5月に読んだ本(2)


■ 「高砂族の話 伝説と歌謡」


昭和16年、東亜旅行社台湾支部刊。
戦前の刊行物ですので触ると崩れそうなほどボロボロです。が、中身はものすっごい充実ぶり。
台湾の原住民の習俗や暮らしの様子、民族間に伝わる歌や祈りの言葉を集めたものなどが載っています。彼らと同じ国民として生きた世代の人たちが、彼らを理解すべく出した本、なのでしょう。歌などは原住民の言葉と日本語の意味が対訳になっている。原住民の言葉をカタカナで表記してある本は貴重。
今現在出版されている本でこういった記録が載っている一般的なものはないんじゃないかと思います。学術や研究というのは累積してゆくものだから、「ない」というのは違うような気がするけど、ここまで詳しいのは今まで探せなかったんですよね。あとはもう研究者の領域になっちゃうのかな。原住民出身であってもその民族の言葉を話せない人がたくさんいるのだから、こういうのも”忘れられゆく研究対象”なのでしょう。
ちなみに「高砂族」なんて呼び方はイヤですが、これは戦前の本なので仕方がない。かといって差別的な内容というわけではありません。
私は定期的に台湾原住民モノを読むのですが、それはどっか目の端でちょっとだけ、阿嶽の生まれた地平を見つめていたいんだろうな。


戦前の少年犯罪

戦前の少年犯罪


在野の研究者(?)による、戦前の少年犯罪実録集。主に新聞や警察署の記録から拾った事件を載せています。
最近の少年犯罪が凶悪化・低年齢化しているなどというのは錯覚だということがよくわかる資料集となってます。(実際の件数でも少年犯罪は年々減ってきているんですよね。ネットやマスコミのおかげで事件がおおやけに出回りやすくなっただけで)
昔はもっと殺伐としていて怖かったのだ、というのがよくわかります。そりゃそうですね、世の中の乱れ方が今とは全然違うのだから。戦争なんてもんが日常にまぎれていた頃と、今のぬるま湯のような日本を同じ国だと捉えること自体違う気がするからなぁ。
驚いたのは、昔の日本人は今よりも子どもに甘い、ということ。いつから子どもに不寛容な国民性になったのだ、この国は。
主に旧制高校の学生がどんな犯罪を起こしていたのかが知りたくて読みました。

旧制高校物語 (文春新書)

旧制高校物語 (文春新書)


こちらは図書館でちょっと調べたいことがあるたび借りてんですけど、どうせだからちゃんと通しで読んでみようかと(てか、買えよ・・・って話ですね(汗))。
ある時代を知るには、当時の若者の姿を追うのが一番リアルにその空気を掴むことができるような気がしますが、旧制高校の生徒というのはごくわずかな特権階級なので、どうしてもそこから見た風景は箱庭的です。とりあえずその箱庭周辺が知りたい場合には、この本はイイ入門書です。
世間と時代に甘やかされて特権階級の陶酔の中にいた彼らの様子を知るにつけて、バカバカしさと憧れとが絡み合ったような気分になります。
各学校の特徴やエピソードがいろいろ載ってますが、やはり大半が一高の話題。漱石のエピソードなど、興味深い話がたくさんあります。

青春三十年―旧制水戸高等学校物語1920‐1950

青春三十年―旧制水戸高等学校物語1920‐1950


先の「旧制高校物語」の中のエピソード引用元にもなっている水戸高等学校の30年史。
個人名やその出身校などもガッツリ載せた上での水高エピソード集。バンカラ学生も多く、社会主義運動も活発だった学校で、とても個性的。
物語形式になっていて読みやすく、ノスタルジーに溢れています。とりわけ戦中の記録には胸に迫る話が多い。
最後の年には唯一の女子高生もいて、記念祭では演劇部が女子高専と合同で劇をやったことなどは、映画「ダウンタウンヒーローズ」を思い起こさせるエピで、ジーンとしてしまいました。私が旧制高校モノが好きになったのは思えばこの映画がきっかけ。山田洋次監督映画の中で最も好きな作品です(映画的に、というより観念的に)。


”井沢史観”本の定番ですね。この巻は特に私が興味を持ってる奈良→平安の天皇の系列変化に伴う誤解を推理している。
井沢さんの逆説の日本史シリーズは昔から好きでよく読んでいたので大筋のところはすでに知っていることが多かったかな。
それらをわかりやすく”歴史を読み違えないために大事な3点”(「実証主義の偏重」「権威主義」「宗教の無視」)として詳しく説明しているのが本書の特徴。
コンパクトにまとまっていて、読みやすいです。
特に「宗教の無視」に関しては、かなり力をこめて解説されています。利益や私欲だけで行動が決まるわけではなく、多くはその宗教的動機から人は行動してきたということを、(現在の無宗教的日本人は忘れがちだけれど)常に念頭に置くことがポイントだと。
それにしても天皇というのは、昔から形勢変化による誹謗中傷が半端ないですね・・・。称徳天皇などあまりの侮辱にきっと草葉の陰で泣いておられるに違いない。お気の毒なことです。