし楽しいし胸キュン。言葉の一つもない映像ですが、深いメッセージをストレートに届けてくれる作品です。
ピクサーはホントにすごい!!!