「包帯クラブ」

包帯クラブ [DVD]

包帯クラブ [DVD]

  • 発売日: 2008/02/15
  • メディア: DVD


田中圭くんが出てる作品のリストにあったというだけで、何の前知識も無くDVDを借りてきたんですが、最初のシーンを見た瞬間、私の目は画面に釘付けに。
記憶の底に眠り続けるいくつもの懐かしい風景が次々に目の前に現れては消えるのをポカンと口を開けて眺めてしまった。
この映画のロケ地って、がっつり私の故郷だったんですよ。
離れて20年以上も経つのに、眼に映る一瞬で、それが自分の故郷だと気づいて…そのことにちょっと驚いた。
なんと、あの独特の風の音までもがそこには再現されてた。
そこは日本一、乾いた風が吹く街なのです。
冬の日はいつだって、耳鳴りのように風の音が鳴っている。
耳について離れないあの音。あれは私の潜在意識の中に染み付いている。
私は代々ここの土地で生まれて育った者の末裔で…だからきっとあの音はDNAレベルで染み付いているんだろうな、と思う。
雲が強風で飛ばされてしまうから、晴れた冬の日に空を見上げると、そこにはいつも雲ひとつ無い青空が広がっていた。
その空も、しっかりと撮影されている。あの青は、まさしくあの街の空の青。
胸にクる。
こんな経験、初めてだ。



眼下に見えるあの橋の傍らで、毎朝、大好きな人を待った。
夕方には友人と自転車を並べてありったけの話をしながら、川沿いを北に辿って家に帰った。



デート場所だった公園。
右奥に見えるあの藤棚の下は初キスの場所。
何年ぶりに見ただろうこの風景。


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調べたらロケ地マップが市役所のページに載ってました。
撮影公開時には、かなり話題だったのね。全然知らなかった。
そう、もう今の私はこの街のことなんて何も知らない。


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気を取り直して映画の感想を。
話の内容に文句をつける気はない。脚本も上手い。演技もいい。絵的なものもすごく良かった。
けれども演出の仕方がヒドイ!という…それのみにおいて残念な作品。
これは何?PVか?ってなくらいの音楽の多用。唖然とするほど音楽に寄りかかりすぎです。
常に音楽垂れ流しってありえない。おかしくはないかね?
もうそんなことには慣れっこだというほどに、この国の人間の耳には常にiPodが刺さってんのか?
そんなことだといずれ思考能力なくすぞ。言語をなくすぞ。感覚だけの人間になるぞ。
かといって、全ての音楽が悪いわけではない。映画に音楽は不可欠だ(ちなみにハンバートハンバートの曲自体も良い)。
最初のモノローグのバックミュージック。あれなんかすごく良かった。すっっごく。
あと、お葬式のシーンも。包帯クラブが調子こいてるコミカルなシーンもね。
要は使い方なんですよ。もっとメリハリを、ってやつ。
それと、人物の顔のアップ(もちろん音楽付き)も多すぎる。
「気分」を伝えるのに表情と音楽というのが有効なのはわかるよ。でもこれは映画だよ?安直だわな。
圭くんのアップ(眼福!)出てるのにこんなこと言ってるんですからよっぽどっすよ。
アップはここぞという時だけにして!


そういったいくつかの初歩的かつ致命的なポカを改善するだけで、これは不朽の名作たりえたかもしれない佳作です。
何よりも俳優が全員漏れなくトンでもなく演技が上手い!若手の精鋭大集合って感じなのよ。
石原さとみ柳楽優弥は別格に上手い。
石原さとみはミューズたりえる物語力をもってるね。ドキドキした。
圭くんも堅実に上手いけれど、抑え気味の役柄なのでエキセントリックな柳楽にもっていかれてる。
貫地谷ちゃんはジャズやるべ!の時と変わんないキャラでした。既視感がw
とにかくこんな上手い若手を使っておきながらこんな演出しちゃってあちゃー。ってなのが返す返すも残念でねぇ。
めっちゃいい食材使ってるくせにファミレス料理が出てきちゃったって感じです。
しかもアタシの故郷で←なんだかんだでここに戻る。