「チャイナ・レイク」

内容(「BOOK」データベースより)
親友の母の葬儀に狂信者集団“レムナント”のデモ隊が押しかけてきたのが最初だった。弁護士にしてSF作家のエヴァンは彼らと対決する。だが敵の本当の狙いはエヴァンの六歳の甥ルークだった。兄ブライアンの離婚した妻が“レムナント”に入信していたのだ。執拗な嫌がらせ、ルークに対する誘拐の試み。その背後には、陰謀が…カルト教団と対決するヒロインの活躍を描き、アメリカ探偵作家クラブ賞に輝いたサスペンス。


チャイナ・レイクってのは地名です(中華には関係なし)。カリフォルニア州南部のモハーヴェ砂漠にあるアメリカ空軍の基地の町。 
モハーヴェ砂漠は「バクダッド・カフェ」の舞台だったり、「ライトスタッフ」(←大好き!)で”音速を超える男”チャック・イェーガーが所属していたエドワーズ空軍基地がある場所でもあります。
私がつねづね「前世はここにいたかもしんない」てな夢想に包まれながら場所萌えしているのが、このモハーヴェ砂漠なのですよ。
というわけで、舞台となる土地の風景や空気をかなり楽しみながら読みました。私がこの小説に感じる魅力の大半はこうした「場所」の描写でした。
ミステリーというよりは、アクション・サスペンス。謎解き部分では、登場人物に対しての「実はこの人は○○だった」という発見から関係性が再構築され、絡んだ糸がほぐれてゆく…といった進み方をしますが、これに関しての説明があっさりしすぎる感じ。アクションに力を入れているせいで、謎の回収が慌ただしく流されてるような。
カルト教団の描き方がとても上手く、恐怖心を掻き立てられます。この土地特有かもしれないイライラするような粗野な登場人物の描写とか、場所の持つ雰囲気を出すことも実に巧みです。
見どころはヒロインが遭遇するバトルの数々。これがかなりハデです。特に、ラストの「戦闘」シーンは大掛かり。
スピード感はあるし、ヒロインは強くしなやかな美人SF作家(弁護士でもある)、舞台となる風景もやたら絵になる、と3拍子揃っているので、映像化するのに向いてそうですが、そう考えるとありがちな絵が浮かんだりもします(砂漠は見たいけど、それもアメリカン・ニュー・シネマから続く常套的なパターンって感じですしね)。
同じヒロインのシリーズが5作(=未邦訳)出ているとのことですが、私はシリーズの次作には食指動かないかもな。悪くはなかったけど、もうちょっと推理にチカラ入ってるモノの方が好きですし。
文庫の帯に「スティーヴン・キング、ガチ惚れ!」という煽り文句がついてて、購入のきっかけは「エドガー賞受賞!」ではなくてこっちのキャッチだったりします(汗)。こんなあからさまな宣伝も馬鹿にできないネ。
ちなみに邦訳版よりも原書の表紙の方がステキに”モハーヴェな雰囲気”が出てます↓